メタのMuseがAI強気相場を支える可能性がある理由
〔要旨〕
- 原油価格と金利の上昇によりブロードニング・トレード(銘柄の物色の広がり)は失速したが、構造的なAI成長ストーリーは依然として損なわれていない
- メタによるMuseのリリースは、AIへの投資が、消費者による利用拡大を通じて、将来の成長と収益につながり得ることを示した
- この強気相場は、AI関連銘柄内で単なるローテーションが起きたときではなく、AIストーリーそのものが大きく悪化したときに終わる可能性が高いと考えられる
景気循環的な市場テーマの失速
メタによるMuseリリースの成功
強気相場と構造的なAIストーリー
注目の日程
投資家が原油価格や金利の上昇を注視する中1、ここ数週間で最も重要な市場動向は、メタ社(メタ)からもたらされたと言えるかもしれません2。景気循環的な環境が、原油価格上昇や金利上昇という逆風にさらされる可能性がある中で、同社の新しいパーソナルAIエージェント「Muse」のがリリース直後から成功を収めたことは、今般の強気相場を支える構造的な成長ストーリーが依然として健在であることを、改めて示すものとなりました。
この区別は重要です。
投資家は、2つの強力な追い風を受けつつ今年を迎えました。その1つには、AIを中心とする長期的な構造的成長ストーリーがありました。そしてそのストーリーの中で、景気循環的な上昇局面も形成されつつありました3。
景気循環的な市場テーマの失速
世界経済は、財政刺激策や金融緩和の見通しにも一部支えられ、拡大しつつありました。その結果、市場の牽引役は大手テクノロジー企業にとどまらず、工業、素材、エネルギーなど、伝統的に景気循環との連動性が高いセクターへも広がっていきました4。注目すべきは、投資家の多くが紛争の早期終結を予想しており、こうした広がりがイランでの戦争開始後、数カ月間続いたことです5。
こうした予想は、楽観的過ぎたと判明しました。
戦争が長期化し拡大するにつれて原油価格は急騰し、それに伴い金利も上昇しました6。金利の上昇、金融引き締め、イールドカーブのフラット化は、ブロードニング・トレード(銘柄の物色の広がり)にとって決して理想的であるとはいえません7。当然ながら、こうしたローテーションは失速しました8。
しかし水面下では、別のことが起きていました。
構造的なAI投資テーマは、今年の大半の期間を通じて、今年の大半にわたり、関連する業種や銘柄群が順番に調整するローリング調整を経験しました。最初に打撃を受けたのは、ハイパースケーラーでした9。ソフトウェア株がそれに続き10、最後には半導体株とメモリ株にまで売りが波及しました11。投資家が原油・インフレ・金利に関心を向ける頃には、異例の事態が起きていました。AIストーリーの中心的企業の多くが、潜在的な収益力に比べて驚くほど魅力的なバリュエーションとなっていたのです12。
メタによるMuseリリースの成功
ここで、過去2週間ほどで最も重要な市場ストーリーと言えるかもしれない話題に移りましょう。
メタは9月8日、単なる質問への回答にとどまらない機能を備えたパーソナルAIエージェント、「Muse」をリリースしました。Museは、ユーザーに代わってウェブ上で作業を行えます。目標が与えられれば、比較的わずかな追加指示で一連のタスクを実行できる一方、重要な最終決定はユーザーに委ねます。
反響は目覚ましいものでした。MuseはChatGPTを抜き、米国のAppleのApp StoreとGoogle Playの無料アプリで首位となりました13。このニュースが大きな意味を持つのは、メタがAI関連支出をめぐる投資家の懸念を象徴する存在のようになっていたためです。同社はAIに巨額の投資を行ってきましたが、一部の投資家はその成果に疑問を呈しており、株価は厳しい下落トレンドに陥っていました14。Museの成功は、そうした疑問に対する具体的な答えを示しました。消費者向けAIの導入がうまく進んだ場合、それが将来の成長に対して何を意味し得るか、投資家が考えを巡らせ始めたことで、メタの株価は1日で11%超急騰し、時価総額は2,000億ドル近く増加しました15。
こうした熱狂は、CPU(中央演算処理装置)関連企業にも広がっています。大規模AIモデルのトレーニングでは、これまでGPU(画像処理装置)が主流でした。しかしAIエージェントは、継続的に動作を実行し、逐次的な指示を処理し、アプリケーションとやり取りしなければなりません。こうしたワークロードは、GPUだけでなくCPUへの需要拡大にもつながる可能性があり、AI利用の拡大による恩恵がコンピューティング・エコシステム全体に及ぶ可能性を秘めています。アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)やインテルなどのCPU関連銘柄は、過去1カ月でそれぞれ34.56%、40.50%急騰しました16。
強気相場と構造的なAIストーリー
では、投資家はどのような点に注目すべきでしょうか?
原油は重要です。金利も、ホルムズ海峡も重要です。こうした動向は現在の景気循環的環境に影響を与えており、ブロードニング・トレードが失速した理由を説明する一助ともなります。
しかし私は、これらは株式の強気相場が最終的に続くかどうかを決定づけるものでは必ずしもなく、むしろ強気相場の中で、再びセクターローテーションが起こるかどうかを決定づけるものではないかと考えています。いわゆるブロードニング・トレードが再び活性化するには、金利と原油価格がピークを付ける必要があると思われます。
今般の強気相場は、AI投資の減速、導入の伸び悩み、あるいは投資が収益に結びつかないといった形で、構造的なAIストーリーが著しく悪化した際に終わりを迎える可能性が高いでしょう。暗いニュースが多かったこの1カ月、メタのMuseの成功は、この異例の投資サイクルによる成果は、まだ顕在化し始めたばかりである可能性を示す、これまでで最も明確な証拠かもしれないと私は考えています。
注目の日程
公表日 |
国・地域 |
指標等 |
内容 |
|---|---|---|---|
9月28日 |
ドイツ |
Ifo景況感指数(9月) |
欧州最大の経済大国における企業の期待と成長モメンタム |
9月29日 |
米国 |
消費者信頼感指数(9月) 雇用動態調査(JOLTS)(8月) |
家計センチメントと、労働需要の冷え込みあるいは底堅さの兆候 |
9月30日 |
米国 |
ADP雇用統計(9月) 国内総生産(GDP)確報値(第2四半期) 個人所得・消費支出、PCEインフレ(8月) |
雇用、経済成長、消費者需要に関する幅広い指標であり、FRBが選好するインフレ指標 |
9月30日 |
中国 |
(政府公式)製造業・非製造業購買担当者景気指数(PMI)(9月) |
世界第2位の経済大国における製造業・サービス業のモメンタム |
9月30日 |
ドイツ |
消費者物価指数(CPI)速報値(9月) |
ユーロ圏インフレと欧州中央銀行(ECB)の政策に関する初期のシグナル |
10月1日 |
米国 |
新規失業保険申請件数 ISM製造業購買担当者景気指数(PMI)(9月) |
労働市況、工場活動・受注・雇用・価格を適時に把握する指標 |
10月1日 |
日本 |
日銀短観(9月調査) |
企業のセンチメント、投資計画および日銀の政策見通し |
10月2日 |
米国 |
雇用統計(9月) |
雇用者数の伸び、失業率、賃金―FRBの政策見通しにとって鍵となる材料 |
10月2日 |
ユーロ圏 |
消費者物価指数(CPI)速報値(9月) 失業率(8月) |
ECBの見通しを形成する価格圧力と労働市況 |
MC2026-111