グローバル・ビュー

米イラン停戦合意と今後の金融市場

Invesco Global View
要旨
停戦合意が株・債券・非ドル通貨のリバウンドをもたらす

 投資家が待ちに待った米国・イスラエルとイランとの停戦合意が結ばれ、金融市場の緊張が緩和され始めました。ブレント原油の先物価格の停戦直後の下落幅は、イラン戦争後の上昇幅の6割程度に達しました。4月8日において、日米欧の主要株価指数がイラン戦争開始直前からの下落率の5~6割を取り戻したのは、原油価格の動きが株価を先導したことを示唆しています。

今後の注目ポイントと相場の方向性

原油価格が完全にイラン戦争前の水準に戻っていないのは、不確実性が払しょくされたわけではないことを示唆しています。今後の注目点は、2週間の停戦中に恒久的な停戦に向けての合意が成立するかどうかです。恒久的な停戦が実現すれば、資産価格がイラン戦争前に近い水準までリバウンドする動きが継続するとみられます。リバウンド局面が完了した後は、グローバル景気の緩やかな拡大への期待から、マネーがAI関連株を含む幅広い資産に分散する流れになると予想します。

AI関連株にも注目

マグニフィセント7指数のPERは直近では過去数年間のレンジの下限である15倍強にまで低下してきており、もはや割高感はありません。このため、今後、恒久的な停戦に向けての進展があれば、投資家は他の資産と同様にAI関連株にもニューマネーを投じる可能性が高いとみられます。結果的に、イラン戦争終結に伴う正常化シナリオが実現すれば、AI関連株を含めた幅広い資産が上昇する可能性が高いと見込まれます。

 

停戦合意が株・債券・非ドル通貨のリバウンドをもたらす

 投資家が待ちに待った米国・イスラエルとイランとの停戦合意が結ばれ、金融市場の緊張が緩和され始めました。トランプ大統領は、日本時間で4月8日午前、「イランがホルムズ海峡の完全かつ即時かつ安全な開放に同意する限り、イランへの爆撃と攻撃を2週間停止する」と述べました。このニュースを最初に消化した主要市場は日本市場をはじめとするアジア市場でした。当レポートの先週号では、イラン戦争終結が視野に入る局面において、グローバル経済・市場の正常化が視野に入り、各種資産価格がイラン戦争前に近い水準に戻る動き、具体的には、株高・長期金利低下・ドル安の動きが顕在化すると見込んでいました(「イラン戦争終結後のシナリオを考える」当レポート4月2日号)。4月8日のグローバル市場では、まさにこの動きが顕在化しました。これまで下落幅が大きかった株式市場においてより大きなリバウンドがみられたことも想定通りです(図表1)。イラン戦争開始後に比較的大きく下落していた日本、韓国、インドネシア、インドの株価は大きくリバウンドしました。

 株価のリバウンドを先導したのが原油価格です。ブレント原油の先物価格は、停戦合意直前の段階で1バレルあたり110ドル程度の水準でしたが、停戦合意の報道後には1バレル95ドル程度に下落しました。ブレント原油の先物価格はイラン戦争勃発直前の段階では1バレル=72ドル程度でしたので、4月8日に上昇分の6割程度の下落をみたわけです。原油市場はイラン戦争直前と比べて6割方正常化したと言えます。S&P500種指数、ユーロストックス指数、日経平均株価が、4月8日にイラン戦争開始直前からの下落率のそれぞれ、63.3%、53.1%、59.6%を取り戻したのは、原油価格の動きをなぞるような動きであったと言えます

(図表1)グローバル:主要株式指数のイラン戦争勃発後の騰落率(現地通貨ベース)
今後の注目ポイントと相場の方向性

 原油価格が完全にイラン戦争前の水準に戻っていないのは、不確実性が払しょくされたわけではないことを示唆しています。イランはイスラエルによるレバノンのヒズボラへの攻撃の停止を求めていますが、イスラエルは攻撃を続けています(日本時間で4月9日午前9時の執筆時点、以下同様とします)。また、停戦合意後もホルムズ海峡の実質的な封鎖は続いている模様です。トランプ大統領は、ホルムズ海峡が通行可能になることを停戦の条件としていますが、これはまだ実現していないと言えます。

 今後の注目点は、2週間の停戦中に恒久的な停戦に向けての合意が成立するかどうかです。米国とイランの代表団は、仲介国のパキンスタンにおいて4月11日から交渉に臨みます。交渉が恒久的な停戦につながれば、ホルムズ海峡の自由航行などを経て、金融市場で楽観論が強まり、原油価格の下落とリスク資産の上昇が期待できるでしょう。この場合、資産価格がイラン戦争前に近い水準までリバウンドする動きが継続するとみられます。リバウンド局面が完了した後は、グローバル景気の緩やかな拡大への期待から、マネーがAI関連株を含む幅広い資産に分散する流れになると予想します(図表2)。

(図表2)イラン戦争を巡って想定されるグローバル金融市場の動き
AI関連株にも注目

 イラン戦争直前までは、マグニフィセント7を始めとするAI関連株分野での投資家の選別が強まり、その結果、グローバルな資金が非AI関連資産(米非AI関連株、米中小型株、日・欧・新興国株、金など)にシフトする動きが強まっていました。しかし、イラン戦争勃発後にマグニフィセント7などAI関連株の株価は非AI関連株よりも大きく下落しました。AI関連銘柄は、投資家が中長期的な利益成長を見込んで買っている面が強い銘柄群であり、そもそもイラン戦争による直接的なダメージが小さいと考えられますが、イラン戦争開始後のリスクオフの状況の中で株価が下落したものと考えられます。この結果、マグニフィセント7指数のPERは直近では過去数年間のレンジの下限である25倍強にまで低下してきており、もはや割高感はありません(図表3)。このため、今後、恒久的な停戦に向けての進展があれば、投資家は他の資産と同様にAI関連株にもニューマネーを投じる可能性が高いとみられます。結果的に、イラン戦争終結に伴う正常化シナリオが実現すれば、AI関連株を含めた幅広い資産が上昇する可能性が高いと見込まれます

 4月8日のアジア市場では、半導体関連銘柄の株価が比較的大きく上昇しました。今後の米国市場で業績予想に対して大きく低下したAI関連銘柄の評価が上昇すれば、日本を含むアジア地域での半導体関連銘柄がさらに上昇する可能性があります。

(図表3)米国:ブルームバーグ・マグニフィセント7指数その他のPER(1年先までの利益予想に基づく)

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