日銀:6月は利上げへ。QT政策の見直しが必要?
要旨
日銀は6月会合で利上げへ。次回は年末ごろか
日銀は6月15~16日に開催される次回会合で利上げに踏み切る公算です。 6月会合以降については、私は、年末ごろに次回の利上げ、2027年前半に再度の利上げが実施され、今次局面での利上げがそこで打ち止めになると予想しています。6月会合では、中立金利の想定レンジに入った政策金利を今後引き上げる際に日銀が考えるロジックについて、金融市場に向けて踏み込んだメッセージがあるかどうかに注目したいと思います。
買入れ減額停止でも日銀の長期国債保有残高は27年に41.2兆円減る
6月会合でのもう一つの注目点が、2027年4月以降の量的引き締め政策(QT政策)についての決定です。日本経済新聞の記事に報じられた通り買入れ額が減額されなければ、2027年の長期国債保有残高減少額は41.2兆円に抑制されますが、それでも2026年を大きく上回る減少額となります。日本国債のネット発行額は2021年以降、2024年まで30兆円台半ばかそれ以上であったことをふまえると、2027年は、日銀以外の投資家が70兆円以上の長期国債を購入する必要が出てきますが、長期金利のさらなる上昇なしにこれが円滑に実現するかは予断を許しません(図表2をご覧ください)。
QT政策についてより真剣な議論が望まれる
日銀が今月の会合で2027年4月以降の国債買入れ額を横ばいに設定するとしても、欧米の実績に比べて、かなり速いペースで証券保有残高を縮小させていくことになります。日本が、長期国債市場において大きな混乱なくQT政策を実施できているのであれば、問題ありませんが、そうはなっていない現実をふまえると、現在のペースでQT政策を実施していくことの妥当性についての真剣な議論が望まれます。
日銀は6月会合で利上げへ。次回は年末ごろか
6月9日付けの日経新聞電子版は、日銀が6月15~16日に開催される金融政策決定会合で利上げを決める方針であると報道しました。これが実施されれば、日銀の政策金利は現行の0.75%から1.00%へと引き上げられることになります。日銀は、前回の4月会合では利上げを見送ったものの、同時に公表した展望レポートでは、利上げに対してかなり前向きな議論を展開していました。心配されたイラン戦争による景気への悪影響は、高市政権によるガソリンや電力・ガス代への補助金によって大きく和らげられました。春闘によって高水準の賃上げが維持される中で、景気が底堅く推移していることから、日銀としては、緩和的な領域にとどまっている政策金利の水準を引き上げる必要があると考えられます。
6月会合以降については、私は、年末ごろに次回の利上げ、2027年前半に再度の利上げが実施され、今次局面での利上げがそこで打ち止めになると予想しています。4月の展望レポートでは、金利政策については、政策金利が0.75%という状況下で、「実質金利が極めて低い水準にあることを踏まえると、…、引き続き政策金利を引き上げ、…」(…はインベスコが省略したことを示す)と記述されていました。この表現からは、政策金利を1.00%に引き上げたところで政策金利の水準はまだ低めであり、更なる利上げが実施される可能性が高いことがうかがわれます。一方、これまでの日銀のコミュニケーションでは、物価上昇率を2%とした時の中立金利が1.0~2.5%のレンジにあるとされていました。そのレンジの下限である1%を超えて利上げをする場合には、「実質金利が極めて低い」から金利を引き上げる必要があるというロジックではやや弱いとみられます。6月15~16日の会合では、中立金利の想定レンジに入った政策金利を今後引き上げる際に日銀が考えるロジックについて、金融市場に向けた踏み込んだメッセージがあるかどうかに注目したいと思います。
買入れ減額停止でも2027年の長期国債保有残高は41.2兆円減る
6月15~16日の日銀会合でのもう一つの注目点が、2027年4月以降の量的引き締め政策(QT政策)についての決定です。6月9日付けの日経新聞電子版によると、毎四半期ごとに日銀の長期国債月間買入れ額を2000億円ずつ減額するという現在の政策を修正し、2027年4月以降は減額を停止するという案を政策委員の過半が支持しているとのことです。このQT政策については、日銀が「長期国債のグロス買入れ額を減らす」という形で公表している政策ですが、日銀が現在保有する長期国債の償還額がいくらになるかという点を声明文で公表していないことから、海外のエコノミストから「日銀はバランスシートを縮小していない」と往々にして誤解されているようです。
そこで、日銀が公表している個別銘柄別の国債の保有残高データを基にして、四半期ごとの償還額を算出してみました(図表1)。日本銀行は、QT政策を公表した2024年7月末以降、長期国債の買入れ額を減額し続けてきました。これにより、直近の2026年1-3月期における長期国債保有残高の減少額は13.5兆円に達しました。4-6月期以降は保有国債の償還額が減っていくことから、保有残高の減少ペースはやや抑制されるものの、2026年における長期国債保有残高の減少額は47.2兆円に達し、2025年の36.0兆円を大きく上回る見通しです(図表2)。
仮に、これまで通り、日銀が2027年4月以降の長期国債買入れ額を毎四半期ごとに2000億円のペースで減らすのであれば、2027年の長期国債保有残高減少額は44.8兆円にまで膨れ上がります。一方、日本経済新聞の記事に報じられた通り減額されなければ、2027年の長期国債保有残高減少額は41.2兆円に抑制されますが、それでも2026年を大きく上回る減少額となります。日本国債のネット発行額は2021年以降、2024年まで30兆円台半ばかそれ以上であったことをふまえると、2027年は、日銀以外の投資家が70兆円以上の長期国債を購入する必要が出てきますが、長期金利のさらなる上昇なしにこれが円滑に実現するかは予断を許しません(これまでの主体別長期国債売買動向については図表3をご参照ください)。
QT政策についてより真剣な議論が望まれる
問題は、これだけ速いペースで国債保有額を減少させることが適切かどうかです。日米ユーロ圏の中央銀行の証券保有残高の推移をGDP比でみると、直近での日銀による証券保有の縮小ペースは、FRB(米連邦準備理事会)やECB(欧州中央銀行)よりもかなり速いペースで実施されてきたことがわかります(図表4)。日銀が今月の会合で2027年4月以降の国債買入れ額を横ばいに設定するとしても、欧米の実績に比べて、かなり速いペースで証券保有残高を縮小させていくことになります。日本が、長期国債市場において大きな混乱なくQT政策を実施できているのであれば、問題ありませんが、そうはなっていない現実をふまえると、現在のペースでQT政策を実施していくことの妥当性についての真剣な議論が望まれます。
MC2026-069