中国:景気の実態と2026年財政計画の評価
要旨
内需は1-2月に上向いたものの、なお弱め
3月中旬に発表された中国経済の1~2月の主要統計は、おおむね予想を上回り、低迷していた中国経済がリバウンドしたことを示唆しています。しかし、内需の改善はまだ小幅であり、中国景気はまだ弱い状況にあると考えてよいでしょう。中国の実質最終需要の前年同期比伸び率を試算したところ、2025年10-12月期はマイナス圏でした(図表2をご覧ください)。
2026年の財政政策は「やや積極化」
今月に開催された全人代では、昨年と同じように、「より積極的な財政政策」と、「適度な金融緩和政策」を維持するという方針が打ち出されました。しかし、実際の財政計画をみると、ほぼ昨年通りの内容でした。それでも、新型金融政策ツールの枠が増額された点は、昨年よりも財政政策を積極化させたことを示しています。
「4.5~5%」の成長率目標達成には追加策が不可欠か
中国当局は、3月に開催された全国人民代表大会において、2026年の成長率目標を4.5~5%に設定しました。昨年の「5%程度」から目標値が引き下げられましたが、企業の投資意欲の弱さや不動産不況の継続などをふまえると、この目標の達成はそれほど容易ではありません。当局が年後半に追加的刺激策を実施してはじめて、成長率目標の達成が視野に入ると見込まれます。
内需は1-2月に上向いたものの、なお弱め
3月中旬に発表された中国経済の1~2月の主要統計は、おおむね予想を上回り、低迷していた中国経済がリバウンドしたことを示唆しています。特に、1~2月に都市部固定資産投資、小売売上という内需関連の主要指標が改善したことは朗報であったと言えます(図表1)。1~2月の鉱工業生産は、2025年中の伸びを維持しており、引き続き堅調でした。これは、1~2月の数量ベースの輸出が前年同期比で25.7%増加するという好調さを反映したものです。これは非常に高い伸び率と言えますが、前年同期(2025年1~2月)の輸出の伸び率が2.1%に低迷していたことを受けての伸び率であるため、今後の輸出の伸び率は低下する可能性が高いと考えられます。
小売売上については、政府が2024年から実施している消費財の買い替えプログラムによる効果によって緩やかな伸びを続けています。一方、GDPの4割程度を占める投資については、都市部固定資産投資が2025年のはじめから2025年末まで継続的に減少傾向にあったことをふまえる必要があります。2026年1~2月にリバウンドしたといっても、投資の水準自体はまだかなり低水準です。総じてみると、1~2月に観察された内需の改善はまだ小幅であり、中国景気はまだ弱い状況にあると考えてよいでしょう。
統計面で入手可能なデータにより、2025年10-12月期までの中国の実質最終需要の伸び率を試算し、それを実質GDPの伸び率と比較してみたところ(いずれも前年同期比ベースの伸び率)、コロナ禍で統計が歪んだ時期を除き、2025年の前半までは両者がほぼ類似した動きをしていました(図表2)。しかし、2025年後半は、この両者は大きく乖離しました。特に10-12月期における実質GDP成長率は公表値ベースでは4.5%でしたが、ここでの試算による実質最終需要の伸び率はマイナス圏でした。
ここでの最終需要の試算においては、中間需要である在庫投資や誤差脱漏などの調整項目は考慮されていません。これらについて中国政府は公表していませんので、実態を把握しづらい面があるものの、一つの可能性としては、昨年後半に在庫投資が大きく膨らんだことが、両者の差につながった可能性があります。ただ、仮に2025年後半に在庫が過剰に積み増されたのであれば、2026年1-3月期以降に過剰な在庫を減らしていく必要がありますので、今年の成長率には下押し圧力がかかる可能性が高いと思われます。いずれにしても、中国景気は全体としてまだかなり弱い状態にあると考えられます。
2026年の財政政策は「やや積極化」
今月に開催された全人代では、昨年と同じように、「より積極的な財政政策」と、「適度な金融緩和政策」を維持するという方針が打ち出されました。ただ、実際の財政計画をみると、ほぼ昨年通りの内容でした(図表3)。具体的には、中央と地方を合わせた財政赤字のGDP比での水準、特別地方債の発行額、超長期国債の発行額はそれも昨年と同様の水準です。昨年と同じということは、これらによる経済成長押上げ効果はほとんどないことを意味します。この背景としては、中国は長年続く積極財政策により、GDP比でみた広義の政府債務が2025年末で120%程度に達したことから、以前ほど大規模に積極財政を実施する余裕がなくなってきたことがあるとみられます。
余裕がない中で実施することになったと思われるのが、新型金融政策ツールの増額政策です。これは2025年9月から開始された制度を規模の面で拡充したものです。中国当局はこの政策を金融政策の一つと位置づけていますが、実際には金融政策と財政政策、産業政策を融合させたハイブリッド政策といえます。具体的なスキームとしては、まず、①国家開発銀行など政府系の銀行3行が市場から資金調達を行う、②調達した資金を資本金として公営や民営のプロジェクトに投資する、➂それぞれのプロジェクトではこの資本金をテコにしてさらに借り入れを実施し、運営を開始する、というステップを経て実施されます(図表4)。今年資本金として注入される予定の金額は8000億元ですが、レバレッジ効果により、その何倍かの設備投資が実施される予定です。私は、今年の1~2月に固定資産投資がリバウンドしたのは、2025年9月から開始されたこの新型政策金融ツールによる効果が出始めたことが大きいと考えています。
「4.5~5%」の成長率目標達成には追加策が不可欠か
中国当局は、3月に開催された全国人民代表大会において、2026年の成長率目標を4.5~5%に設定しました。昨年の「5%程度」から目標値が引き下げられましたが、私は、この目標の達成はそれほど容易ではないと考えています。財政政策による直接的なGDP押上げ効果を試算すると、今年は2%ポイント程度と、新型金融政策ツールの効果による貢献度が高まることで、2025年の同0.6%よりもかなり大きくなる見通しです(図表5)。
ただ、中国経済が抱える供給過剰の問題が解消したわけではありませんので、企業は引き続き投資を抑制するスタンスを続けるでしょうし、個人消費も、不動産投資の弱さが続く中で、一昨年から実施している消費財借り換えプログラムで需要を先食いしたことの反動がさらに強く顕在化する可能性があります。さらに、イラン戦争によるエネルギー価格の上昇が続く場合、輸出や消費を圧迫する可能性があります。このため、中国当局は年後半に追加的な対策を実施することで、今年の成長率目標の達成を目指すと予想されます。
MC2026-038