欧州バンクローン市場、月次アップデート 2026年4月
2026年3月の欧州バンクローン市場は、相対的に高く安定したインカムがプラスに寄与したものの、月間トータル・リターンは▲0.09%となりました
S&P UBS Western European Leveraged Loan Index (以下「S&P UBS WELLI」または「指数」)の2026年3月のトータル・リターンは▲0.09%となり、内訳は価格変動が▲0.65%1、金利収入が+0.74%となりました。なお、年初来のトータル・リターンは▲0.82%となっています。
地政学リスクの上昇や特定セクターを巡る懸念が継続する中、投資家心理が試される局面が続き、3月の欧州バンクローン市場は高ボラティリティな環境となりました。一方、こうした外部要因に左右されながらも、年初2か月と比べると価格の下落は小さく留まり、パフォーマンスは相対的に底堅く推移しました。
3月は米国・イスラエルによるイラン攻撃が激化したことを背景に、世界の金融市場ではボラティリティが高まりました。ただ、月末にトランプ米大統領がイラン紛争は2〜3週間以内に終結すると示唆したことを受け、投資家センチメントは一応の落ち着きを見せ、月末を迎えました。しかしながら、ホルムズ海峡閉鎖による原油供給への懸念が高まったことで、原油価格が高騰し、当面の高止まりが見込まれています。
アジアの株式市場は最も大きく下落しました。3月のMSCIアジア太平洋指数は12%程度急落し、月間リターンではほぼ3年ぶりの最悪のパフォーマンスとなりました。欧州バンクローン市場は比較的堅調に推移したものの、地政学リスクの高まりによって市場心理は極めて慎重なものとなり、借り手と貸し手が状況を見極めるまで、当初予定されていた取引の一部が延期された模様です。
3月の欧州バンクローン市場のトータル・リターンは▲0.09%と小幅な下落となり、S&P UBS WELLI 構成銘柄の平均価格は94ユーロ台半ばで推移した後、94.48ユーロで月末を迎えました1。2月には、AIがソフトウェア・セクターを駆逐するのではという懸念が高まり、3月も引き続き材料視されました。しかしながら、投資家がAIビジネスのリスクをより的確に評価する時間を得たことで、一部の発行体のバンクローン価格は2月の安値から反発し、バンクローンの価格差はさらに拡大しました。セカンダリー市場においては、財務基盤が脆弱な発行体のバンクローンは額面に対して大幅なディスカウントで取引される一方、財務基盤が堅固で高い評価を受けるバンクローンは、引き続き額面を上回る水準で取引されています。また、一部の B格の新規発行バンクローンは、EURIBOR+400~450bp付近の99ユーロで建値されています1。引き続き、新規発行市場には資金流入が続いており、特にCLO投資家からは大規模かつ発行実績のある銘柄や、比較的シンプルな構造となっている銘柄に対する需要が目立ちました。
3月のCLO発行は依然として活況さが見られ、引き続きバンクローン市場を後押しするテクニカル要因となりました。ただ、外部環境の悪化もあり、年初来の欧州におけるCLO発行額は、37件で155億9,000万ユーロにとどまり、前年同期が38件で173億1,000万ユーロであったことを鑑みると、特にこの3月は、新規発行ペースがやや鈍化していることがうかがえます3。
2026年4-6月期に入り、欧州バンクローン市場は複雑な状況が続いています。外部環境は不透明な状況にある一方、CLO需要はバンクローンの安定した買い支え要因として続いており、ローン発行体のスポンサー勢の動きに再開の兆しも見られます。中東における紛争解決の目処がつけば、欧州バンクローン市場における不確実性が解消に向い、市場全体でセンチメントは概ね回復すると見られます。
ただ、ソフトウェア・セクターは依然として売り圧力にさらされており、AIによる業界再編への懸念が収まる気配は見られません。セクター間および格付け間で価格差が拡大していることは、バンクローン市場が二極化した状態が続く可能性が高いことを示唆しています。つまり、ディフェンシブで確信度の高いバンクローンはプレミアムで取引される一方、それ以外のバンクローンは引き続き慎重に取引されることになるでしょう。
地政学上の不確実性が高まっていること、特定のセクターが軟調となっていることなどを背景に、これからも注意深い銘柄選定やポートフォリオ運営が求められますが、インベスコのバンクローンチームは回復が見られる欧州バンクローン市場に対し、前向きかつ堅実な見通しを維持しております。
リターン:2026年2月
- 3月のS&P UBS WELLIのセクター別リターンでは、情報技術が+2.13%と最も高いパフォ-マンスとなり、続いて航空宇宙・防衛の+1.10%、金融の+0.57%となりました1。また、マイナスリターンとなったセクターで最も低いパフォ-マンスとなったのは不動産の▲4.91%、続いて化学の▲1.66%、金属/鉱業の▲0.97%となりました1 。
- 3月のS&P UBS WELLIの格付別リターンでは、「BB」格が+0.02%と最も高く、「B」格が▲0.05% 、「CCC」 格が最も低い▲1.53%となりました1。
- 3月末におけるS&P UBS WELLI 構成銘柄の平均価格は、前月末の94.97ユーロから94.48ユーロに下落しました1。同指数の3年ディスカウント・マージンは5.37%となり、前月末の5.24%から拡大しました1。
ファンダメンタルズ
3月は金融市場にとって大きな転換点となりました。イラン紛争が激化し、あらゆる資産クラスの価格が軟調となる展開となりました。年初から、リスク資産は堅調に推移していました。例えば、S&P500種指数やストックス欧州600指数は1月下旬から2月にかけ史上最高値を更新していたものの、2月末に勃発した米国・イスラエルによるイランに対する軍事攻撃により、反転下落する転換点となりました4、5。加えて、その後のエネルギー価格の高騰によって、幅広い資産クラスが瞬時に売り圧力に晒され、3月の主要な資産クラスのパフォーマンスは年初来で最悪となりました。
今回の相場下落はエネルギー市場によって先導されました。イラン紛争勃発後、ブレント原油先物価格が急騰し、3月2日には2022年3月以来となる1日で最大の上昇となり、その後も月末にかけて上昇を続けました。月末時点で、ブレント原油は1バレルあたり118ドルで取引を終え、2026年1-3月期で94%上昇し、1990年の湾岸戦争以来となる四半期での最大の上昇となりました。原油先物価格を鑑みると、投資家はもはやイラン紛争が短期的に終結すると想定していないことが示されており、3月末には6カ月物のブレント原油先物価格も大幅な高値となり月末を迎えました。この原油ショックによりスタグフレーションリスクが再燃し、投資家センチメントが悪化しました。
株式市場は、エネルギー情勢によってマクロ経済予想が悪化することにすぐに反応しました。3月の世界の株式市場は急落し、S&P500種指数は1年ぶりに月間での大幅な下落となったとともに、2022年以来初めて5週連続の下落となりました4。欧州株式市場も大幅に弱含み、ストックス欧州600指数は2022年の年央以来、月間での最大の下落となりました5。S&P500種指数におけるソフトウェア構成セクターはパフォーマンスが最低となったセクターの一つであり、2026年1-3月期前半から続いていた売り圧力がさらに強まりました。同セクターは、当四半期でトータルリターンで25%近く下落し、2008年10-12月期のグローバル金融危機の最大の下げ幅以来となる、四半期最大の下落幅となりました4。背景には、AIの成長性に対する投資家の過剰な熱狂が、バリュエーション低下や破綻リスク、短期的な収益見通しが悪化することなどに対する懸念に変わったことがあります。欧州は米国ほどのテクノロジー主導の過熱感はそれほど高くはなかったものの、相場下落局面での相関性の高まりを受け、地域間でのパフォーマンスにそれほど大きな差はありませんでした。
債券市場も再び軟調な展開となりました。原油価格の上昇がインフレ圧力を高め、投資家は先進各国の金融政策の方向性を見直すようになりました。米国では、投資家が本年中の利下げの可能性がほぼなくなったと見ているため、米国債は大幅な売り圧力にさらされました。ドイツ国債の利回りは、2011年以来初めて3%を上回って越月しました。
3月下旬に発表されたマクロ経済指標は、特に欧州において、エネルギーショックによる経済への影響を反映し始めています。3月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)では、サービス業が減速し、先行指標も弱含みとなった一方、製造業PMIが上昇したのは、需要改善よりも主に供給混乱によるものでした。また、投入物価は3年ぶりの急上昇となりました。経済活動水準は成長率の長期トレンドと一致しているものの、リスクは下方へ傾いており、成長見通しと政策の両方にとって先行きは不透明になっています。
かかる状況下、金融市場は欧州中央銀行(ECB)がタカ派的な政策対応を織り込み始めたと見ています。エネルギー価格の高騰がインフレ圧力を広範に高めていくのではないかという懸念を背景に、金融市場の見通しは年後半の利上げに転じています。
主な動きは以下となります。
- 3月のユーロ圏の経済活動は鈍化しました。サービス業の低迷を受け、3月のユーロ圏PMIは50.5まで低下しました。一方、製造業の上昇は需要回復というよりも、供給の混乱によるものであり、経済成長に対する下振れリスクが高まっています。
- インフレ圧力が高まりました。エネルギーコストの上昇により、投入物価は3年ぶりの急上昇となりましたが、販売価格への転嫁が限定的であることから、企業の利益率に対する圧力が強まっていると見られます。
- ECBの金融政策がタカ派的になったと見られています。景気動向は鈍化しているものの、政策当局者は、エネルギー価格高騰に起因するインフレの上振れリスクを懸念しています。金融市場は二次的な影響を防ぐための利上げを織り込んでいます。
3月末現在、モーニングスター欧州レバレッジドローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は1.42%でした6。過去平均は年率2.64%となりました6。
投資機会
年初、欧州バンクローン市場のボラティリティが高まったことに続き、投資家の投資スタンスが選別的になったものの、新規発行は徐々に回復しつつあります。成長見通しの変化に伴い、バリュエーションが調整される中、ソフトウェア・セクターなどは依然として弱含みで推移しています。2月下旬以降、地政学リスクの高まりにより不確実性が増していますが、CLO需要が継続していることが下支えとなり、欧州バンクローン市場は比較的堅調に推移しています。
G2026-04-010
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