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欧州バンクローン市場、月次アップデート 2026年8月

2026年7月の欧州バンクローン市場 月次アップデート
2026年7月の欧州バンクローン市場は、低格付など一部を除いて、堅調な展開が続きました。

S&P UBS Western European Leveraged Loan Index (以下「S&P UBS WELLI」または「指数」)の2026年7月のトータル・リターンは+0.25%となり、内訳は価格変動が▲0.29%1、金利収入が+0.54%となりました。なお、年初来のトータル・リターンは+2.02%となっています。

7月はリスク資産が堅調に推移しました。地政学リスクの後退、堅調な企業業績、リスク資産に対する投資家の継続的な需要を背景に、主要株式市場は史上最高値を更新する展開となりました。良好なテクニカル要因の恩恵もあり、欧州バンクローン市場もプラスリターンとなりました。バンクローンの新規組成の流れは当月も続いていますが、リファイナンスやリプライシングによるものが中心となっています。年初来のバンクローン組成総額の約3分の2はリファイナンス目的であり、借り手は満期よりかなり早い段階で債務の満期繰り延べを行うことが可能となっています2

本年最も注目すべきことの一つに、欧州バンクローン市場において満期の壁(maturity wall)が急速に縮小したことが上げられます。2025年7月以降、借り手が好条件の市場環境を利用して既存の債務を借り換えを行った結果、2028年に満期を迎えるバンクローン残高は、約910億ユーロから380億ユーロへと約6割減少しました。一方、残存する満期の壁は信用力の低い発行体に集中しており、2028年満期のバンクローンの4割近くが、額面1ユーロ当たり90セントを下回る水準で取引されています。このように、発行体の信用力による格差が拡大していることが明らかになっています2

テクニカル要因が依然として好材料となっています。年初来7月末時点でのCLO発行額は87件、総額363億ユーロとなり、本年も堅調に推移すると思われます2。堅調なCLO組成、順調な償還、継続的な再投資需要などを背景に、リファイナンスおよび新規資金による発行の双方が、バンクローン市場で十分に消化されています。スプレッドの縮小ペースは鈍化したものの、新規発行市場は引き続き堅調に推移しています。2026年上半期に特徴的となったリプライシングはペースを失いつつありますが、高格付けのBB格案件では依然としてEURIBOR+325bp前後の水準で推移しています。なお、ローン組成のパイプラインが足元拡大していることから、今夏以降、需給環境がより均衡した状態になる可能性が示唆されています2

欧州バンクローン市場については、引き続き堅調な推移を見込んでおります。一方で、年初のような一方向の相場展開が続く環境ではないとも考えています。テクニカル要因は引き続き市場の支援材料になるとみられるものの、今秋以降はバンクローンの新規組成案件の増加に伴い供給量が拡大する見込みであり、向こう数四半期にわたって需給環境がやや軟化する可能性があります。もっとも、欧州バンクローン市場のファンダメンタルズは引き続き良好です。ごく一部の個別事例を除けば、信用環境は安定しており、デフォルト率も総じて低位で推移すると見ています。

図1 :バンクローン及びCLOの需給推移
リターン:2026年7月
  • 7月のS&P UBS WELLIのセクター別リターンでは、情報技術+1.28%と最も高いパフォ-マンスとなり、続いてエネルギーの+1.25%、金融の+1.24%となりました1。また、マイナスリターンとなったセクターで、最も低いパフォ-マンスとなったのはメディア・通信の▲0.76%、続いて化学の▲0.54%、不動産の▲0.11%となりました1
  • 7月のS&P UBS WELLIの格付別リターンでは、「B」格が+0.40%と最も高く、「BB」格が+0.34% 、「CCC」格が最も低い▲1.30%となりました1
  • 7月末におけるS&P UBS WELLI 構成銘柄の平均価格は、前月末の95.82ユーロから95.53ユーロに下落しました1。同指数の3年ディスカウント・マージンは4.85%となり、前月末の4.81%からわずかに拡大しました1
ファンダメンタルズ

7月もイラン情勢がマクロ経済の主要な変動要因となりました。エネルギー危機が和らぐことはなく、市場は新たな緊張の高まりに直面しました。6月に締結された停戦覚書が事実上破棄され、米国・イラン双方が攻撃を再開しました。これにより原油価格は再び急騰し、市場全体に再びインフレ圧力かかりました。しかしながら、欧州のマクロ経済は予想以上に堅調であることが示されました。各経済指標や景況感が改善したほか、2026年4-6月期のGDPが予想を上回ったことで、ユーロ圏の景気回復には当初の想定よりも一定の勢いがあることが示されました。

ブレント原油が高騰したことは、地政学リスクが再燃したことを最も顕著に表わしています。月初のブレント原油は1バレル約71ドルから100ドル強まで上昇しましたが、イラン紛争が一時的に落ち着いたことを受け、月末には1バレル約90ドルまで反落しました。エネルギー価格の再上昇により、投資家はインフレと金融政策に再び注目することになりました。

当月の株式市場のパフォーマンスは、6月よりも変動が大きくなりました。AI・半導体関連銘柄の見直しを受け³、世界の株式市場が下落した一方、欧州株式市場は堅調な国内経済の成長指標や、過熱感のあるテクノロジー関連銘柄からのセクターローテーションに支えられ、比較的堅調に推移しました。ストックス欧州600指数は7月に1.3%上昇し、年初来の上昇幅を拡大しました⁴。

エネルギー価格の上昇や堅調な経済指標を受けたインフレ圧力の高まりにより、債券市場は再び軟調な展開となりました。主要債券市場では長期国債利回りが上昇し、ドイツ10年国債利回りは35bp上昇して3.20%となり、2011年3月以来の高水準となって推移しました。

欧州のマクロ経済指標は、極めて良好に推移しました。地政学リスクの再燃やエネルギー価格の高騰にもかかわらず、7月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)は6月から2ポイント上昇し、各国・各セクターにおいても改善が見られました5。サービス業が活発化し、製造業の生産高はウクライナ紛争開始以来の最高水準に達しました。また、堅調な内需に支えられ、2026年4-6月期のユーロ圏GDPは前期比0.4%増となり、予想を上回りました6

欧州委員会の景況感指数(ESI)は2カ月連続で改善し96.9となり、好調を維持しています7。一方、インフレ圧力はわずかに高まり、ユーロ圏消費者物価総合指数(HICP)は前年比2.9%に上昇し、コアインフレ率も2.5%に上昇しました。主にエネルギー価格と、堅調なコア財価格の上昇によるものです6。なお、経済成長の勢いは引き続き改善しているものの、インフレ率は依然として目標値を上回っており、金融当局は慎重な姿勢を維持しています。

こうした状況を背景に、欧州中央銀行(ECB)は7月の定例理事会で政策金利を据え置いたものの、金融引き締めを容認するタカ派的な姿勢を維持しました8。ECBは政策金利に関するフォワードガイダンスを明確にしなかったものの、同行は引き続き物価を安定させると共に、エネルギー価格の上昇がインフレに広範に波及するリスクを強調しており、年内に追加利上げを行う可能性が十分にあります。

当月の主な動きは以下となります。

  • エネルギー危機が再び激化しました。今月、イラン紛争が再燃したことを受け、ブレント原油は急騰しました。月初、1バレル約71ドルから100ドル強まで上昇した後、月末には90ドル前後まで反落した。これにより、欧州の経済見通しにおいて、エネルギー価格上昇に起因するインフレリスクが再浮上しました9
  • ユーロ圏経済が広範に復調してきています。7月のユーロ圏総合PMIは6月から2ポイント上昇しました。また、2026年4-6月期のユーロ圏GDPは前期比0.4%増と予想を上回る結果となり6、景況感も改善したことから7、経済成長の勢いは引き続き改善しています。しかしながら、総合インフレ率は前年比2.9%上昇、コアインフレ率も約2.5%上昇したため6、ECBは引き続きタカ派的な姿勢を維持しています8
  • 7月末現在、モーニングスター欧州レバレッジドローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は1.51%でした10。過去平均は年率2.62%となりました10
投資機会

6月に新規発行市場が復調したことを受け、7月の欧州バンクローン市場では投資家心理の改善もあり、新規発行がさらに加速しました。高格付けクレジットに対する需要は引き続き堅調であり、新規発行市場およびセカンダリー市場の双方で良好な市場環境となりました。欧州のマクロ経済の勢いが改善していること、根強いCLO需要、良好なテクニカル要因などを背景に、今後とも欧州バンクローン市場は堅調に推移し、選別的な投資機会に恵まれていると見られます。

図2:安定資産のパフォーマンス推移
各資産の相対利回り
  • 1.

    S&P UBS Western European Leveraged Loan Index (S&P UBS WELLI)、ユーロ建てヘッジ付き、2026年7月31日現在。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。指数に直接投資することはできません。

  • 2.

    Pitchbook Data Inc. より、2026年7月31日現在。

  • 3.

    ブルームバーグより、世界株式およびドイツ10年国債利回り。2026年7月31日現在。

  • 4.

    ストックス欧州600指数より、2026年7月31日現在。同指数は、欧州株式市場全体を表す株価指数です。

  • 5.

    S&P Global Market IntelligenceのHCOBユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)、2026年7月現在。

  • 6.

    Eurostatよりユーロ圏GDP、ユーロ圏総合消費者物価指数(HICP)、コアインフレ指数。2026年7月31日現在。

  • 7.

    欧州委員会 (European Commission)のユーロ圏景況感指数(ESI)、2026年7月現在。Business and Consumer Survey Results。

  • 8.

    欧州中央銀行(ECB)の2026年7月の定例理事会より。 

  • 9.

    ブルームバーグよりブレント原油価格。 2026年7月31日現在。

  • 10.

    Morningstar European Leveraged Loan Index。過去の平均デフォルト率は、2007年7月1日から2026年7月31日までを対象に集計しています(除く、ディストレス債)。

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