欧州バンクローン市場、月次アップデート 2026年2月
2026年1月の欧州バンクローン市場は、相対的に高く安定したインカムがプラスに寄与したものの、月間トータル・リターンは▲0.22%となりました。
S&P UBS Western European Leveraged Loan Index (以下「S&P UBS WELLI」または「指数」)の2026年1月のトータル・リターンは▲0.22%となり、内訳は価格変動が▲0.73%1、金利収入が+0.52%となりました。
年初の欧州バンクローン市場では、セカンダリー市場で不安定な展開となりましたが、プライマリー市場における新規発行は堅調さが維持され、1月の新規発行額は105億ユーロに達しました。これは、2025年の月間平均発行額の106億ユーロとほぼ同水準となりますが、2025年末と比べると顕著な増加を示しています。1月の最終週はこれまで最も活発な供給が行われた週の一つとなり、トランプ米大統領のグリーンランドを巡る不透明感の長期化を警戒し、借り手が負債調達を急ぐ動きが見られました。バンクローンとハイ・イールド社債の双方で発行が加速しました。
プライマリー市場では活況さが続くCLOの新規発行を背景にタイトな需給環境が維持されており、需給環境が良好なうちに資金調達を行おうとする動きが見られました。1月の供給は前半中心に全体の約64%がリプライシング案件2となりましたが、後半は新規での資金調達が目立ち、1月の最終週には逆にリプライシングが全体の約6%に留まり2、大半が新規での資金調達となりました。その結果、当月は買収案件が8件、LBOが2件となり、単月の新規取引の件数としては、2022年以来の高水準となりました2。供給の加速は問題なく、消化されており、依然としてバンクローン全体の需要が新規発行を上回っていることを示しています。新規発行のプライシングは縮小し、B格のスプレッドは約351bpと、2025年10月以来の低水準へ縮小しました1。
一方、上述の通り、セカンダリー市場の状況は異なり、地政学リスクの高まり、関税問題に対する懸念、ソフトウェア銘柄に対する売り圧力の高まりなど背景に、1月のS&P UBS WELLI は▲0.22%のリターンとなりました1。指数構成銘柄の1月の平均価格は、前月の96.15ユーロから95.59ユーロへ下落しました。月末にかけては、人工知能(AI)関連銘柄の業績懸念から売却が加速し、特に信用力に懸念があると見られているION Platform、McAfee、BMCなどのソフトウェア関連銘柄が大きく値を下げる展開となりました1。しかしながら、全体として最も軟調となった業種は林産品/パッケージングで、想定外の損失を発表した1Klockner Pentaplastがアンダーパフォームの主因となりました。
欧州CLO市場では2極化の動きが見られました。AAA格からA格のCLOノートは、 BWIC(Bids Wanted In Competition、競合入札取引)が活発化したこと、AAA格のクーポンがEURIBOR +120bp前後のスプレッドまで縮小したことなどを背景に堅調さを維持しました。一方、より格付の低いメザニン以下のCLOノートは、市場価値テストの抵触懸念や BBB 格付トランシェの格下げリスクへの警戒感等から、軟調な展開となり、銘柄間の格差も拡大しました。2025年末にかけての良好なCLO市場ではバンクローン価格の下落にもかかわらず、CLOのスプレッドは縮小し続けていましたが、メザニン以下におけるこうした動きは大きな転換点を示唆している可能性があります。
年初の欧州バンクローン市場は一時的に不安定な動きを見せたものの、基礎的なファンダメンタルズは依然として堅調です。新規発行は健全なペースで推移しており、リプライシングも強いテクニカル要因に支えられています。また、新規資金の供給も着実に続いています。一方、ソフトウェア、一部の資本財、サービス分野では信用力の弱まりがみられ、短期的な逆風となる可能性があります。それでも、2026年1ー3月期の欧州バンクローン市場は、米国と比較しても堅調なマクロ環境、依然として高水準が見込まれるCLO需要、そして低位で推移する資金調達コストが下支えし、総じて安定した展開となる見通しです。
リターン:2026年1月
- 1月のS&P UBS WELLIのセクター別リターンでは、メディア・通信が+0.52%と最も高いパフォ-マンスとなり、続いて食品/タバコの+0.30%、金属/鉱業の+0.27%となりました1。また、マイナスリターンとなったセクターで最も低いパフォ-マンスとなったのは林産品/パッケージングの▲2.72%、続いて情報技術の▲1.55%、化学の▲0.52%となりました1 。
- 1月のS&P UBS WELLIの格付別リターンでは、「CCC」格が+1.35%と最も高く、「BB」格が▲0.03%、「B」格が最も低い▲0.32%となりました1。
- 1月末におけるS&P UBS WELLI 構成銘柄の平均価格は、前月末の96.16ユーロから95.59に下落しました1。同指数の3年ディスカウント・マージンは4.93%となり、前月末の4.74%から拡大しました1。
ファンダメンタルズ
地政学リスクが持続的な緊張をもたらした一方、リスク資産の価格は上昇しました。欧州の視点では、ベネズエラ、イラン、グリーンランドにおける地政学リスクの高まりは、金融市場のボラティリティをわずかに高めたという認識にしか過ぎませんでした。ブレント原油は4年ぶりの大幅上昇となり、貴金属は投資家が分散投資を進めたことを受け、上昇しました。欧州市場は底堅く推移し、ユーロ・ストックス50指数は世界の主要株価指数と同様に上昇して越月しました。
マクロ経済の主なハイライト
- 1月のヘッドライン・インフレ率は、エネルギー価格の下落幅が拡大したこと(前年比4.1%減)、コアインフレ率が前年比+2.2%の小幅な上昇にとどまったことなどを背景に、前年比+1.7%に鈍化しました。
- 1月のユーロ圏総合PMI(改定値)は51.3となり、ユーロ圏の経済成長率が年率換算で+1.2%前後となる水準に一致しました(下記参照)。経済の先行きに対する期待感が高まり、特にドイツでの顕著な雇用指標の悪化を相殺しました。また、サービス業が鈍化した一方で、製造業は改善の兆しが見られました。
- ユーロ圏の2025年10-12月期のGDP成長率(速報値)は、市場予想通り、年率換算で1.3%増と堅調に推移しました。また、世界的に貿易取引が混乱したにもかかわらず、政策金利の低下、インフレの緩和、2025年下半期における企業景況感・消費者信頼感の改善などを背景に、2025年のユーロ圏の生産高は年率換算で1.1%増加しました。また、ドイツの投資支出の増加に先導され、2026年は各国の財政政策が景気拡大を後押しすると予想されます。
- 欧州中央銀行(ECB)は2月初旬に行われた定例理事会で、全ての主要政策金利を据え置き、中銀預金金利を2%に維持しました。また、ECBはユーロ圏のインフレ率が中期的に2%の目標値付近で安定的に推移する、という見通しを重ねて表明しました。また、失業率の低下、堅調な民間部門のバランスシート、公共投資の増加などが下支えするユーロ圏経済の回復力を強調しました。加えて、ECBは世界的な貿易摩擦や地政学リスクの高まりなどによって、不確実性が高まっていることを指摘しつつも、定例理事会ごとにデータに基づいた金融政策を実行する方針であることを再確認した上で、今後の政策金利の方向性については示唆しませんでした。
- 2月に入り、月初、AI技術の急速な進展を背景に、投資家が各AI関連企業の競争力を再評価したことから、ソフトウェアおよびAI関連のテクノロジー株が世界的に軟調となる展開となりました。ソフトウェア関連銘柄が幅広い急落を招いた結果、ハイテク株中心のナスダックは下落しました。この反落は、AIによる業務の自動化が、従来のソフトウェアを利用した業務フローに大きな打撃を与える可能性が高まっていることを示唆しています。AI導入が加速する中、金融市場が関連各社の収益見通しや当該セクターのビジネスモデルにどのような影響を与えるかといった評価を続ける中、当面、金融市場のボラティリティは高水準で推移すると見られます。
- 1月末現在、モーニングスター欧州レバレッジドローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は1.57%でした3。過去平均は年率2.65%となりました3。
投資機会
GDPやインフレが安定的に推移していることが、欧州バンクローン市場を継続的に支えています。これまでも、欧州バンクローンは比較的高いリスク調整後リターンを提供してきております(図2)。年初はボラティリティが高まったものの、ファンダメンタルズは依然として堅調に推移しています。新規発行は順調であり、リプライシングはテクニカル面での需要を喚起し、新規資金取引が再び増加しています。ソフトウェアや特定の産業の一部に脆弱性が見られることが問題となるものの、欧州には回復力があり、2026年1-3月期にかけて、低金利環境と旺盛なCLO需要が、引き続き欧州バンクローン市場を底支えする要因となると見られます。
G2026-02-011
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