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欧州バンクローン市場、月次アップデート 2026年6月

2026年5月の欧州バンクローン市場 月次アップデート
2026年5月の欧州バンクローン市場は、前月に続いて、堅調な推移となりました。

S&P UBS Western European Leveraged Loan Index (以下「S&P UBS WELLI」または「指数」)の2026年5月のトータル・リターンは+0.58%となり、内訳は価格変動が+0.06%1、金利収入が+0.52%となりました。なお、年初来のトータル・リターンは+1.47%となっています。

5月に入ると、3月から続くイラン紛争による金融市場の混乱が収束したことなどから、クレジット市場は堅調に推移しました。マクロ経済の不確実性や地政学リスクは依然残るものの、市場参加者は、テクニカル要因や発行体のファンダメンタルズをより注目するようになっています。こうした状況下、欧州バンクローン市場も堅調に推移し、引き続きリスク資産全般を上回るパフォーマンスとなりました。

5月の欧州バンクローン市場は、投資家センチメントの改善と堅調な需要に支えられ、強含みで推移しました。発行体に対する信頼感の高まりと市場環境の改善を受け、新規発行市場が回復する中、セカンダリーでの価格も引き続き堅調に推移しました。良好なテクニカル要因と持続的な投資家資金の流入を背景に、バンクローン市場は引き続き安定的な展開となりました。

セクター動向は概ね横ばいで推移しました。テクノロジー関連のクレジット、特にソフトウェアおよび情報技術サービス・セクターに対しては、破綻リスクや業績見通しに対する懸念が残っているため、引き続き慎重な見方が続いています。一方、堅実なキャッシュフロー創出力、競争力のある消費者向け最終製品、保守的な資本構成を持つ発行体は、新規発行市場およびセカンダリー市場の双方で、引き続き安定した需要を喚起しています。

5月の新規発行額は99億ユーロと、4月の19億ユーロと比較して大幅に増加し、年初来で最高の発行額となりました2。しかしながら、発行の中心はリファイナンス案件であり、新規LBO案件の発行は引き続き低調でした。一方、テクニカル要因の改善や借り手に対する信頼感の高まりを背景に、リプライシング(条件変更)案件も一部で再び見られるようになりました。「B」格のバンクローンのプライシングはわずかにタイト化し、信用力の高い案件はEURIBOR+350bp前後までの水準で取引されています1

5月も引き続き、CLO発行がバンクローン市場の需要を下支えしました。新規組成は極めて堅調となり、新規発行市場を継続的に下支えした一方、セカンダリー市場のCLOは、クレジット市場全体の改善に伴い、スプレッドが縮小しました。CLOに対する需要は旺盛だったものの、供給も多かったため、スプレッドの縮小幅は限定的なものにとどまりました。

今後については、ローン供給が抑制される一方、継続的なCLO需要によるテクニカル要因が、今後もバンクローン市場を下支えすると見られます。しかしながら、発行体の信用ファンダメンタルズには格差があり、当面、個別銘柄間のばらつきは大きくなると考えられます。

図1 :バンクローン及びCLOの需給推移
リターン:2026年5月
  • 5月のS&P UBS WELLIのセクター別リターンでは、情報技術が+1.60%と最も高いパフォ-マンスとなり、続いて耐久消費財の+1.19%、エネルギーの+1.02%となりました1。また、マイナスリターンとなったセクターで、最も低いパフォ-マンスとなったのは金融の▲0.12%、続いて製造の▲0.01%、不動産の▲0.01%となりました1
  • 5月のS&P UBS WELLIの格付別リターンでは、「B」格が+0.65%と最も高く、 「BB」格が+0.37% 、「CCC」 格が最も低い▲0.20%となりました1
  • 5月末におけるS&P UBS WELLI 構成銘柄の平均価格は、前月末の95.77ユーロから95.95ユーロに上昇しました1。同指数の3年ディスカウント・マージンは4.75%となり、前月末の4.85%から縮小しました1
ファンダメンタルズ

リスク資産価格は4月の反発を足掛かりに、3月の暴落から大きく回復しました。しかしながら、エネルギー情勢や経済の不確実性が、インフレ期待や景気先行指標に引き続き影響を及ぼしているため、欧州のマクロ経済は依然として厳しい状況が続いています。

月初、ブレント原油の値動きが大きくなり、イラン紛争が外交的に終結するとの期待が高まったことを受け、約19%下落しました。これは、2020年3月以来、最大の月間下落率となっています。しかしながら、紛争終結への期待感が低下し、地政学リスクが再び高まるにつれ、原油価格は月末にかけて再度上昇し、依然として紛争前よりも高い水準で推移しています。重要な点としては、原油先物価格が高値圏で推移していることから、市場はイラン紛争が短期的に解決されることを示唆しています。ボラティリティは4月と比較して低下方向にあるものの、エネルギー価格は引き続き地政学リスクを織り込んだ水準で推移しています。

5月の株式市場は堅調に推移しました。米国株に牽引され、世界の株式市場は広範かつ持続的に反発し、S&P500種指数は5.3%上昇、史上最高値を更新しました3。テクノロジーおよびAI関連セクターは大きくアウトパフォームし、半導体関連銘柄が大幅に上昇しました。欧州株式市場も上昇し、月を通してみるとストックス欧州600指数は堅調な展開となったものの、セクターごとのパフォーマンスには、ばらつきが見られました。

5月の債券市場は、概ね軟調な展開となりましたが、月末にかけては落ち着いた展開となりました。月央にかけては各国の国債利回りが急上昇し、数年ぶりの高水準となりました。米30年国債利回りは5.18%に達し、ドイツ10年国債利回りは3.19%(2011年以来の高水準)まで上昇しました4。長期金利が上昇した背景には、米国の経済指標が堅調に推移していること、インフレが緩やかな上昇を続けていること、エネルギー価格の高騰がインフレ圧力を高めていることなど、複合的な要因があると考えられます。月後半には、イラン紛争の緊張が若干緩まったことで債券利回りは小幅に低下したものの、4月と比較すると依然として高水準で推移しています。

欧州のマクロ経済指標は、好不調が混在する状況となりました。欧州では、最新のデータでは引き続き景気減速が加速していることが示されています。実際、4月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)は既に景気後退圏に落ち込んでいました。こうした状況にもかかわらず、市場は欧州中央銀行(ECB)がよりタカ派的な姿勢を続けると見ています。また、5月に原油価格がやや落ち着いたものの、高止まりしているエネルギー価格が、より広範で持続的なインフレにつながる可能性があることから、市場は年内に政策金利がさらに引き上げられと想定しています。政策金利は当面高水準で推移し、利下げよりも追加利上げとなる可能性が高いと予想しています。

当月の主な動きは以下となります。

  • エネルギー価格のボラティリティの方向性が変化しています。月初、ブレント原油はイラン紛争の終結期待から急落しましたが、その後再び上昇しました。原油先物価格は、引き続き地政学リスクを織り込んだ高水準で推移しています。
  • 欧州経済は依然として低調です。ユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)など、最新の経済指標も鈍化し、景況感は悪化しています。経済の下振れリスクが依然として存在していることを示唆しています。

5月末現在、モーニングスター欧州レバレッジドローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は1.75%でした5。過去平均は年率2.63%となりました5

投資機会

今月、クレジット市場の環境は改善され、投資家心理が回復し、新規発行は大幅に増加しました。ソフトウェアなどの一部のセクターでは、収益見通しや破綻リスクに対して引き続き懸念されているものの、高格付け銘柄に対する需要は旺盛です。マクロ経済および地政学リスクに対する不確実性が残る中、欧州バンクローン市場は根強いCLO需要、テクニカル要因の改善、新規発行市場が活況であることなどを背景に、堅調に推移しています。今後とも選別的な投資機会が整っていると見られます。

図2:安定資産のパフォーマンス推移
各資産の相対利回り
  • 1.

    S&P UBS Western European Leveraged Loan Index (S&P UBS WELLI)、ユーロ建てヘッジ付き、2026年5月31日現在。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。指数に直接投資することはできません。

  • 2.

    Pitchbook Data Inc. より、2026年5月31日現在。

  • 3.

    S&P500種指数より、2026年5月31日現在。同指数は、米国株式市場全体を表す株価指数です。

  • 4.

    ブルームバーグより、 2026年5月31日現在。

  • 5.

    Morningstar European Leveraged Loan Index。過去の平均デフォルト率は、2007年6月1日から2026年5月31日までを対象に集計しています(除く、ディストレス債)。

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