欧州バンクローン市場、月次アップデート 2026年3月
2026年2月の欧州バンクローン市場は、前月に続いて軟調な展開となり、月間トータル・リターンは▲0.52%となりました。
S&P UBS Western European Leveraged Loan Index (以下「S&P UBS WELLI」または「指数」)の2026年2月のトータル・リターンは▲0.52%となり、内訳は価格変動が▲1.00%1、金利収入が+0.48%となりました。なお、年初来のトータル・リターンは▲0.73%となっています。
1月はリプライシング案件が予想外に増加したものの、2月は大きく減速し、1月の560億ユーロから180億ユーロとなりました。軟調なマクロ環境下、必要とされるスプレッド水準の拡大も借り手のリプライシング活動を停滞させました。B格のスプレッドは2025年初の最低水準となる343bpまで一時的に縮小していましたが、再び351bp程度まで拡大しています。
一方、新規での資金調達に伴うローン組成は堅調に推移しました。新規発行額は約60億ユーロとなり、年初来の新規発行累計額は約150億ユーロに達しました2。これは、2024年および2025年の同時期を大きく上回る水準となり、レンダー側はより慎重で選別した方針に転じつつある中、買収およびイベント関連の資金調達が徐々に回復していることを示しています。
2月の欧州バンクローン市場は、前月と比べ、セクターや格付間でパフォーマンスの差がより顕著になりました。2月は、セクター別では化学が最も高いパフォーマンスとなり、続いて不動産と非耐久消費財となりました1。対照的に、情報技術は最も低いパフォーマンスとなり、金融とメディア・通信も低調となりました1。この傾向は、格付け別のパフォーマンスにも表れています。CCC格が最も高いパフォーマンスとなり、続いてBB格となり、B格は最も低いパフォーマンスとなりました1。こうした動きを反映し、2月の指数構成銘柄の平均価格は94ユーロ台後半に下落し、ディスカウント・マージンは小幅に拡大しました1。
ソフトウェア・セクターは、引き続き、バンクローン市場に最も大きなインパクトを与えることになりました。投資家がAIの進化が他セクターにも与えるリスクを再評価したこともあり、Pia Group、Dedalus、Team.Blueなどの複数の借り手はバンクローンの新規組成を延期しました。また、米国および欧州株式市場においてハイテク銘柄が軟調になり、市場センチメントが悪化したことを受け、投資家はリターン獲得の確度が高いディフェンシブなゾーンに軸足を移しました。
また、構造的に複雑な取引が増える中、投資規律がより重要視されることとなりました。Telenetのリファイナンスが延期されたことで、こうした傾向が浮き彫りとなりました。バンクローン市場は様々な仕組みの取引を受け入れているものの、シンプルで分かりやすい資本構造を持つ発行体ががますます選好されるようになっています。例えば、Diot‑Siaci, LGC, SGB‑SMIT、Prosolなど、よりシンプルな資本構造を持つ既存の借り手は、リプライシング、バンクローン契約の修正や期間延長、新規発行などにおいて、レンダーから支援姿勢を得ています。
月末にかけて、中東における地政学リスクが高まり、市場における警戒感がさらに強まる展開となりました。3月初の米国・イスラエルによるイラン攻撃は新たな不確実性をもたらし、原油価格を急騰させることとなりました。広範なリスクセンチメントが潜在的に悪化していることを背景に、バンクローンの新規発行は一時的に減速する可能性があります。欧州バンクローン市場はこれまで安定的に推移していますが、3月に向けてより慎重な姿勢を取らざるを得ない状況です。
それでもなお、欧州バンクローン市場は顕著な回復力を示し続けています。持続的なCLO需要が存在することや、選別しながらも、エクイティ・スポンサー各社は新規ディールへの投資姿勢を維持しており、バンクローン市場は良好な需給環境が維持されています。ただ、AIの躍進がソフトウェア・セクターのボラティリティを高め、地政学的リスクも高まる中、2026年1-3月期の最終月を迎えるにあたって、短期的には当社は慎重な見通しを維持いたします。
リターン:2026年2月
- 2月のS&P UBS WELLIのセクター別リターンでは、化学が+2.66%と最も高いパフォ-マンスとなり、続いて不動産の+0.50%、非耐久消費財の+0.48%となりました1。また、マイナスリターンとなったセクターで最も低いパフォ-マンスとなったのは情報技術▲4.91%、続いて金融の▲1.71%、メディア・通信の▲0.80%となりました1 。
- 2月のS&P UBS WELLIの格付別リターンでは、「CCC」格が+1.17%と最も高く、「BB」格が+0.44%、「B」格が最も低い▲0.93%となりました1。
- 2月末におけるS&P UBS WELLI 構成銘柄の平均価格は、前月末の95.59ユーロから94.97ユーロに下落しました1。同指数の3年ディスカウント・マージンは5.24%となり、前月末の4.93%から拡大しました1。
ファンダメンタルズ
地政学リスクが高まり、世界的にリスク資産のボラティリティが高まったにもかかわらず、2月の欧州株式市場は引き続き堅調に推移しました。ストックス欧州600指数は、2013年以来最長となる、8カ月連続の上昇となりました3。また、ドイツ10年国債の利回りが20bp低下し、欧州各国の国債利回りも低下したことで債券市場が上昇し、市場センチメントは安定的に推移しました。
2月のグローバル金融市場で最も注目を集めたのは、ハイテク関連株の急落でした。欧州には実質的な影響はなかったものの、リスクオンが広範に意識されました。相次ぐAIの新製品が発表される中、既存のソフトウエア関連企業が壊滅的な打撃を受けるとの懸念から、特に米国のソフトウェア関連株は大幅に下落しました。さらに、「AIの普及により、2028年までに米国の失業率が急上昇する」との仮説が広まったことで、値下がり圧力がさらに高まりました。加えて、エヌビディアを含む主要なハイテク企業の決算が2023年から2024年にかけての例外的な好決算には及ばなかったため、かかるグロース株から資金流出も加速しました。欧州はソフトウェアセクターへの依存度が低いものの、ハイテク関連株の牽引役が変わっていくことで、リスク選好度は十分に影響を受けると思われます。
2月末には、米国・イスラエルによるイランへの攻撃で、中東を巡る地政学リスクの高まりが頂点に達しました。攻撃が2月末の週末に行われたことから、金融市場への影響は3月に入って大きく現れる見込みです。かかる紛争の悪化懸念から、ブレント原油は7カ月ぶりの高値を更新しました。対イラン攻撃は、米国ーイラン間の合意達成の猶予期間が迫っていると警告された直後に行われ、原油やエネルギー関連資産のボラティリティが急上昇しました。
また、米国の貿易政策の変化も、金融市場にとっては再度、潜在的な逆風になっています。米連邦最高裁は2025年に導入された相互関税の大部分を無効とした一方、米政権は1974年通商法に基づく10%の一時的な関税賦課を世界各国に通告しました。欧州連合(EU)はこれに対抗し、2024年の環大西洋貿易協定の批准を停止し、グローバルサプライチェーンが正常化しつつある中、貿易摩擦の再燃を示唆する結果となりました。
2月の金融市場の主な動き:
- 2月のストックス欧州600指数は3.9%上昇し、8カ月連続の上昇となりました。一方、日経平均株価は10.4%と急騰、新興国株式は5.5%上昇しました3, 4。対照的に米国株は低迷しました。
マグニフィセント7は7.3%下落し、ソフトウェア関連株は8.9%下落。ハイテク株に対する売り圧力の高まりにより、S&P500種指数は0.8%下落しました5。 - 2月のエネルギー市場は、市場によって異なる展開となりました。地政学リスクの高まりを背景に、原油価格は堅調に推移し、ブレント原油は2.5%上昇、WTI原油も2.8%上昇しました。
一方、天然ガスは1月の急騰から反落し、米国の先物価格は34.3%下落し、欧州の先物価格は18.6%下落しました。暗号資産は軟調に推移し、ビットコインは14.7%下落し、5カ月連続で下落する展開となりました。
2月末現在、モーニングスター欧州レバレッジドローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は1.43%でした6。過去平均は年率2.64%となりました6。
投資機会
GDPやインフレが安定的に推移していることが、欧州バンクローン市場を継続的に支えています。年初からボラティリティは高まっていますが、ファンダメンタルズは概ね堅調であり、足元では新規資金による取引が徐々に戻りつつあります。一方、特にソフトウェア・セクターは、AI主導のセクターローテーションの影響を受け、部分的に脆弱性が見られることから、今後も軟調に推移する可能性があります。さらに、2月末のイラン空爆に続く地政学リスクの高まりは、2026年1-3月期のさらなる不確実性の要因となっています。さはさりながら、欧州バンクローン市場は相対的に堅調な推移を続けています。足元の投資環境は、より慎重なスタンスとなっているものの、CLOへの旺盛な需要が、引き続き欧州バンクローン市場の堅固なサポート材料となると思われます。
G2026-03-010
そのほかの投資関連情報はこちらをご覧ください。https://www.invesco.com/jp/ja/institutional/insights.html