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欧州バンクローン市場、月次アップデート 2026年5月

2026年4月の欧州バンクローン市場 月次アップデート
2026年4月の欧州バンクローン市場は堅調さを取り戻し、回復が進んだ

S&P UBS Western European Leveraged Loan Index (以下「S&P UBS WELLI」または「指数」)の2026年4月のトータル・リターンは+1.72%となり、内訳は価格変動が+1.19%1、金利収入が+0.53%となりました。なお、年初来のトータル・リターンは+0.87%となっています。

これまで軟調さが続いていたクレジット市場は4月に入り、安定した推移となりました。マクロ経済や地政学リスクの高まりに対する不確実性は続いたものの、月を通してみるとリスク選好度は緩やかに改善しました。欧州バンクローン市場では、マクロ経済の混乱よりも、良好な需給環境や発行体のファンダメンタルズに再び注目が集まるようになりました。こうした中、他のリスク資産と比べ、欧州バンクローンは堅調に推移しました。

4月の欧州バンクローン市場はセカンダリーでの価格が改善するとともに、新規発行価格も一定のレンジに収れんする兆しが見られました。依然として、プライシングは不安定なものの、一部の個別銘柄に対するタイトな需給などに下支えされ、資金流入が続きました。

当月のセカンダリー市場では小幅ながらプラス圏で推移しました。マクロの不透明感が後退したこと等から、バンクローンに対する需要が回復し、4月末のS&P UBS WELLI 構成銘柄の平均価格は、前月末の94.48ユーロから95.77ユーロに上昇しました。同指数の3年ディスカウント・マージンはEURIBOR+5.37%からEURIBOR+4.85%へと縮小しました1。ただ、個別銘柄間の価格には、依然としてばらつきがあり、クオリティが高くディフェンシブなバンクローンは額面に近い価格水準で取引される一方、財務基盤が脆弱な発行体や、景気敏感セクターの発行体のバンクローンは、引き続き額面に対してディスカウントで取引されています。

ソフトウェアおよび情報技術サービス・セクターは引き続き慎重な見方が続いています。AI関連ビジネスに対する不透明感は高止まりしており、関連セクターでは低格付け銘柄に対する需要が減速しています。なお、セカンダリーおよび新規発行市場共に、市場で確固たる評価が得られており、かつ堅実なキャッシュフローと保守的な資本構成を持つ発行体に対する需要は引き続き強さが見られます。

4月の新規発行額は依然として停滞しており、概ね3月と同水準となり、年初に見られた例外的に強い発行水準を下回りました。発行の中心はリファイナンス案件であり、新規LBO案件の発行は引き続き低調でした。2026年1-3月期は、バンクローン市場でボラティリティが高まりましたが、その後は新規発行のスプレッドは安定しており、「B」格のバンクローンは平均でEURIBOR+300bp半ば前後で取引されています2。足元、注目すべき点として、借り手がエグゼキューションリスクを再評価した結果、リプライシング(条件変更)案件は見られなくなり、年初の環境からの明確な変化が生じています。

4月もCLO発行が続き、バンクローン市場の需給を下支えしました。新規組成のペースは1月および2月と比較して鈍化したものの、バンクローン市場の需要を支えるには十分な水準を維持しました。セカンダリー市場におけるCLO需要も安定的に推移し、ローン市場の安定化を背景に負債スプレッドは改善しました。一方で、金利動向を巡る不透明感が残る中、スプレッドの一段のタイトニングは限定的となりました。

今後については、ローン供給の抑制とCLO需要の継続により、需給環境は概ね良好さが維持されると見ており、価格形成の下支え要因として機能すると見られます。ただし、銘柄間のばらつきは引き続き高い水準で推移する可能性があり、今後はより一層、銘柄選択がパフォーマンスを左右する展開が想定されます。

図1 :バンクローン及びCLOの需給推移
リターン:2026年4月
  • 4月のS&P UBS WELLIのセクター別リターンでは、化学が+5.12%と最も高いパフォ-マンスとなり、続いて不動産の+2.38%、金属/鉱業の+1.74%となりました1。また、プラススリターンとなったセクターで最も低いパフォ-マンスとなったのは公益の+0.52%、続いて輸送の+1.16%、製造の+1.20%となりました1 。今月は全てのセクターがプラススリターンとなりました。
  • 4月のS&P UBS WELLIの格付別リターンでは、「CCC」格が+3.31%と最も高く、 「B」格が+1.71% 、「BB」 格が最も低い+1.23%となりました1
  • 4月末におけるS&P UBS WELLI 構成銘柄の平均価格は、前月末の94.48ユーロから95.77ユーロに上昇しました1。同指数の3年ディスカウント・マージンは4.85%となり、前月末の5.37%から縮小しました1
ファンダメンタルズ

4月の金融市場は、3月に始まった調整局面が継続する形となり、市場は続く地政学的ショックに適応しつつ、断続的に緊張緩和の可能性も織り込む展開となりました。特にイラン情勢の動向が主要なマクロドライバーとして市場を左右しており、停戦期待と再度の緊張激化リスクが交錯する中、エネルギー市場のボラティリティ上昇や投資家センチメントの変化を引き起こしました。リスク資産は3月の下落から一部持ち直したものの、欧州ではエネルギー価格の上昇がインフレ期待や成長指標に波及し始めており、マクロ環境は一段と厳しさを増しています。

今月、ブレント原油の値動きは大きく、月初に一時1バレル120ドルを上回ったものの、イラン紛争の一時休止の見込みを受け、急落しました。月後半に紛争終結の期待感が低下すると、エネルギー価格は再び上昇し、ブレント原油は1バレル114ドル前後で月末を迎えました。重要な点として、期先の原油先物価格も高水準を維持しており、市場はもはや、イラン紛争が短期的に終結しない可能性を織り込んでいます。原油価格のボラティリティは3月に比べ低下したものの、2026年1-3月期前半に比べ、エネルギー価格は大幅な高水準を維持しており、依然としてマクロ経済の見通しに対する重石となっています。

前月と比べると、 4月の株式市場はより安定的に推移しました。地政学リスクの高まりが落ち着いた局面で、投資家の極端なリスク回避姿勢が後退したことを受け、米国株式市場に牽引された世界の株式市場は広範に反発しました。欧州株式市場も回復し、ストックス欧州600指数の月間上昇率は堅調に推移しましたが、セクターごとのパフォーマンスにはばらつきが見られました3。世界的にはテクノロジー関連セクターが株価の回復を牽引したものの、リスク資産間の相関が高まる中、欧州株式市場では、世界的なリスク要因からマイナスの影響を受けやすい状況が続きました。また、同市場も反発したものの、そのパフォーマンスが向上した理由は、ファンダメンタルズの改善ではなく、ポジション調整や投資家センチメントの良化によるものと思われます。

債券市場は、引き続き弱含みました。エネルギー価格の高騰により、先進国市場全体でインフレやスタグフレーションに対する懸念が高まる中、今後の金融政策の変更が織り込まれてきました。欧州や他地域では、各国の国債利回りが数年ぶりの高水準に達し、ドイツ国債の利回りは2010年代初頭以来の高水準で推移しています。前月と比べると、クレジット市場は安定的に推移したものの、政策金利の方向性や金融政策の不確実性に対し、債券価格のボラティリティは高まりました。

欧州のマクロ経済指標は、エネルギー価格の上昇と経済の先行きに対する不確実性の高まりを反映し始めています。4月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)は、3月の50.7から48.6へ下落し、ユーロ圏経済が昨年来の縮小圏となっていることを示しています。サービス業PMIは47.4まで低下した一方、在庫増やサプライチェーンの混乱を背景に、比較的堅調さを維持した製造業PMIは52.2に上昇しました。一方、インフレ圧力はさらに高まり、ユーロ圏総合消費者物価指数(CPI)の伸びは前年同月比+3.0%となり、短期的なインフレ圧力が懸念されています。また、企業景況感は鈍化し、景気先行指標は景気の下振れリスクの高まりを示唆しています。

かかる環境下、欧州中央銀行(ECB)の金融政策に対する市場予想は、さらに利上げ方向にシフトしました。同行は短期的な政策変更の可能性を示唆していないものの、短期金融資産市場では利下げがほぼなくなり、2026年後半の利上げが予想されています。背景には、エネルギー価格の高騰が、より持続的かつ広範なインフレ高進につながるのではないか、という懸念があります。結果的に、金融市場は金融引き締めに準ずる金融政策が、より長期にわたり維持される可能性が高まっていることを示しています。また、副次的にインフレ圧力が過度に高まった場合、同行の金融政策は明確な金融引き締めに向かうと見られています。

当月の主な動きは以下となります。

  • エネルギー価格のボラティリティの高まり。ブレント原油は4月を通して大きな値動きとなりました。4月末には高値圏で越月し、原油先物価格は、イラン紛争の長期化を示唆しています。
  • 株式市場は反発するも、ファンダメンタルズは変わらず。欧州株を含むリスク資産は、3月の安値から回復したものの、株価の成長条件が変わったのではなく、主たる理由は、市場心理の改善やポジション調整によるものでした。
  • 政策金利と金融政策の見直し。インフレ圧力の高まりを受け、各国国債利回りはさらに上昇しました。金融市場はECBによる利上げを織り込みました。
  • ユーロ圏の経済成長ペースが鈍化。ユーロ圏総合PMIが48.6と縮小圏に落ち込みました。これはサービス業PMI(47.4)の急激な減速が主因です。製造業PMI(52.2)が上昇したのは、需要回復というよりも、供給網の混乱を反映したものと見られます。

4月末現在、モーニングスター欧州レバレッジドローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は1.42%でした4。過去平均は年率2.63%となりました4

投資機会

年初の金融市場は乱高下しましたが、4月は市場環境が安定し、投資家心理が徐々に改善したことで、バンクローンの新規発行は引き続き改善傾向となりました。ソフトウェアなどの一部のセクターでは、成長見通しの変化に伴うバリュエーションの調整により、依然として下値圧力を受けていますが、高格付け銘柄に対する需要は高まっています。2月下旬以降、地政学リスクが高まっているにもかかわらず、CLOが安定的に取引されていることから、欧州バンクローン市場は堅調に推移し、今後とも選別的な投資機会が整っていると見られます。

図2:安定資産のパフォーマンス推移
各資産の相対利回り
  • 1.

    S&P UBS Western European Leveraged Loan Index (S&P UBS WELLI)、ユーロ建てヘッジ付き、2026年4月30日現在。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。指数に直接投資することはできません。

  • 2.

    Pitchbook Data Inc. より、2026年4月30日現在。

  • 3.

    ストックス欧州600指数より、2026年4月30日現在。同指数は、欧州株式市場全体を表す株価指数です。

  • 4.

    Morningstar European Leveraged Loan Index。過去の平均デフォルト率は、2007年6月1日から2026年4月30日までを対象に集計しています(除く、ディストレス債)。

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