マーケット・アップデート

米国バンクローン市場、月次アップデート 2023年7月

US Loan Market Snapshot
6月のバンクロ-ン市場は深刻な景気後退への懸念が薄れて上昇
バンクローンの相対価値に魅力
 
6月のバンクロ-ン市場は概ね堅調に推移

 6月のバンクローン市場は+2.26%のリターンとなりました。今後の景気の見通しの改善で中央銀行のタカ派的なトーンは材料視されず、リスク資産が選好されました。ローン価格は月間で+1.49%上昇し、2月に付けた年初来高値に迫る水準に達しました。ローン価格の上昇は広い範囲で見られましたが、B格のリターンがCCC格を上回ったことは選別的なリスクオンの状況であることを示しています。一方、6月のバンクローンの金利リターンは+0.77%となりました。米連邦準備制度理事会(FRB)のタカ派的なガイダンスを背景に金利の上昇が織り込まれ、足元の高水準のキャリー環境が今後も続く可能性が示唆されました。2023年年央での年初来トータルリターンは+6.48%となり、2009年以降で最も高い年間トータルリターンに届くペースとなっています1

 6月のバンクローンのリターンは、ハイ・イールド債(+1.63%)、投資適格債(+0.28%)を上回りました2。年初来でも、ハイ・イールド債の+5.42%、投資適格債の+3.23%を上回りました。格付別のリターンは、BB格(+1.95%)、B格(+2.52%)、CCC格(+2.08%)となりました。ローン市場の平均価格は140ベーシスポイント(bps)上昇し、94.97となりました3。現在の平均価格を踏まえると、ローンはフォワードカーブを含めて10.19%のイールドとなります3

 

ファンダメンタルズ

経済指標は、広く予想されていた成長鈍化がいまだ見られず、驚くほど底堅い内容となりました。雇用、個人消費、住宅需要、資本財需要は、連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めにもかかわらず、引き続き持ちこたえました。インフレ率は低下しましたが、水準は依然としてインフレ目標を大幅に上回っています。

Diebold Nixdorf、Cyxtera Technologies、GenesisCare、Lucky Bucksのデフォルトを受け、6月の12ヵ月累計の額面デフォルト率は1.58%から1.71%に上昇しました4。また、80ドル未満で取引されるローンの割合は6.74%から6.00%に低下しました4

 

市場の需給環境

ローンおよびCLOの新規発行は低調となり、リテールからの資金流出が継続しました。

6月のCLOの新規発行は、ローン価格の上昇で裁定取引が困難になり、堅調だった前月から鈍化しました。CLOの新規発行量は11案件で47億ドルとなり、年初来では129案件で560億ドルとなりました3

個人投資家向けローン・ミューチュアル・ファンドとETFからは、14ヶ月連続で資金流出となりました。6月には小幅ながら1億ドルの資金がこの資産クラスから流出し、年初来での流出額は185億ドルになりました3

6月のローンの新規発行は229億ドルとなり、前月とほぼ同水準となりました。借換案件は183億ドルで新規発行の大半を占め、借換/条件改定案件を除いた新規発行額は46億ドルでした。年初来累計の新規発行額は1,368億ドル、借換/条件改定案件を除くと305億ドルとなりました3

 

投資機会

 6月14日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)ではタカ派的なガイダンスが出され、市場では政策金利は「より高い水準で、より長く続く」と捉えられました。具体的には、FRBはピーク金利を5.50~5.75%(大方の予想に反し、2023年に2回の追加利上げの意味合い)、2024年末の金利を4.50~4.75%と示唆しました。このようなシナリオの下では、SOFRの上昇が続いてローン投資家は当面の間、歴史的にも高い水準のクーポン収入を得続けることができます。ちなみに、6月のローンの金利リターンは+0.77%で、年率換算では+9.24%(ハイ・イールド債は年率+6.48%5)でした1。ローンにおける非常に高い水準のインカムは2023年の年初来トータル・リターンの原動力となり、その約3/4を占めていますが、2024年にも近いリターンを生む追い風となる可能性が高まっています。

図表1:中央銀行は追加的な利上げの後、利下げ転換ではなく、しばらくは高い水準を維持することを示唆
図表2:短いデュレーションと高いインカム収入を提供するバンクローン
相対利回り
 
  1. Morningstar/LSTAレバレッジド・ローン指数。2023年6月30日現在。
  2. Morningstar/LSTAレバレッジド・ローン指数ならびにブルームバーグ。2023年6月30日現在。投資適格社債はBAML投資適格社債指数、ハイ・イールド債券はBAML米国ハイ・イールド債券指数。
  3. JPモルガン。2023年6月30日現在。
  4. Pitchbook LCD。2023年6月30日現在。
  5. ブルームバーグ。2023年6月30日現在。ハイ・イールド債券はBAML米国ハイ・イールド債券指数。

 

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