強気相場は終わるのか、それとも変化しているのか
〔要旨〕
- 懸念材料があるにもかかわらず強気相場は続いており、市場のより幅広い銘柄の上昇が最近のテクノロジー株の軟調さを相殺する一助となった
- 人工知能(AI)需要は力強さを保ったが、巨額の投資によってハードルは上がっており、多くの投資家はそうした投資から得られるリターンをますます求めるようになっている
- 市場の牽引役の交代は、必ずしも強気相場の終わりを意味しない。他のセクターへのローテーションは、相場になお上昇余地がある兆候かもしれない
力強いAI需要と巨額の投資コスト
ボラティリティは強気相場の終わりを意味しない
注目の日程
多くの投資家は、今回の強気相場の大半の期間を、その流れに逆らうことに費やしてきたように見えます。私がこれまでに耳にしてきた声には、次のようなものがあります:人工知能(AI)はバブルだ。金利が高すぎる。インフレが根強すぎる。米連邦準備制度理事会(FRB)は後手に回っており、最終的には再び金融引き締めを余儀なくされるかもしれない。中間選挙が混乱をもたらすだろう。
確かに懸念材料には事欠きませんでした。それでも強気相場は、前進を続ける道を見出してきました。
それこそが、現在水面下で起きていることから得られるより重要な教訓かもしれません。市場の牽引役は移り変わってきましたが、これまでのところ、私にはその変化は悪化というよりローテーションのように思われます。
上昇の裾野の広さを考えてみましょう。S&P500種指数の11セクターのうち9セクターが年初来でプラスとなっています1。さらに示唆的なのは、テクノロジー株の勢いがいくらか鈍ったにもかかわらず、10月も11セクターのうち9セクターがプラスとなっていることです2。米国以外の株式も年初来で12%超上昇しています3。水面下ではかなりの乱高下があったにもかかわらず、市場は史上最高値付近に留まっています4。
先週の動きは、その格好の例でした。
力強いAI需要とそのコスト
先週発表されたテクノロジー企業の決算からは、やや逆説的なメッセージが読み取れました。AI需要は極めて力強い状態が続きましたが、その需要を満たすために必要な投資もまた巨額となりました。マイクロソフトはAzureの売上高が48%増加し、過去2年間で最も高い伸びとなったと報告しました5。アマゾンのAWS事業は約39%成長しました6。メタは、AI投資がエンゲージメント、広告効果、売上高の向上につながっていることを引き続き示しました7。
需要が問題ではないかもしれません。問題はコストの側にありました。
大手テクノロジー企業は、AIインフラに莫大な資本を投じ続けています。アマゾン、アルファベット、メタ、マイクロソフト、スペースXを合わせると、今年の設備投資総額は約8,030億~8,280億ドルに達すると予測されていますが、その全てがAIに直接関連しているわけではありません7。その結果、一部の企業ではフリーキャッシュフローが圧迫され、これらの投資がどれほど早く十分なリターンを生むかについて、投資家による精査が強まっています。
私には、これは健全な進化であるように思われます。
AIブームの大半の期間で投資家は、AI投資の拡大を発表した企業を概ね評価してきたように見えます。今日、投資家は投じた資金に対して何が得られるかにますます関心を高めているようです。これはAIの機会が消滅したということではなく、ハードルが高くなりつつある可能性が高いことを意味します。
重要なのは、テクノロジー株が軟調だからといって、他のあらゆるセクターも軟調というわけではないとみられることです。
テクノロジー株の勢いはやや衰えたものの、金利は低下し8、市場の牽引役は他のセクターに移行しています9。これこそが、持続的な強気相場の本来あるべき姿です。持続的な強気相場は、単一のセクターや単一のテーマ、あるいは一握りの企業にいつまでも依存するものではありません。
ボラティリティは強気相場の終わりを意味しない
今後も間違いなく、ボラティリティが高まる局面が訪れるでしょう。AI投資をめぐる疑問はもっともであり、エネルギー価格、インフレ、金融政策をめぐる懸念についても同様です。市場が「不安の壁」を登る傾向にあるのは、その懸念が現実のものだからです。
しかし投資家は、あらゆる一時的な下落を強気相場の終わりと混同すべきではありません。
市場は時として、より建設的な動きを見せている場合があります。例えば過熱感を解消し、期待を織り込み直し、ある銘柄群から別の銘柄群へとバトンを渡している可能性もあります。
強気相場が終わらなくても、市場の牽引役は変わり得ます。かつての牽引役が軟調となる一方で、市場の他のセクターが上昇するような状況を維持する市場の力は、強気相場になお上昇余地があり得る兆候の1つかもしれないと私には思われます。
注目の日程
公表日 | 国・地域 | 指標等 | 内容 |
|---|---|---|---|
11月2日 | 米国 | 米供給管理協会(ISM)製造業景況指数(10月) 建設支出(9月) | 工場の活動、新規受注、投入価格が、製造業とインフレ圧力を早期に把握する手掛かりとなる |
11月2日 | 中国 | RatingDog製造業購買担当者景気指数(PMI)(10月) | 世界第2位の経済大国における製造業の景況感が、世界需要の方向性を示唆し得る |
11月3日 | 米国 | 中間選挙 雇用動態調査(JOLTS)(9月) 製造業受注(9月) | 選挙結果が政策見通しを左右し得る一方で、求人件数が労働需要を把握する手掛かりとなる |
11月4日 | 米国 | ADP雇用統計(10月) ISMサービス業景況指数(10月) 貿易収支(9月) | 民間部門の雇用とサービス業の活動が、金曜日の雇用統計と、経済の最大部門の健全性を先取りする手掛かりとなる |
11月4日 | ユーロ圏 | 消費者物価指数(CPI)(速報値、10月) | インフレの速報データが、欧州中央銀行(ECB)の政策見通しに影響を与え得る |
11月5日 | 米国 | 労働生産性・単位労働コスト(速報値、第3四半期) 新規失業保険申請件数 | 労働者の生産性と人件費が、賃金の伸びがインフレ圧力を高めているかどうかを示唆し得る |
11月5日 | 英国 | イングランド銀行政策金利決定、金融政策報告 | 政策決定と最新の予測が、英国の金利、成長、インフレの見通しを示唆し得る |
11月6日 | 米国 | 雇用統計(10月) ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値、11月) | 雇用者数、失業率、賃金が労働市場を把握する重要な手掛かりとなる一方で、消費者信頼感指数が消費者心理を測る |
11月6日 | カナダ | 雇用統計(10月) | 雇用の伸びと賃金の上昇が、カナダの金利見通しの判断材料となり得る |
MC2026-128