米国債利回りが上昇する中で、株式は底堅さを維持できるか?
〔要旨〕
- インフレや財政への懸念以上に、底堅い経済成長が米国債利回りの上昇を支えているとみられる
- 借入コストの上昇は、低格付けのクレジットを圧迫し、株式市場の牽引役となる銘柄の裾野を狭めているとみられる
- 企業収益と名目成長率が力強さを維持すれば、5%近い米国債利回りは健全な株式市場と共存し得る
金利上昇が市場の銘柄物色の広がりに与える影響
S&P500種指数は史上最高値付近にある
注目の日程
私はこれまで何年にもわたり、初秋のコメンタリーの書き出しに、グリーン・デイの歌詞「9月が終わったら起こして」を引用してきました。そろそろ新しいネタが必要かもしれません。あるいはそれより、9月がもう少し平穏な月になってくれればよいのかもしれません。
通常、この月を冬眠してやり過ごせたらと願うのは株式の投資家達でした。しかし今回は、債券の投資家達がそれを願っています。(開幕第2戦の第1クォーターで、チームのスター・クォーターバックが負傷退場するのを目の当たりにした私のようなニューヨーク・ジャイアンツのファンもまた同様です。)
金利上昇の理由については、説明が尽きません。財政支出だ、インフレだ、原油価格との相関だ、ハイパースケーラーによる大量の社債発行がもたらす他の借り手の締め出し(クラウディングアウト)だ、経済活動の活発化だ、あるいはこれらの組み合わせだといった具合です。
私は、インフレや財政支出よりも、どちらかといえば経済活動の強さが金利上昇の主因だと考えています。債券市場において、より不穏な事態が起きていることを示す兆候はほとんど見られないというのが私の見立てです1。金利が上昇したのは、名目成長がそれを支えられるほど十分な底堅さを保ってきたからだと考えられます2。
だからといって、金利上昇が取るに足らないものだというわけではありません。
クレジット市場のCaa格セグメントを見てみましょう。このセグメントでは、スプレッドが拡大しています3。私はこれを、景気サイクルにとってのいわゆる「炭鉱のカナリア」と呼ぶつもりはありません。それでも、これを無視すれば痛い目に遭いかねません。これらの企業はレバレッジが高い傾向にあり、多くの場合、より高金利での借り換えを迫られる可能性が高い「満期の壁」に直面しています4。また人工知能(AI)による破壊的変化に対して、特に脆弱となり得る事業を営む企業もあります。私の見るところこうした課題は、より格付けの高いクレジットでは、それらの課題はそれほど顕著ではないように思われます。これは市場サイクルの終わりが近いことを示しているというより、借入コストの上昇が経済全体に波及していくにつれて、リスクが顕在化し得ることを改めて思い起こさせるものと言えるでしょう。
金利上昇が市場の銘柄物色の広がりに与える影響
金利の上昇は、市場の銘柄物色の広がりの大幅な悪化の一因となったとみられます5。これは驚くには当たりません。公益事業セクターおよび生活必需品セクターは、債券利回りの上昇により激しい競争に直面することになるでしょう。不動産セクターは、言うまでもなく金利に敏感です。一方、パフォーマンスは再びテクノロジーセクターへと回帰しています6。テクノロジー関連の各分野で課題が相次いだ後、多くの投資家は、やや厳しくなりつつあるマクロ環境下でも構造的成長を生み出せる企業に再び引き寄せられつつあるようです。
ブロードニング・トレード(投資対象の裾野拡大)が再び活性化するには、金利と原油価格が単にピークを付けるだけでは不十分で、下落に転じる必要があるかもしれません。借入コストとエネルギー価格の上昇が最終的に経済活動を減速させるのであれば、それはもっともなことに思われます。
S&P500種指数は史上最高値付近にある
とはいえこれらはいずれも、5%の利回りが本質的に健全な株式市場と相容れないということを意味するものではありません。9月は、投資適格社債とハイイールド社債(CCC格債は除く)のスプレッドはわずかに拡大したに過ぎず7、S&P500種指数は史上最高値圏内に留まりました8。また、株式市場が熱狂状態に陥っていると確信している人は、今年株価が上昇しているにもかかわらず、市場の予想株価収益率(PER)が低下していることに目を向けるべきでしょう9。私は、企業収益が成長を続ける一方で、金利の上昇が企業価値の倍率(マルチプル)を抑制する役割を果たした可能性が高いと考えています。
幸い、米国債利回りが5%に達したからといって、株式のバリュエーションが持続的に低下すると想定する歴史的根拠はほとんど見当たりません。むしろ歴史は、利回りの上昇がより力強い名目成長と企業収益の増加を反映したものであれば、高い利回りは健全な企業価値の倍率と共存し得ることを示唆しています10。
利回りが急上昇した9月から目覚めてみると、株式・債券市場は底堅さを保っています。目覚めた時に直面する状況として、これよりひどいケースは確かにあり得たでしょう。
注目の日程
公表日 |
国・地域 |
指標等 |
内容 |
|---|---|---|---|
10月5日 |
米国 |
ISMサービス業購買担当者景気指数(PMI)(9月) |
米国経済の最大部分を占めるサービス業における活動、需要、雇用、価格圧力 |
10月6日 |
米国 |
財・サービス貿易収支(8月) |
経済成長率の推計に影響を及ぼし得る輸出入の動向 |
10月6日 |
ユーロ圏 |
小売売上高(8月) |
ユーロ圏全体の家計需要と個人消費の強さ |
10月7日 |
米国 |
FOMC議事要旨 |
インフレ、雇用、金利の道筋に関する政策当局の見解の詳細 |
10月7日 |
日本 |
景気動向指数(先行指数)速報値(8月) |
経済の勢いと景気循環の見通しを示す先行指標 |
10月8日 |
米国 |
新規失業保険申請件数 卸売売上高・在庫(8月) |
労働市況と、将来の生産に影響し得る在庫動向を適時に把握する指標 |
10月9日 |
米国 |
ミシガン大学消費者信頼感指数速報値(10月) |
消費とFRBの政策見通しに影響し得る家計の信頼感とインフレ期待 |
10月9日 |
カナダ |
雇用統計(9月) |
カナダ銀行の政策見通しを左右する雇用の伸びと失業率の動向 |
MC2026-113