債券、AI、そして続く強気相場
〔要旨〕
- 米国債は資金の安全な逃避先としての地位を失っていないとみられる。中東をめぐる懸念が強まる中で利回りが反転し、債券市場が米国への信認を失ったとの見方に疑問を投げかける
- クレジット市場の規律は、市場の健全性の兆候かもしれない。投資家はより厳しい問いを投げかけ、信用力の高い借り手と低い借り手を選別している
- AIへの投資とリターンをめぐって疑問が呈されているが、AIの利用、売上高、企業導入は拡大しており、最も著名な企業の一部には引き続き力強いAI需要がみられる
クレジット市場はより選別的になった
AI業界の明るいニュース
市場の逆風
注目の日程
政治コンサルタントのジェームズ・カービルには、「もし生まれ変わるとしたら債券市場になりたい。なぜなら『誰をも怖がらせることができる』からだ」という有名な言葉があります。
わずか数週間前に、債券市場が米国を怖がらせることに決めたようだ、との見方が浮上しました。米国債利回りが上昇しており1、スタンレー・ドラッケンミラーやレイ・ダリオといった著名投資家達が、米国債務の持続可能性や支払期限の到来への懸念を表明しました。私には、この見方には明らかに問題があるように思われます。インフレ期待は比較的抑制された状態を保っており2、米ドルは堅調です3。これらは通常、米国資産への信認が失われつつある市場に見られる特徴ではありません。
案の定、米国債利回りは下落に転じました。先週は、中東をめぐる懸念が強まる中で米国債価格はさらに上昇しました4。こうした反応は、米国債が従来のセーフヘイブン(安全資産)としての魅力を突如として失ったとの見方に疑問を投げかけるものでした。
クレジット市場はより選別的になった
債券市場はいささか「いじめ」をしているようでした。その対象は、米国債市場に留まりませんでした。
先週、私はコアウィーブその他のネオクラウド企業など、人工知能(AI)エコシステムの一部が直面している圧力について論じました。借入コストは上昇し、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のスプレッドが拡大しました5。こうした動きは、AIブームが崩れ始めているのではないかとの懸念を呼び起こしました。
私は違った見方をしています。
クレジット市場が、より選別的になったのです。レバレッジが高く、キャッシュフローの不確実性が高い企業、あるいは莫大な資本を必要とするビジネスモデルを持つ企業は、より厳しく精査されるようになったとみられます。私は、市場は健全な市場が本来なすべきことを行ったにすぎないと考えています。強気相場では、すべての企業が成功する必要はありません。実際、健全な強気相場では、より脆弱で投機性が高い企業、あるいはファンダメンタルズが不健全な企業があぶり出され、最終的には淘汰されることがままあります。これは特にコアウィーブについて述べているわけではありません。正常に機能する資本市場がどのように資本配分を行う傾向にあるかに関する所見にすぎません。規律は市場のバグ(不具合)ではなく、むしろ本来備わった特徴なのです。
そこへ先週、AI関連のニュースが飛び込んできました。
AI業界の明るいニュース
投じられた巨額の資本が最終的にどれだけのリターンを生むかは依然不透明であるものの、業界最大手の数社から発せられたメッセージは明るいものでした。投資主体となっている企業が旺盛な需要を報告し続けているにもかかわらず、市場はAI投資拡大の発表に対してより敏感になっているようです。
アンソロピックは急速な商業的導入が進んでいることを引き続き示し、最新のClaudeモデルの改良により、性能の向上と推論コストの低下が示唆されています6。オープンAIは、法人向け事業の急速な伸びが続いていることを報告しました7。メタは、AIが広告、レコメンデーション・エンジン、そして数百万の広告主が利用するツールにますます組み込まれるにつれ、AI投資が測定可能な効果を生み始めていることを示す、最も明確な証拠をいくつか提示しました8。
これらのいずれも、今日の異常な水準のAI投資が最終的に十分なリターンを生むことを保証するものではありません。しかしこの投資ブームが、根底にある需要の拡大を示す証拠なしに起こっているとの見方には、異議を唱えるものとなっています。この点は重要です。
AIの弱気シナリオは、データセンター、半導体、電力、演算能力に投じられている巨額の資本にますます焦点を当てつつあるようです。これらはもっともな疑問です。しかし一部企業の最近の業績は、収支のもう一方の側面を無視することがますます難しくなっていることを示しています。利用は拡大しており9、売上高は伸びています10。企業での導入が広がっており11、コストは低下しています12。そして一部企業には、AI投資からの具体的なリターンが出始めています。
市場の逆風
もちろん、すべてがバラ色というわけではありません。中東の紛争と原油価格の上昇は13もう一つの正当な逆風と言え、短期的に成長の重しとなり、ヘッドラインインフレを高止まりさせる可能性があります。しかし市場はえてして、「不安の壁」をよじ登ってきました。リスクが存在するからといって、必ずしも強気相場が終わりつつあるとは限りません。
ニュースの見出しから一歩引いて見てみましょう。米国債は依然、資金の安全な逃避先としての地位を失ってはいないようです14。クレジット市場は、信用力の高い借り手と低い借り手を選別するという健全な役割を果たしているようです。そして、AIをめぐる本質的なストーリーについての私の見方は揺らいでいません。私には、これは崩れることなく続いている強気相場のように思われます。
注目の日程
公表日 | 国・地域 | 指標等 | 内容 |
|---|---|---|---|
10月26日 | ドイツ | IFO景況感指数(10月) | 欧州最大の経済大国の企業景況感が、成長モメンタムを早期に把握する手掛かりとなる |
10月27日 | 米国 | 耐久財受注(9月) | 設備投資、消費者信頼感、住宅需要が経済をタイムリーに把握する手掛かりとなる |
10月28日 | 米国 | 米連邦公開市場委員会(FOMC)政策金利決定 | FRBの政策決定と記者会見が、金利の先行きに対する見通しを形成し得る |
10月28日 | カナダ | カナダ銀行(BOC)政策金利決定、金融政策報告 | 政策決定と最新の予測が、カナダの金利、成長、インフレの見通しを示唆し得る |
10月29日 | 米国 | 国内総生産(GDP)(速報値、第3四半期) | 経済成長と個人消費を幅広く把握する指標であり、FRBが選好するインフレ指標 |
10月29日 | ユーロ圏 | 欧州中央銀行(ECB)政策金利決定 | 政策決定とガイダンスが、ユーロ圏の金利見通しに影響し得る |
10月30日 | 米国 | 雇用コスト指数(第3四半期) | 賃金・福利厚生の動向が、インフレに対する人件費の圧力を示唆し得る |
10月30日 | 日本 | 日銀金融政策決定会合、経済・物価情勢の展望(展望レポート) | 政策決定、最新の予測、インフレの先行データが、日本の金利見通しの材料となり得る |
10月30日 | ユーロ圏 | GDP(速報値、第3四半期) | ユーロ圏全体の第3四半期成長に関する最初の指標 |
MC2026-125