グローバル・ビュー

「米国株・日本株最高値更新」の中身

Invesco Global View
要旨
米国株―4月初めからのAI関連株急伸が原動力に

イラン戦争の行方が不透明なままであるにもかかわらず、米国、日本市場を代表する株価指数であるS&P500種指数と日経平均株価指数は執筆時点(4月21日の取引終了時点、以下同様)でイラン戦争直前の水準を上回り、日米株価の回復が鮮明となっています。イラン戦争勃発後、4月初めまでは日米株価は原油価格の動きに比例した動きをしていましたが、4月初め以降は、株価が原油価格とは乖離した動きとなりました。これは、停戦合意と割安の領域に入った米国のAI関連株が急騰したことによってもたらされたと考えられます。

日本株―AI関連株と海外からの資金流入がけん引

日経平均株価も、4月8日の停戦合意後にS&P500種指数と同様の大幅な上昇を記録しました。もっとも、AI関連以外の銘柄群もイラン戦争直前の水準を回復した米国株とは異なり、日本株の上昇は半導体や半導体製造装置、半導体部材、電子部品などAI関連株にかたよる形での上昇でした。グローバル投資家がリスク許容度を高めたことで海外からの株式投資資金が流入したことなどもこうした動きを後押ししました。

日米株式市場の短期的注目点

日米株式市場の短期的な動きを考える上で最も重要な要素は、引き続き、米・イスラエルとイランとの戦争が、中東のエネルギー生産・輸送設備へのこれ以上のダメージが及ぶことなく、恒久的な停戦に至るかどうかです。このほか、来週の日米中銀の会合での情報発信や1-3月期の企業決算に注目したいと思います。

 

米国株―4月初めからのAI関連株急伸が原動力に

 イラン戦争の行方が不透明なままであるにもかかわらず、米国、日本市場を代表する株価指数であるS&P500種指数と日経平均株価指数は執筆時点(4月21日の取引終了時点、以下同様)でイラン戦争直前の水準を上回り、日米株価の回復が鮮明となっています。以下では、この背景とともに、今後の動きについて考察したいと思います。2月末におけるイラン戦争の勃発から4月初めまでは、グローバル市場における多くの資産の価格が原油価格に連動して動きました。日米欧株式市場では、中東情勢が悪化して原油価格が上昇すればするほど、株価はより大幅に下落した一方、停戦に向けての動きが表面化して原油価格が下落する局面では、株価もそれに連動して上昇する傾向が続きました。戦争開始後から4月初めまでにかけては、この連動率は各国の指数によって異なりますが、同じ指数でみるとほぼ一定していました(図表1)。

 原油価格が、中東情勢の悪化の度合いを示す鏡のような役割を果たし、株価はそれを反映して動いていたと言えるでしょう。例えば、図表1において、左軸で示された日経平均株価と、その5倍の目盛の右軸で示したブレント原油価格がほぼ同じ動きをしていたことがわかります。つまり、原油価格が10%上昇する場合に、日経平均株価が2%下落するという逆相関の関係がみられました。米国株については、この期間(イラン戦争勃発後、4月初めまで)において、図表2で示した通り、銘柄の規模の大小にかかわらず、原油価格が10%上昇する場合に、S&P500種指数をはじめとする主要株価指数が1.3%下落するという関係がみられました。原油価格の変化に対する日米株価の連動率の差は、原油価格の上昇に対して、エネルギーについて輸入依存度が大きい日本の株価が、自国でエネルギーを自給する能力のある米国に比べて悪影響を受けやすいことを表しています。図表1では、欧州における株価の原油価格連動率が日米のほぼ中間の水準にあったことが読み取れますが、これは欧州が中東地域から輸入するエネルギーの比率が日本より低いことを反映していると考えられます。

(図表1)イラン戦争直前からの相場の動き:日米欧の主要株価指数
(図表2)イラン戦争直前からの相場の動き:米国の主要株価指数

 ところが、4月初めになり、それまでの連動率を逸脱する動きが表面化しました。その直接的なきっかけになったのが、停戦合意です。日本時間で4月8日午前に米・イスラエルとイランとの間に停戦合意が成立したことで、原油価格はその直後に大きく下落しました。停戦の先行きについての不透明感が強いことから、その後の原油価格は横ばい圏で推移していますが、株式市場では上昇基調が継続しています。株式市場では、停戦合意が締結されたことで、「トランプ大統領はやはり原油価格の上昇に伴う米国のインフレ加速を望んでおらず、イラン問題で妥協するのでは」という見方が台頭したようです。これは、いわゆるTACOトレード(トランプ大統領の強硬姿勢が最終的に撤回されることを見越した売買)と言えるでしょう。米国がエネルギーの輸入に依存しておらず、中東情勢の悪化による景気への影響が限定的という見方があらためて意識されたことも株価の押上げに寄与したと思われます。

 その一方、原油価格の動きから想定される以上に株価が上昇した間接的なきっかけが、米国のAI関連株が割安の領域に入ってきたことでした。当レポートの4月9日号(「⽶イラン停戦合意と今後の⾦融市場」)でふれたように、4月初め時点でのマグニフィセント7指数のPER(12カ月先の1株あたり利益についてのアナリスト予想をベースにした計数、ブルームバーグ調べ)は過去数年間のレンジの下限である25倍強にまで低下しました(図表3)。元来、AI関連株はそもそも投資家が中長期的な期待収益を重視して取引されてきた面が強く、イラン戦争による短期的な景気への悪影響には左右されにくい性質があるものの、イラン戦争で相場全体がリスクオフの局面に入ったことで、イラン戦争後は非AI関連株と同様に下落しました。しかし、停戦合意によって投資家のリスクオフ的なスタンスが薄れてきたことで一部投資家が割高感のなくなったAI関連株の魅力を見直す動きが出ると、そうした動きに乗り遅れまいとする他の投資家にも強気スタンスが波及して株価が急騰し、4月初め以降のS&P500種指数の大幅な上昇につながりました

(図表3)米国:主要株価指数のPERの推移
日本株―AI関連株と海外からの資金流入がけん引

 日経平均株価も、4月8日の停戦合意後にS&P500種指数と同様の大幅な上昇を記録しました。もっとも、AI関連以外の銘柄群もイラン戦争直前の水準を回復した米国株とは異なり、日本株の上昇は半導体や半導体製造装置、半導体部材、電子部品などAI関連株にかたよる形での上昇でしたイラン戦争後、4月21日までの間に日経平均株価は0.8%上昇しましたが、個別銘柄で上昇したのは、全構成銘柄225銘柄中、50銘柄程度にすぎませんでした。11業種にセクター分けして各セクターの騰落率をみても、上昇したのは情報技術セクターだけであり、残りの10セクターの騰落率はマイナス圏でした(図表4)。より幅広い銘柄群をカバーする東証株価指数(TOPIX)の同期間の騰落率は、ー4.3%にとどまり、4月初め以降の動きは原油価格で想定される範囲にとどまりました(図表5)。

(図表4)日経平均株価のセクター別騰落率(イラン戦争直前⦅2月27日⦆から4月21日まで)
(図表5)イラン戦争直前からの相場の動き:日本の主要株価指数

 限られた銘柄に集中したとはいえ、日本株には海外からの多額の株式資金が流入しました。財務省統計によれば、4月第1週に海外からの日本の現物株市場に投資された資金(ネットベース)は3.9兆円を記録し、前週の3.0兆円に続く大きな規模となりました(図表6)。海外から多額の資金が入った背景には、世界の株式市場の約半分の時価総額を占める米国株市場において主要株価指数がイラン戦争直前の水準を回復し、その結果として、グローバル投資家がリスク許容度を高めたことがあったと考えられます。また、イラン戦争が継続する状況下で、既に株価がイラン戦争直前の水準に戻った米国株市場では、投資家が、割安感のあるAI関連銘柄以外は積極的に買いづらい面があることも、日本など米国以外の市場への分散投資を後押ししたとみられます

(図表6)日本:海外から日本株へのネット資金フロー
日米株式市場の短期的注目点

 日米株式市場の短期的な動きを考える上で最も重要な要素は、引き続き、米・イスラエルとイランとの戦争が、中東のエネルギー生産・輸送設備へのこれ以上のダメージが及ぶことなく、恒久的な停戦に至るかどうかです。トランプ大統領は、4月21日にイランとの停戦を延長するとSNSで表明しました。これによって、戦闘の再開ですぐに緊張がエスカレートする状況は回避されました。私は、11月に実施される中間選挙での共和党の上下両院での多数派維持を目指すトランプ大統領が、米国内のインフレ圧力の沈静化を目指すことで、イラン戦争が4~5月中に恒久的な停戦につながるという見方を現状でのメインシナリオとしています。事態がこのメインシナリオ通りに進むなら、米国株式市場では、恒久的な停戦が決まったタイミングで、イラン戦争前の水準をまだ回復していないセクター、具体的には、ヘルスケア、生活必需品、公益事業、資本財・サービスなどのセクターでの株価のリバウンドが見込まれます。この場合、日本の株式市場においても、AI関連以外のセクターにおける株価のリバウンドが見込まれます

 一方、物色が広がることで、一足早くイラン戦争直前の株価水準にリバウンドしたAI関連株への資金流入は限定的になるとみられます。ただし、ブルームバーグ・マグニフィセント7株価指数のPER(12カ月先の1株あたり利益についてのアナリスト予想をベースにした計数)は、4月21日時点で30.0倍とまだ比較的割安といえる水準であることから、AI関連株の株価が大きく下落する可能性は低いとみられます。AI関連株については、大手AI関連企業(マイクロソフトおよび、アマゾン、アルファベット、メタ・プラットフォームズ、アップル)が来週に公表予定の1-3月期決算の内容が重要な材料になると考えられます。日本におけるAI関連企業の株価は、米国でのAI関連株の動きに合わせた動きになると予想されます

 何らかの理由で停戦が継続せず、軍事行動が再開するリスクシナリオ実現ケースでは、原油価格の上昇に伴って日米の株価が再び下落すると思われます。その場合の日米株価下落の度合いは4月初めまでの原油価格との連動率が目安になるでしょう。ただし、原油・天然ガスや石油化学製品、化学肥料の分野で中東あるいは中東由来の原材料の二次加工地からの供給に問題が出る企業については、供給不足による短期的な業績への影響が織り込まれる形で株価がより大きく下落する可能性があります。他方、仮に、双方の軍事行動によって、中東でのエネルギー生産・輸送設備が中長期的にダメージを受ける場合には、世界的なスタグフレーションが視野に入ることから、株価は大幅な下落を余儀なくされると考えられます。

 日米株式市場における第2の注目点は、金融政策の行方です。来週に開催されるFRB(米連邦準備理事会)、ECB(欧州中央銀行)、日本銀行の金融政策決定会合では、いずれも政策金利の変更が見送られるとみられますが、各中銀からの情報発信が想定よりもタカ派的であれば、株価には一定の悪影響が及ぶでしょう。

 日米株式市場における第3の注目点は1-3月期の企業決算です。イラン戦争の影響は多くの地域で3月から顕在化し始めましたが、イラン戦争の業績への影響度合いと、イラン戦争の影響を考えない場合の企業業績の足元の動きが、共に株価にとっての重要な材料になりそうです。

当資料は情報提供を目的として、インベスコ・アセット・マネジメント株式会社(以下、「当社」)が当社グループの運用プロフェッショナルが日本語で作成したものあるいは、英文で作成した資料を抄訳し、要旨の追加などを含む編集を行ったものであり、法令に基づく開示書類でも金融商品取引契約の締結の勧誘資料でもありません。抄訳には正確を期していますが、必ずしも完全性を当社が保証するものではありません。また、抄訳において、原資料の趣旨を必ずしもすべて反映した内容になっていない場合があります。また、当資料は信頼できる情報に基づいて作成されたものですが、その情報の確実性あるいは完結性を表明するものではありません。当資料に記載されている内容は既に変更されている場合があり、また、予告なく変更される場合があります。当資料には将来の市場の見通し等に関する記述が含まれている場合がありますが、それらは資料作成時における作成者の見解であり、将来の動向や成果を保証するものではありません。また、当資料に示す見解は、インベスコの他の運用チームの見解と異なる場合があります。過去のパフォーマンスや動向は将来の収益や成果を保証するものではありません。当社の事前の承認なく、当資料の一部または全部を使用、複製、転用、配布等することを禁じます。

MC2026-052