日米の6月金融政策会合について
要旨
6月FOMC:タカ派化。ウォーシュ新議長が新風を吹き込む
6月16~17日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)では市場予想通り、政策金利であるFF金利の誘導目標が3.50~3.75%に据え置かれました。今回のFOMCについて私が注目したのは、①FOMC参加者の政策金利見通しがタカ派化したこと、②ウォーシュ氏がFOMCの改革に乗り出したこと、という2点です。後者については、今後数週間で外部有識者を含むメンバーで5つのタスクフォースが立ち上げられ、晩秋ごろからの政策提言の開始に続き、最終的な提言が年末までにまとめられる見通しです。すでにフォワードガイダンスが廃止されたことも合わせて考えると、今後のFOMCはいわゆる「ライブ会合」(結果が事前には定まっておらず、金融政策の変更が実施される可能性がある会合)の度合いが強まるとみています。今回はFOMC参加者が年内に0.5回の利上げを見通していますが、私は、イラン戦争終結によるインフレ押し下げ効果がより早期に見通せる環境になれば、年内に利下げが実施される可能性が依然として高いと考えています。
6月日銀会合:想定通りに利上げ。QT政策の不定期延長がサプライズ
日本銀行が6月15~16日に開催した金融政策決定会合では、事前予想通り、政策金利が0.75%から1.00%へ引き上げられました。私は、日銀が2026年末ごろに1.25%への追加利上げを実施し、その後、2027年前半にさらに1.50%に政策金利を引き上げるという、これまでの見方を維持したいと思います。日銀の量的引き締め(QT)政策については、今回はその具体的な終了時期が示されなかった点がサプライズとなりました。このことは、日銀がQTをより長期にわたり継続する意向であることを示唆しています。今回公表されたペースでQT政策を実施していくことの妥当性についての真剣な議論が望まれます。
6月FOMC:タカ派化。ウォーシュ新議長が新風を吹き込む
6月16~17日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)では市場予想通り、政策金利であるFF金利の誘導目標が3.50~3.75%に据え置かれました。今回の会合から前任議長のパウエル氏に代わってケビン・ウォーシュ氏がFRB(米連邦準備理事会)新議長として、FOMCのかじ取りを開始しました。今回のFOMCについて私が注目したのは、①FOMC参加者の政策金利見通しがタカ派化したこと、②ウォーシュ氏がFOMCの改革に乗り出したこと、という2点です。
①については、公表されたドット・プロット(FOMC参加者による政策金利見通し)にはウォーシュ議長は参加しませんでしたが、ウォーシュ議長以外の18名のFOMC参加者の年末の政策金利見通し(中央値ベース、以下同様)は3.8%と、年内に0.5回の利上げが実施される見通しとなりました。前回3月の見通しでは、年内に1回の利下げが見通されていたことから、FOMCの見通しはよりタカ派的になったと言えます。タカ派化の背景には、今回の見通しにおいて、イラン戦争の景気への悪影響は限定的であるものの、エネルギーや食品を除くインフレ率への押し上げ効果が従来よりも大きいという姿が示されたことがあります。具体的には、2026年10-12月期についての実質GDP成長率見通し(前年同期比ベース、以下同様)が前回の2.4%から今回は2.2%へとやや引き下げられるにとどまった一方、同期のコアPCE(民間消費支出)デフレーター上昇率は前回の2.7%から3.3%へとかなり大幅に引き上げられました。
FOMC参加者のタカ派化を受けて、6月17日における年内のFRBによる利上げ回数についての金利先物市場の織り込みは1.53回と、前日の0.84回から増加しました。また、米国市場における株価・債券価格はともに下落しました。米国の10年国債金利は4.49%と、前日の4.44%から上昇しました。株式市場でもS&P500種指数が前日比で1.2%下落しました。米国の利上げへの期待度が上昇したことで、為替市場では、ドルがユーロや円などの主要通貨に対して上昇しました。
②については、ウォーシュ議長がFOMC運営の改革に乗り出した点は今後の政策の方向性を考えるうえで非常に注目されます。その手始めにウォーシュ氏が今回変更したのが、FOMC声明文からフォワードガイダンス部分を削除することでした。前回の声明文では今後の金融政策の方向性が利下げであることを示唆する文言が使われていましたが、今回は、フォワードガイダンス自体を削除するという形で、将来の金融政策の方向性についてFOMCが示唆するやり方を改めました。これは、経済・金融情勢が非常に速く変化する状況下で、金融政策の先行きについての方向性を示すことは得策ではないとの考え方に基づくものです。記者会見において、ウォーシュ議長は、市場が最も効率的に機能するのは、入手されるデータに対して反応する際であって、市場がFRBの政策について反応する際ではない、との考え方を表明しました。
より注目されるのは、ウォーシュ氏が、次の5つの分野でタスクフォースを立ち上げ、FOMCの運営方法を見直していくと表明した点です。
① FRBのコミュニケーション政策(フォワードガイダンスや政策金利の見通し、記者会見を含む)
② FRBのバランスシート政策(潤沢な準備預金を重視する政策の利点とリスク、FRBのバランスシートの構成を含む)
➂ データ活用(より正確でタイムリーな⦅リアルタイムなど⦆データ収集、新たな情報源を含む)
④ 生産性と雇用(AIを含む新しい汎用技術の進展のスピードや普及範囲、経済への影響を含む)
⑤ インフレ(インフレの要因を基礎から見直すなどを含む)
今後数週間で外部有識者を含むメンバーでこれらのタスクフォースを立ち上げ、晩秋ごろから政策についての提言を開始し、最終的な提言が年末までにまとめられる見通しです。これらのタスクフォースのテーマは過去のジャクソンホール会合などで議論されてきた内容と重なる部分も多く、私は、タスクフォースによる議論は、今後の金融政策遂行上、有益な試みになる可能性が高いと考えています。提言内容を採用するかどうかはFOMC参加者が決定するとのことですが、私は、多くのFOMC参加者が有益とみる可能性のある、リアルタイムデータの収集などは提言が部分的に始まる晩秋にも採用される可能性があると思います。すでにフォワードガイダンスが廃止されたことも合わせて考えると、今後のFOMCはいわゆる「ライブ会合」(結果が事前には定まっておらず、金融政策の変更が実施される可能性がある会合)の度合いが強まるとみています。今回はFOMC参加者が年内に0.5回の利上げを見通していますが、私は、イラン戦争終結によるインフレ押し下げ効果がより早期に見通せる環境になれば、年内に利下げが実施される可能性が依然として高いと考えています。
6月日銀会合:想定通りに利上げ。QT政策の不定期延長がサプライズ
日本銀行が6月15~16日に開催した金融政策決定会合では、すでに大手メディアが広く報道していた通り、政策金利が0.75%から1.00%へ引き上げられました。記者会見では内田副総裁が、利上げを今後も継続する考え方を示しました。私は、日銀が2026年末ごろに1.25%への追加利上げを実施し、その後、2027年前半にさらに1.50%に政策金利を引き上げるという、これまでの見方を維持したいと思います。
一方、現在実施されている量的引き締め(QT)の枠組みに関しては、2028年4月以降の月間の国債買入れ額(グロス)が、2027年1~3月と同様に月額2兆円に維持されることが決定されました。この結果も事前の報道に沿うものでした。ただ、これまでQTの期間が1年ごとに延長される形で公表されてきたのに対し、今回は具体的な終了時期が示されなかった点がサプライズとなりました。このことは、日銀がQTをより長期にわたり継続する意向であることを示唆しています。
今後、日銀が現在と同様のペースで2年物国債の購入を継続するという仮定に基づいて試算すると、日銀の長期国債保有残高のネットベースでの減少額は、2026年に47.2兆円に達した後、2027年に42.1兆円、2028年に33.7兆円となる見込みです(図表1)。日本の10年国債利回りは、日銀の声明文発表直前の2.60%から、発表後にいったん2.665%へと上昇しましたが、この動きは日銀がQTを長期にわたって継続する意向を示したことを市場が織り込んだ結果であると考えています。当レポートの先週号(「日銀:6月は利上げへ。QT政策の見直しが必要?」)でふれたとおり、今回公表されたペースでQT政策を実施していくことの妥当性についての真剣な議論が望まれます。
MC2026-074