グローバル・ビュー

中国:直近統計は景気の再減速を示唆

Invesco Global View
要旨
4月の内需は大幅に減速

今週公表された4月分の内需関連の主要指標は金融市場の事前予想を下回る弱さとなり、中国景気の再減速が明確となりました。特に弱かったのが都市部固定資産投資であり、4月は前年同月比で8.0%減少しましたが、小売売上も同0.2%増と、3月からさらに減速しました。

住宅の供給過剰問題を短期的に解決することは難しそう

中国経済の内需関連指標の弱さは、当レポートで従前からふれてきた供給過剰問題を主因とするものです。供給過剰問題は、不動産関連分野から多くの分野に拡大しましたが、不動産分野の問題は未解決です。一定の前提を置いて計算すると、2025年末時点での中国の住宅在庫は5,004万戸でしたが、2025年における中国の住宅販売戸数は733万戸であったことをふまえると、中国の住宅開発業者は6.8年分もの在庫を抱えていたことになります。

イラン情勢の進展とともに追加的景気支援策を実施か

4月分の経済統計を受けて、追加的な財政政策の実施が不可⽋であるという見方を維持します。景気対策を実施するタイミングは、イラン戦争の終結によってホルムズ海峡経由のエネルギー輸入が正常化するタイミングになる可能性が高いと見込まれます。

 

4月の内需は大幅に減速

 中国経済の内需関連指標の多くは1-3月期に回復しましたが、今週公表された4月分の内需関連の主要指標は全て金融市場の事前予想を下回り、中国景気の再減速が明確となりました特に弱かったのが都市部固定資産投資であり、4月は8.0%減少しました(前年同月比ベース、以下同様。公式統計を用いてインベスコが計算した結果に基づく)。1~3月はわずかながらもプラスの伸びであったことから、4月は大幅に減少したことになります。4月は、製造業のほか、サービス業でも多くのセクターで投資が減少しました。インフラ投資についても、1~3月にみられた大幅なプラスの伸びから、4月は4.5%の減少に転じました(図表1)。固定資産投資統計とは別に公表される不動産投資統計中の不動産投資も4月はー20.1%と、3月のー11.7%からさらに減速しました。

(図表1)中国:都市部固定資産投資増加率の推移

 4月における投資の減速は、イラン戦争による先行きへの不透明感が増したことによる面が大きかったと考えられます。また、昨年9月から5000億元規模で実施され始めた新型金融政策ツール(政府系金融機関が借入れで調達した資金をインフラ等のプロジェクトに直接融資し、それを資本金として各プロジェクトが投資を実行するスキ-ム)の実施による効果が4月に剥落してしまった可能性が指摘できます。1~3月においては、このツールの実施による効果がかなりあったとみられます。3月に決定された2026年予算では、この新型金融政策ツールの予算を新規に8000億元計上したことから、今後、関連プロジェクトが実行される段階で固定資産投資の増加に寄与するとみられます。もっとも、これだけでは固定資産投資の減速を回避することはできないと見込まれます。

 一方、消費関連指標では、4月の小売売上が前年同月比で0.2%と、1-2月の2.8%、3月の1.7%からさらに減速しました。インフレ調整をした実質ベースでみると、4月の伸びは-1.4%と、昨年12月から4カ月ぶりにマイナス圏を記録しました(図表2)。

(図表2)中国:小売売上増加率の推移

 一定規模以上の小売売上データで小売セクター別の伸び率をみると、電子・映像機器、自動車、燃料、宝飾品などの主要分野において、4月の前年同月比伸び率がマイナスでした。①足元でのAI向けのデータセンターへの世界的な投資需要の高まりによってメモリーやその他の電子部品の価格が上昇したことや、②2024年から実施されている消費財借り換えプログラムで需要を先⾷いしたことの反動、による悪影響が顕在化したことが小売売上の減速につながった可能性があります。

 他方、輸出については、ドル建ての輸出が1-2月は前年同月比で25.7%増加した後、3月に同2.5%へと減速していましたが、4月には14.1%へと再加速しました。中国からの輸出の好調が景気全体をけん引してきましたが、それが4月も続きました。もっとも、鉱工業生産の前年同月比伸び率が1-2月の6.3%、3月の5.7%から、4月に4.1%へと減速した点は、このドル建て輸出額の高い伸びの一部が、半導体価格の上昇を受けた電子部品や電気製品の価格上昇を反映している可能性を示唆していると言えます。4月は輸出の好調が内需の減速を補うには力不足であったと判断されます。

住宅の供給過剰問題を短期的に解決することは難しそう

 中国経済の内需関連指標の弱さは、当レポートで従前からふれてきた供給過剰問題を主因とするものです。2021年から続く不動産問題が需要全体を抑制したことから、供給過剰問題は建設関連の鉄鋼・化学・セメント分野だけではなく、電気自動車や太陽光パネルなどの分野にも広がりました。不動産問題はまだ解決されておらず、不動産の着工や投資、販売の水準は低いままです

 一定の前提を置き、入手可能なデータを用いて居住用不動産分野の供給過剰の度合いを概算してみたところ、2025年末時点での中国の住宅在庫は5,004万戸でした。2025年における中国の住宅販売戸数は733万戸でしたから、中国の住宅開発業者は年間販売戸数の6.8倍もの在庫を抱えていることになります(図表3)。住宅販売戸数のピークは2021年の1,565万戸でしたが、住宅の引き渡し問題が残り、供給過剰による住宅価格の先安観が強い中で、販売がふるわない状況が続いています。

 住宅の在庫を減らすことが根本的な解決策であると考えられ、民間業者が建築途中の住宅を地方政府が公営住宅用に買い取るなどの対策が実行されてきました。しかし、この試算結果から判断すると、短期的に問題を解決することは極めて難しそうです。

(図表3)中国:住宅販売戸数と不動産会社が抱える在庫戸数の推移
イラン情勢の進展とともに追加的景気支援策を実施か

 私は、当レポートの3月26日号(「中国:景気の実態と2026年財政計画の評価」)において、「4.5〜5%」の成⻑率目標達成には追加的な財政政策の実施が不可⽋であることを主張しました。4月分の経済統計を受けて、この見方を維持したいと思います。4月における景気減速はサプライズであり、中国当局としても、そのサプライズに見合った政策対応を行う必要性に迫られるでしょう。もっとも、景気対策を実施するタイミングは、イラン戦争の終結によってホルムズ海峡経由のエネルギー輸入が正常化するタイミングになる可能性が高いと見込まれます。米国エネルギー情報局(EIA)によれば、中国は2023年において、エネルギー使用量のうち22.3%を輸入に依存していました(図表4)。中国の原油輸入のうち、ホルムズ海峡経由の輸入がおおよそ半分を占めるとみられることから、景気刺激策を実施してエネルギー使用量が増加すると、イラン戦争の終結前に中国がエネルギー不足に陥るリスクが高まってしまいます。

(図表4)各国・地域のエネルギー輸入依存度(2023年のエネルギー消費量に対するネット輸入量の比率)

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MC2026-063