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欧州バンクローン市場、月次アップデート 2026年7月

2026年6月の欧州バンクローン市場 月次アップデート
2026年6月の欧州バンクローン市場は、前月からの流れを引き継ぎ、堅調な展開となりました。

S&P UBS Western European Leveraged Loan Index (以下「S&P UBS WELLI」または「指数」)の2026年6月のトータル・リターンは+0.29%となり、内訳は価格変動が▲0.27%1、金利収入が+0.56%となりました。なお、年初来のトータル・リターンは+1.76%となっています。

6月はクレジット市場全体がさらに安定的に推移しました。年初にボラティリティが高まったものの、その後は投資家の信頼感が回復を続けました。地政学リスクやマクロ経済の不確実性が引き続き注目される中、リスク選好が改善したこと、企業のファンダメンタルズが堅固なこと、テクニカル要因が追い風となっていることなどを背景に、欧州バンクローン市場全体のパフォーマンスは堅調に推移しました。また同市場は旺盛な需要と実質的な供給に支えられ、引き続き底堅さを示しました。当月のセカンダリー市場価格は小幅に下落した一方、ローンの組成条件は改善傾向にあったため、新規発行市場は活況となりました。継続的な投資家需要と堅調なCLO組成に支えられ、流動性は引き続き良好な水準を維持しました。

セクター動向は引き続き拡大しました。テクノロジー関連のクレジット、特にソフトウェアについては、投資家がAIによる同セクターに対する長期的な影響や収益確保の持続性を評価する中、引き続き慎重な見方をされています。対照的に、ディフェンシブなビジネスモデル、安定的なキャッシュフロー、確固とした最終市場を持つクレジットに対する需要は旺盛で、概して市場全体を上回るパフォーマンスを示しました。

欧州バンクローン市場の信頼感が回復し、スポンサーが資金調達を再開し、発行規模が拡大したことなどを背景に、6月は新規発行市場が活況となりました。新規資金による取引も度々増えたものの、リファイナンスやリプライシング(条件変更)案件が、引き続き取引の大部分となりました。特に高格付けの発行体においては、市場環境が改善したこと、投資家の需要が旺盛であることなどを反映し、資金調達コストがわずかに低下しました。新規発行された「BB」格のバンクローン価格は、額面価格がEURIBOR+325bp前後の水準まで低下しました1

6月も引き続き、CLO発行がバンクローン市場を下支えしました。CLOの新規組成が極めて堅調に推移したことでバンクローン需要を支え、新規発行市場で供給の消化を促しました。CLOのセカンダリー市場も堅調に推移し、投資家のバンクローン需要も引き続き底堅く推移したことから、ほぼ全ての格付けのCLOのスプレッドは縮小しました。CLOの供給は依然として高水準で推移したものの、概ね市場によって十分に消化されました。新規発行されたCLOノート(AAA格)のスプレッドはEURIBOR+125bp前後で安定的に推移しました2

今後も、欧州バンクローン市場におけるテクニカル要因は引き続き良好であると見ています。堅調なCLO需要、バンクローンの実質的な供給量、そして新規発行市場における組成条件の改善などが、欧州バンクローン市場を引き続き下支えしています。一方で、マクロ経済や地政学リスクの不確実性が続く中、投資家は注意深い姿勢を維持すると見込まれ、発行体ごとのファンダメンタルズが、依然としてパフォーマンスの主な決定要因になるものと予想されます。

図1 :バンクローン及びCLOの需給推移
リターン:2026年6月
  • 6月のS&P UBS WELLIのセクター別リターンでは、不動産が+2.82%と最も高いパフォ-マンスとなり、続いて耐久消費財の+0.88%、林産品/パッケージングの+0.85%となりました1。また、マイナスリターンとなったセクターで、最も低いパフォ-マンスとなったのは情報技術▲0.71%、続いて化学の▲0.44%、金融の▲0.40%となりました1
  • 6月のS&P UBS WELLIの格付別リターンでは、 「CCC」格が+0.75%と最も高く、 「B」格が+0.28% 、 「BB」格が最も低い▲0.01%となりました1
  • 6月末におけるS&P UBS WELLI 構成銘柄の平均価格は、前月末の95.95ユーロから95.82ユーロに下落しました1。同指数の3年ディスカウント・マージンは4.81%となり、前月末の4.75%から拡大しました1
ファンダメンタルズ

6月もイラン情勢がマクロ経済の主要な変動要因となりました。月初に新たな緊張が高まったものの、月央には暫定的な停戦合意が確定したことで、エネルギー市場や投資家センチメントに大きな影響を与えることとなりました。エネルギー危機が和らぐにつれ、リスク資産価格は2026年4-6月期からの反転上昇基調を継続し、欧州のマクロ経済環境には安定化の兆しがより明確に表れています。回復は依然として初期段階にあり、経済の不確実性が先行指標の重石になっているものの、エネルギーショックが消失しつつあることは、経済活動と市場心理の双方を下支えし始めています。

ブレント原油は今月も大きな値動きとなりましたが、月を通してみると明確な下落基調となって越月しました。米国によるイランへの再攻撃やトランプ大統領の強硬な発言など、紛争が緊迫した当初は原油価格は一時的に上昇しました。しかしながら、イラン紛争の暫定的な停戦合意が成立し、米海軍によるホルムズ海峡の封鎖が解除されると、市場心理は明確に好転し、原油価格は急落しました。6月末には、ブレント原油は1バレル73ドル前後と、ほぼ紛争前の水準で推移しました。もっとも、直近の高値から大幅に反落したものの、年初来では依然として高水準で推移しています。原油先物のフォワードカーブはほぼ変わらず、市場は地政学リスクが引き続き先物価格に織り込まれていることを示唆しています。

6月の株式市場は、エネルギー価格が落ち着いたこと、テールリスクが低減したことなどを受け、底堅い展開となりました。米国株式市場を始めとして、世界の株式市場は2026年4-6月期も堅調なパフォーマンスを維持し、S&P500種指数は同期間中に史上最高値を更新しました3。テクノロジーおよびAI関連セクターが引き続きパフォーマンスを牽引し、特に半導体関連銘柄は大幅な上昇となりました。欧州株式市場も上昇し、ストックス欧州600指数は堅調な展開となりました、パフォーマンスには銘柄によってばらつきが見られ、各国の経済成長の動向に大きな影響を受けたと見られます4

6月の債券市場は、月末にかけて落ち着きを取り戻すまで、ボラティリティが高まる展開となりました。5月に数年ぶりの高水準に達していた各国の国債利回りは、エネルギー価格の下落や地政学リスクの緩和を受け、小幅に低下しました。しかしながら、堅調な経済指標や根強いインフレ懸念を背景に、国債利回りは依然として全体的に高水準で推移しました。

欧州のマクロ経済指標は、今月も好不調が混在する状況となりました。5月のユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)は50.0に上方修正されました。エネルギー関連のマイナス要因が少なくなり、景気回復の兆しとなる中立水準に戻ったことを示唆しています。このPMIの改善は、2026年4-6月期を通じユーロ圏経済が緩やかなプラス成長になると予想されていること、サービス業が回復し、製造業が引き続き堅調に推移していることなど、経済全体および各セクターが広範に改善する見通しと一致しています。加えて、これの状況は景況感データによっても裏付けられており、欧州委員会の景況感指数(ESI)は6月に95.0に上昇し、地政学リスクが和らぐにつれて、景気回復に対する信頼感も改善し始めていることを示しています。

一方で、インフレは鈍化傾向となりつつあります。物価指標は財や食品全般で緩やかなインフレの低下を示唆していますが、サービス部門のインフレは依然として根強く、コア指数も引き続き高水準で推移しています。これらを総合すると、経済成長は安定化しつつあるものの、インフレ率は依然として欧州中央銀行(ECB)の目標値を上回っており、セクター間でばらつきが見られます。かかる状況下、ECBは6月7日に政策金利を25bp引き上げて2.25%とし、タカ派姿勢を維持しました。

当月の主な動きは以下となります。

  • エネルギー価格は下落しました。ブレント原油は、イラン紛争の暫定的な停戦合意が確認されたことを受け、月を通して急落しました。月初は緊張が高まったものの、月末には原油価格は紛争前の水準近くで越月しました。一方、原油先物価格には依然として地政学リスクがおり込まれています。
  • ユーロ圏経済は広範囲に回復してきています。PMIは中立水準(50.0)に戻り、景況感も改善(ESI 95.0)しました5,6 。これは景況感回復の初期段階を示唆しています。また、インフレ圧力には全体的に緩和の兆しが見られる一方、サービス部門ではインフレ基調が根強いため、ECBは金融引き締め姿勢を維持しています7
  • 6月末現在、モーニングスター欧州レバレッジドローン指数における過去12カ月のデフォルト率(額面ベース)は1.23%でした8。過去平均は年率2.62%となりました8
投資機会

5月のクレジット市場で投資環境が改善されたことを受け、今月はその流れを引き継ぎ、新規発行市場では市場心理が好転し、バンクローンの新規組成が加速しました。ソフトウェアなどのセクターは引き続き慎重な姿勢で取引されていますが、高格付け銘柄に対する需要は旺盛です。欧州のマクロ経済が回復しつつあることを背景に、欧州バンクローン市場は、根強いCLO需要、良好なテクニカル要因、そして新規発行市場が活況であることなどを背景に、堅調に推移しています。今後とも選別的な投資機会が整っていると見られます。

図2:安定資産のパフォーマンス推移
各資産の相対利回り
  • 1.

    S&P UBS Western European Leveraged Loan Index (S&P UBS WELLI)、ユーロ建てヘッジ付き、2026年6月30日現在。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。指数に直接投資することはできません。

  • 2.

    Pitchbook Data Inc. より、2026年6月30日現在。

  • 3.

    S&P500種指数より、2026年6月30日現在。同指数は、米国株式市場全体を表す株価指数です。

  • 4.

    ストックス欧州600指数より、2026年6月30日現在。同指数は、欧州株式市場全体を表す株価指数です。

  • 5.

    S&P Global Market IntelligenceのHCOBユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)、2026年6月30日現在。

  • 6.

    欧州委員会 (European Commission)のユーロ圏景況感指数(ESI)、2026年6月現在。Business and Consumer Survey Results、2026年6月29日発表。

  • 7.

    欧州中央銀行(ECB)の定例理事会、2026年6月11日。 

  • 8.

    Morningstar European Leveraged Loan Index。過去の平均デフォルト率は、2007年6月1日から2026年6月30日までを対象に集計しています(除く、ディストレス債)。

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