グローバル市場での新しい動きと米中間選挙
要旨
選挙での民主党勝利は今後2年間の経済政策の現状維持を示唆
11月3日に実施された米国中間選挙では、民主党が上下両院で過半数の議席を獲得しました。第1期トランプ政権後期という「ねじれ政治」期と同様、2027年からの2年間の米国では経済政策の大幅な変更が想定されにくく、経済政策はおおむね現状維持の状況になると思われます。
局面転換を予想するグローバル市場シナリオに変化なし
私は、2027年の年央ごろにはインフレが落ち着き、それが、主要中央銀行の政策の中立方向への転換をもたらし、債券高と非AI株高、そして投資家による分散投資の積極化につながるという見方をグローバル市場のメインシナリオとしています。今回の中間選挙は、このメインシナリオの確度を高める可能性が高いと考えられます。
局面転換の兆しが見え始めた?
10月初めあたりから、この局面転換の兆しが見え始めたようです。10月に入ってから原油価格が上昇したにもかかわらず、米国の債券市場では長期金利が低下に転じました。米国の株式市場では、イラン紛争以降にみられた非AI株と原油価格の逆相関の関係が崩れ、原油価格の上昇にもかかわらず非AI株が上昇しました。これは、先にふれた局面転換を先取りする動きと考えられます。
※次回の当レポートの発行は、都合により、11月26日を予定しています。
選挙での民主党勝利は今後2年間の経済政策の現状維持を示唆
11月3日に実施された米国中間選挙では、民主党が上下両院で過半数の議席を獲得しました。これにより、来年はじめから2年間、米国はねじれ政治の時代となります。私は、議会や経済政策をめぐっては、次の2年間は第1期のトランプ政権後半の状況をなぞるような動きになると思います(図表1)。2018年11月の中間選挙の結果、民主党が下院で多数派の地位を奪還したことで、共和党が大統領府と上下両院を支配するという状況が変化し、2019年1月から2021年1月の2年間はねじれ政治の状況となりました。当時の米国では、民主党がトランプ大統領を2回にわたって弾劾訴追するなど政治的な対立が激化しましたが、連邦債務上限の引き上げや予算法案をめぐっては超党派で合意が成立しました。また、ねじれ政治の最後の1年間では、コロナ禍ということもあって、国民への給付金政策が超党派で実行されました。もっとも、減税、防衛費の大幅引き上げ、規制緩和法案など、党派色の強い重要法案はこのねじれ政治の2年間では一切成立しませんでした。
2027年1月からの2年間ではこれと近い状況になる可能性が高いと考えられます。次の2年間の米国では経済政策の大幅な変更が想定されにくいため、経済政策はおおむね現状維持の状況になると思われます。例えば、民主党ではAIデ-タセンターやAIそのものへの規制を強化する議員が比較的多くいますが、規制強化の法案を議会で通過させたとしても、トランプ大統領はそれに拒否権を発動することで、成立させない可能性が高いと見込まれます。これは株式市場や債券市場にとっては、悪い話ではありません。昨日の米国市場で債券高にふれたのは、原油価格が大幅に低下したことだけではなく、財政赤字が過度に拡大しないという安心感があったと思います。一方、株価が上昇したのは、原油価格の下落に加えて、中間選挙というビッグイベントが民主党の勝利という想定通りの形で終わったことで、不透明感が後退したことが大きかったと考えられます。今後の米国株市場では、政策の大幅な変更がなさそうだという認識が株価の支えになっていく可能性が高いと考えられます。
一方、超党派的な合意が得られる分野では、民主党が共和党と協力して立法措置を講じる可能性が出てくると思われます。これには、貿易問題その他についての対中国政策やインフラ整備計画が含まれます。
局面転換を予想するグローバル市場シナリオに変化なし
今回の中間選挙は、私が当レポート10月8日号(「原油高下のAI株堅調と今後のシナリオ」)でふれたグローバル市場の今後のメインシナリオの確度を高める可能性が高いと考えられます。このメインシナリオは、2027年の年央ごろにはインフレが落ち着き、それが、主要中央銀行の政策の中立方向への転換をもたらし、債券高と非AI株高、そして投資家による分散投資の積極化につながるという見方を軸としています(図表2)。現在の局面からの転換を阻む大きなリスクとして、米国の中間選挙において共和党が上下両院で大勝し、全成人に1人あたり5000ドルを給付する政策が実行されるリスクがありました。しかし、今回の中間選挙で民主党が勝利したことで、トランプ大統領が提案した5000ドル給付案が実現する可能性はほぼなくなったと考えられます。中東情勢がさらに悪化することで原油価格がさらに大きく上昇するリスクは排除できないものの、それが回避されるのであれば、米国のインフレが2027年の年央までに低下する可能性が高く、メインシナリオで想定する局面転換が実現する可能性が高まります。
局面転換の兆しが見え始めた?
10月初めあたりから、この局面転換の兆しが見え始めたようです。10月に入ってから原油価格が上昇したにもかかわらず、米国の債券市場では長期金利が低下に転じました。米国の株式市場では、イラン紛争以降にみられた非AI株と原油価格の逆相関の関係が崩れ、原油価格の上昇にもかかわらず非AI株が上昇しました(図表3)。非AI株の意外な強さは、先にふれた「株高・債券高」局面への転換の兆しが出始めたことを示唆しているようです。10月におけるS&P 500種指数のセクター別騰落率で比較的大きく上昇したセクターをみると(図表4)、エネルギーセクターが上がったのは原油価格の上昇を受けたものとみられますが、生活必需品、その隣の公益事業、ヘルスケア、素材といったセクターでしっかりと株価が上昇しました。これは、これまで出遅れていたセクターに資金が戻ってきたことを示しています。米中間選挙における民主党の勝利は、これを後押しする要因になるとみられます。非AI株が上昇するというこの動きが短期的に続くかどうかは不透明ですが、来年の初めあたりになりますと、非AI株が注目される傾向がよりはっきりしてくると思われます。
MC2026-129