半導体関連株の「モメンタムクラッシュ」の背景と今後
要旨
グローバル市場で半導体関連株が大幅に下落
半導体関連株の下落がグローバル株式市場を動揺させています。中国のメモリー半導体企業の競争力向上への警戒感が続く中、AIクラウド企業の信用不安が生じたことが下落につながりました。それまでのモメンタム相場が反転する、「モメンタムクラッシュ」が引き起こされたと言えます。
半導体関連株が消去法的に買われてきたことで、悪材料に過敏に反応
私は、今回のモメンタムクラッシュの重要な背景に、イラン戦争勃発以降のAI関連株を支えてきた、一部投資家による消去法的な投資姿勢があったとみています。中長期的な見通しに確信を持たずにAI関連株のポジションを膨らませた投資家は、決定的ではない悪材料に過敏に反応しがちであり、それが10月に入ってからの半導体関連株の大幅な下落につながったと思われます。短期的には、半導体関連株の相場は不安定になりやすいと見込まれます。
AI関連株全体への投資家の信頼は揺らがず
ただし、私は、そのことがAI関連株全体に対する信頼を損ねるとは考えていません。原油価格が高止まりを続ける限り、AI関連株への消去法的な投資は継続しやすいと考えられます。決算など個別の好材料が出てくるのに合わせて半導体関連株を含むAI関連株に選択的な投資資金が入り、株価の緩やかな戻りにつながる展開が予想されます。特に、マグニフィセント7については、中期的に高い成長が見込めることが株価を支えるとみています。
グローバル市場で半導体関連株が大幅に下落
半導体関連株の下落がグローバル株式市場を動揺させています。9月中は半導体や半導体材料、半導体製造装置を含む半導体関連株は比較的大きく上昇し、半導体関連分野における株価の上昇がさらなる株価上昇を呼ぶという、モメンタム相場と言ってよい状況でした。日本、韓国、台湾では株式市場における半導体関連株のウエイトが高いこともあり、半導体関連株の上昇が主要株価指数の上昇につながりました。しかし、半導体関連株は10月上旬にピークをつけることになり、それ以降は下落が目立っています。その直接的なきっかけになったのが、10月10日に中国半導体メモリー大手の長鑫存儲技術(CXMT)がDRAMの生産効率を高める技術の開発に成功し、年内に製品を投入するとアナウンスしたことでした。これが、メモリー半導体の大手であるSKハイニックス、サムスン電子、マイクロン、キオクシアなどの株価調整につながりました。また、米国の新興クラウド企業であるコアウィーブの社債利回りが10月13日から14日にかけて急上昇して信用不安が強まったことで、AI企業の中長期的な収益性についての不透明感が強まり、半導体関連株だけではなく、それ以外のAI関連株全体の下落につながりました(図表1)。こうして、それまでのモメンタム相場が反転する、「モメンタムクラッシュ」が引き起こされました。
半導体関連株が消去法的に買われてきたことで、悪材料に過敏に反応
半導体関連株の分野でモメンタムクラッシュが生じたのは、株価が悪材料に反応しただけにとどまらず、それまでの上昇過程で積み上げられてきたと思われるポジションが巻き戻されたことによると考えられます。
しかし、私は、今回のモメンタムクラッシュのより深い背景に、イラン戦争勃発以降のAI関連株を支えてきた、一部投資家による消去法的な投資姿勢があったとみています。当レポートの10月8日号(「原油高下のAI株堅調と今後のシナリオ」)でふれた通り、足元のグローバル市場では、中東情勢の悪化でエネルギー価格が上振れした状況が続いており、投資家が債券投資や非AI関連株投資に慎重になり、一部投資家がAI関連株を消去法的に買う動きが続いていました。中長期的な見通しに確信を持たずにAI関連株のポジションを膨らませた投資家は、決定的ではない悪材料に過敏に反応しがちであり、それが10月に入ってからの半導体関連株の大幅な下落につながったと思われます。
足元での半導体関連株相場は今週に入って小康状態となっていますが、仮に、ハイパースケーラーなどによる多額のデータセンター投資が将来回収できなくなるとの疑念や、設備投資の加速によってメモリー半導体事業の中期的な収益性が大きく低下するとの疑念を強めるような材料が今後表面化する場合には、半導体関連株がさらに下落する可能性があります。短期的には、半導体関連株の相場は不安定になりやすいと見込まれます。
AI関連株全体への投資家の信頼は揺らがず
ただし、私は、そのことがAI関連株全体に対する信頼感を損ねるとは考えていません。原油価格が高止まりを続ける限り、AI関連株への消去法的な投資は継続しやすいと考えられます。足元でも、非AI関連株の動きが原油価格と逆相関にあるという関係が続いており(図表2)、原油価格の高止まりが非AI関連株の上値を抑えています。その一方、半導体関連株は直近で大きく下落したものの、ハイパースケーラーを軸とするマグニフィセント7(MAG7)の動揺は限定的です(図表1)。他方、AI関連株の中でもサイバーセキュリティー関連株については、企業などへのサーバー攻撃事例が世界的に増加する中、上昇トレンドを続けています。
今後、中東情勢の緊張緩和によって原油価格が有意に低下することがあれば、非AI関連株への投資が活発化してAI関連株への投資はより選別的になるとみられます。しかし、原油価格が高止まるという私のメインシナリオ通りなら、決算など個別の好材料が出てくるのに合わせて半導体関連株を含むAI関連株に選択的な投資資金が入り、株価の緩やかな戻りにつながる展開が予想されます。
当レポートの10月8日号でふれた通り、2027年に入ると、インフレ減速や主要中央銀行のハト派化の可能性が、金融市場にとっての好材料として織り込まれ始め、債券高や株高につながる可能性が高いと考えられます。その際には、AI関連株に資金が集中する環境から、非AI関連株への分散投資が広がるとみられます。ただ、その場合でも、AI関連株はEPS成長率の高さによって株価が支えられると考えられます。特に、MAG7については、コンセンサス予想による2026年度から2030年度までの年間平均EPS成長率が29.3%であり、中期的に高い成長が見込めます(図表3)。
MAG7のうち、アマゾンとアルファベットの2027年度のEPS成長率はマイナス圏にありますが、これは、2026年4-6月期の決算において、いずれも保有株式の価値が大きく増加したことでEPSが一時的に増加したことによります。これら2社では、保有するアンソロピックの株式価値を上方修正したことによる効果が4-6月期の利益を押し上げました。こうした効果が一時的とみられることが、2027年度のEPS成長率がマイナス圏にある背景です。保有株式の評価部分を除くMAG7各社の利益水準は今後も持続的に上昇トレンドで推移する見通しです。
MC2026-122