インベスコの視点

【グローバル債券投資戦略】「グローバル・フィックスト・インカム・ストラテジー 2026年5月号」

Invesco Fixed Income Special Report May 2026
Invesco Fixed Income Special Report

インベスコの債券運用部門であるインベスコ・フィックスト・インカム(IFI)より、「グローバル・フィックスト・インカム・ストラテジー 2026年5月号」が発行されました。

本稿では、イラン紛争を巡る停戦を受けたマクロ環境の変化と、それに伴うエネルギー価格の動向が、グローバル債券市場に与える影響について整理しています。エネルギー価格の上昇により短期的にはインフレ率の上振れが見込まれる一方、米国経済は構造的なバッファーに支えられ、成長率は潜在成長率付近を維持するとの見方を示しています。
また、インフレはコアベースで3%前後と粘着的に推移する可能性が高く、金融政策の正常化はより複雑なものとなると指摘しています。このような環境下では、FRBは当面政策金利を据え置き、インフレリスクの後退が明確になった段階で漸進的な緩和に踏み切る可能性があると見込んでいます。

クレジット市場については、中東のエネルギー・インフラへの影響に加え、石油製品や化学製品、肥料など広範なコモディティに波及する二次的ショックに注目しています。特に、供給停止や物流の混乱が長期化した場合には、企業収益やインフレ期待に対して構造的な影響を及ぼす可能性があり、市場が織り込んでいないテールリスクとして警戒が必要としています。

金利および為替の見通しについては、米国および欧州の金利をニュートラル、日本をアンダーウェイト、オーストラリアをオーバーウェイトとするスタンスを示しています。為替については、米ドルをニュートラルとしつつ、人民元、日本円、豪ドルをオーバーウェイト、英ポンドをアンダーウェイトとする見方を提示しています。

最後に、地方債市場については、年初来の堅調なパフォーマンスの背景や現在のバリュエーションを踏まえ、高格付けの免税地方債を中心とした選別的な投資機会に注目している点が示されています。特にイールドカーブの中期から長期ゾーンにおける魅力や、ハイイールド債に対しては選別の重要性が高まっている点など、不確実性の高い環境下における具体的な投資アプローチが提示されています。

幅広いテーマを網羅した本レポートを、ぜひご一読ください。

 

グローバル・マクロ・ストラテジー
米国マクロ経済展望の改定︓
堅調な成長、粘り強いインフレ、およびFRBの据え置き方針

エグゼクティブサマリー
  • イラン紛争の停戦を受け、2026年の米国マクロ経済展望を改定しました。エネルギー価格の上昇によって、短期的には総合インフレ率が当初の予測よりも押し上げられる可能性が高い中、成長見通しについては下方修正を行ったものの、堅調な国内需要と米国経済の構造的なバッファーに支えられ、成長率は潜在成長率付近を維持する見通しです。
  • 3%程度で高止まりするコアインフレ予測は、連邦準備制度理事会(FRB)の正常化への道のりを複雑なものにし、慎重な政策姿勢を強める要因となります。このような環境下で、FRBは年内は政策金利を据え置き、インフレリスクが明確に後退した時点で初めて、段階的な緩和に踏み切る余地が生じると予想しています。
  • このベースラインの見通しは、地政学的緊張が再燃しないという仮定に基づいています。市場は、より悪化するシナリオをほとんど重視していないようですが、エネルギー市場を通じた再度の混乱による経済的コストは、非線形的かつ重大なものになる可能性が高いと考えられます。
潜在成長率並みの成長

中東での紛争を受けて米国の成長予測を下方修正しましたが、成長見通しは引き続き堅調であると見ています。今回の修正は、主に成長が加速して潜在成長率を上回る水準に達する可能性を(少なくとも数四半期の間は)引き下げたことに相当します。現在、GDP成長率は潜在成長率付近で推移すると予想しており、依然としてコンセンサスをわずかに上回っています。停戦後の数週間で原油価格は安定し、発表された3月のデータも概ね我々の見通しと一致しています。。

インフレとFRB

エネルギー価格の上昇により、短期的には総合インフレ率が上昇すると予想しています。また、コアインフレ率は年の大半を通じて3%前後、あるいはそれを上回る水準で推移し、当初の想定よりも長引くと見ています。二次的波及効果のリスクが高まっていることから、FRBが中立金利の推定値に向けて緩和を開始する時期は遅れる可能性が高いでしょう。次の一手のタイミングは極めて不透明ですが、暫定的な想定として年内は政策金利を据え置き、来年上半期に2回の利下げが行われると予測しています。

原油ショックは潜在的な成長の足かせとなるも、リセッションの引き金ではない

原油価格の上昇は成長に対する真の逆風となりますが、歴史的にリセッションに結びついてきた水準には達していません(図1)。実質ベースで見ると、原油価格はリセッションに至らなかった2011年から2012年、および2022年のピーク時を大幅に下回ったままであり、現在の価格環境は、不快ではあるもののリセッションを招くものではないことを示唆しています。

重要なのは、この評価は原油価格のみに基づいているのではなく、より広範なマクロ経済状況も重要であるということです。2011年から2012年の事例は特に示唆に富んでいます。当時の原油価格は実質ベースで現在よりも高く、経済状況も間違いなく今より脆弱でした。当時は、世界金融危機後の余波で家計が負債の削減をしている最中であり、銀行は資本増強とバランスシートの修復を行っていました。そのような脆弱な条件下でさえ、原油価格の高騰によって経済がリセッションに陥ることはありませんでした。

図1︓原油価格は高騰しているが、リセッションを引き起こす可能性は低い

現在の米国には、この見解を裏付ける構造的なバッファーが存在すると考えています。米国が現在はエネルギーの純輸出国であること、そして1ドルのGDPを生み出すために必要なエネルギー量が時間の経過とともに大幅に減少していることであり、これらはいずれも原油ショックの広範な経済活動への波及を抑制します。また、現在は家計や企業のレバレッジも高くなく、景気後退の主要な前提条件となることが多い要因が排除されています。

たとえ原油価格が1バレルあたり120〜140ドルまで上昇したとしても、それだけでリセッションが引き起こされることはないかもしれません。とはいえ、より高い水準になれば確実に苦痛を伴うことになり、そのような動きに対して市場が急激に反応するリスクは軽視すべきではありません。

市場価格対地政学的リスク

ほとんどの観測者は、中東紛争がこれ以上悪化することはないと想定しているようです。しかし、市場が間違っていれば、代替シナリオや下振れリスクは深刻なものになる可能性があります。ワシントンD.C.で4月に開催された年次IMF・世界銀行総会は、いつものように政策立案者、投資アナリスト、シンクタンクや国際機関の専門家が集まる素晴らしい場であり、グローバルなマクロ経済の議論や市場心理を測るための絶好の場でした。

参加者の雰囲気は様々でしたが、今年の市場関係者の間でのベースラインの見通しは、現在のイランとの紛争はこれ以上エスカレートしないというもののようでした。市場価格も同様のコンセンサスを反映しており、停戦は維持され、原油価格は安定した後に現在の水準から緩やかに下落すると予想されています。原油先物価格はその方向性を示唆しており、株式市場もこの見解と一致しているように見受けられます。

しかし、政治アナリストやエネルギーアナリストとの協議では、より脆弱な動向が示唆されました。エネルギーインフラのさらなる損傷、生産停止、戦略備蓄の減少、そしてより広範なサプライチェーンの混乱といった下振れシナリオは、エネルギー価格の大幅な上昇や供給不足の潜在的なリスクを高めます。こうした事態が進展すれば、多くの国々で大幅な景気減速、あるいはリセッションにすらつながる可能性があります。

市場がこのような悪影響を及ぼす結果を織り込んでいないのは明らかです。おそらく、こうしたシナリオが現実化する前に価格に反映させることは困難なためです。しかし、その発生確率は無視できるものではありません。私たちは、非線形な動きが影響を増幅させる可能性があり、その代償は非常に大きくなると考えており、この潜在的なリスクは警戒を要するものです。

インフレ見通し:高止まりの長期化(ただし2022年の再来ではない)

当然の懸念は、現在の原油ショックが再び高インフレの連鎖を引き起こすかどうかという点です。総合インフレ率は上昇する可能性が高く、エネルギー価格が速やかに転嫁されることで、総合個人消費支出(PCE)価格指数は3.5%に向けて押し上げられるでしょう。しかし、より重要なのはコアインフレの動向です。コアインフレは原油ショック以前からすでに3%前後で粘り強く推移しており、今後さらに長期間にわたって高止まりする可能性があります。したがって、今回の原油ショックは、目標を上回るコアインフレ期間をさらに長期化させることで、FRBの職務をより困難なものにしています。

しかし、極めて重要な点は、現在は2022年とは異なるということです。当時の高インフレを引き起こした条件は、現在よりもはるかに深刻なものでした。サプライチェーンの混乱は広範かつ世界規模で、工場の閉鎖、輸送能力の極端な制限、さらには輸送機器からトラック運転手に至るあらゆるものの不足が発生していました。ニューヨーク連邦準備銀行のグローバル・サプライチェーン圧力指数は当時、標準偏差の4倍に達するショックを記録しましたが、現在の同指数は過去平均よりは高いものの、平均に近い水準にあります。労働市場も非常にタイトで、民間部門の賃金上昇率は6〜7%に達し、離職率の高さは外部での就業機会が豊富であることを示唆していました1 。さらに、複数回にわたる財政刺激策とサービス消費の抑制により、家計には過剰貯蓄が蓄積されていました。その一方で、経済がパンデミックから脱却する過程で、供給制約を背景に(特に財に対する)需要が急増していました。

現在の開始条件は根本的に異なっています。労働市場は好調に推移していますが、2022年の過熱した状況よりもむしろ2017年から2018年の水準に近く、一定の余剰が存在します。賃金上昇率は4%未満に鈍化し、離職率も低下しました2 。労働者が職を離れなくなっていることは、外部の機会減少と自信の低下を示唆しています。今年上半期には家計を潤す財政刺激策も一部見られますが、その大半はエネルギー価格の上昇によって相殺される可能性が高く、パンデミック期のような巨額の移転支出に匹敵する追い風はありません。高所得層を除けば、家計の貯蓄バッファーもほぼ使い果たされています。こうした背景から、インフレ率は上昇すると思われますが、その上昇幅は前回よりも抑制され、短期間に留まるはずです。これはコアインフレが根強く推移する世界であり、2022年の急騰の再来ではありません。

FRBには現状維持の余力あり

このような環境において、FRBは現状維持に適した立場にあると考えています。第一に、インフレ率は4年近く目標を上回った状態が続いており、粘着性があることが証明されています。関税も影響を及ぼしていますが、その影響は一回限りのものです。関税の影響を除けばディスインフレの傾向は見られますが、現在は新たな供給側のショックに直面しており、原油価格がインフレを高水準に維持させる可能性が高い状況です。こうした相次ぐショックは、期待インフレ率のアンカーが外れ、企業の価格設定行動が変化してしまうリスクを高めます。

第二に、昨年夏の懸念の後退を経て、労働市場が安定化したことが挙げられます。当時の状況は供給の問題ではなく、労働需要の不足を反映したものでした。しかし、11月以降の採用状況は堅調に推移しています。労働市場へのリスクが低下する一方で、インフレへのリスクが高まっており、これは状況が逆であった昨年夏から秋口にかけてとは大きく異なるバランスです。最後に、金融政策の引き締め度合いは単に政策金利のみで決まるものではなく、広範な金融環境を通じて実体経済へどのように波及するかが重要であること。2025年に金融環境が緩和したことは、政策が表面上の金利水準ほど抑制的ではない可能性を裏付けており、現在の政策金利が抑制的であるとするFRBの見解には同意していません。

状況が許せば、 2027年に2回の利下げが実現する可能性があります。しかし現時点では、「静観」が適切な姿勢であると考えており、中東情勢の混乱が収束した時点で、この判断を改めて評価する予定です。

グローバル・クレジット・ストラテジー
市場が過小評価している可能性がある中東紛争の二次的ショック

エグゼクティブサマリー
  • 混乱の規模とタイムライン:イラン紛争は中東のエネルギー下流インフラに深刻なダメージを与え、ホルムズ海峡の通航を停滞させました。これにより、日量数百万人バレル規模の精製および輸出能力が停止しています。主なリスクは復旧期間の長期化であり、それが短期的な価格ショックを、エネルギー、コモディティ、産業セクター全般にわたる構造的な価格再編へと変えてしまう可能性があります。
  • コモディティへの二次的ショック:製油所の停止と物流の混乱は、軽油、ジェット燃料、LPG、バンカー重油、ナフサ、メタノールといった石油製品や石油化学原料に極端な歪みをもたらしており、クラックスプレッドと価格を過去最高水準に押し上げています。これらの影響はエネルギー分野をはるかに超え、航空、海運、プラスチック、製造、消費財にまで及んでおり、世界的なインフレリスクを高めています。
  • サプライチェーンおよびマクロ経済への影響:この紛争は肥料、医薬品、アルミニウム、さらにはヘリウムや硫黄といった製油所の重要な副産物の供給を妨げており、農業、ヘルスケアのサプライチェーン、半導体、鉱業を脅かしています。供給停止が長引くにつれ、早期の解決がなされない限り、企業の利益率、家計コスト、そして期待インフレ率への圧力は一段と強まる可能性が高いと見ています。

イラン紛争は、近年に例を見ない規模で中東のエネルギー下流インフラに打撃を与えました。さらに、イランがホルムズ海峡を支配下においていることで、エネルギー以外のサプライチェーンにも影響を及ぼすような、混乱の重大なテールリスクが存在しています。原油や液化天然ガス(LNG)が大きく報道されていますが、二次的な影響こそが、市場が十分に認識していないテールリスクであると考えています。こうした二次的影響は、企業の利益率や家計に影響を与えるさまざまなコモディティ価格を押し上げる可能性があり、現在の状況の解決が長引くほど、それらを回避することはますます困難になると見ています。

エネルギー供給:改善ではなく悪化へ

まず、悪化の一途を辿っているエネルギー供給の現状に目を向けます。封鎖が始まって以来、タンカーの往来は最小限に留まっています。通常は120〜140隻の船舶がホルムズ海峡を通過しますが3 、現在は1日平均で約5隻にまで減少しました4 。直接的に停止している精製能力は日量300万バレルを超えており5 、これは世界で最も戦略的に重要な製品輸出インフラの相当な部分を占めています。

表1︓中東紛争によるエネルギーおよびコモディティ貿易への影響
復旧のタイムライン

エネルギー供給混乱の影響を評価する際、最も重要な変数は表面的な損傷規模ではなく、復旧までの期間であると考えています。製油所が6週間で再稼働すれば、一時的な価格急騰とそれに続く回復局面での取引機会をもたらします。一方で、製油所が1年間停止し続けることになれば、それは構造的な変化を意味し、下流セクター全体の長期契約価格や株式マルチプル(評価倍率)を根底から変えてしまう可能性があります。復旧までのタイムラインは、施設の種類や損傷の程度によって大きく異なります。

公表されている修理期間がある石油、天然ガス、およびLNG田のうち、平均的な復旧期間は約2年となっています。ただし、この数値はカタールのノース・フィールド(下流工程のLNG生産能力を完全に回復させるには3〜5年を要する見込み6 )によって大きく引き上げられており、サウス・パルスについては12〜24ヶ月、あるいはそれ以上かかると予想されています。

製油所および石油化学プラントについては、具体的な修理見積もりが判明している資産は2つのみです。すなわち、ラス・ラファンLNG(ノース・フィールドの再建に付随して3〜5年)と、パールGTL(9〜18ヶ月)です。残りの主要な11の製油資産については、一部稼働中または停止中とされており、修理のタイムラインは公表されていません。このことは、製油所の実質的な平均復旧期間がさらに長期化する可能性が高いことを示唆しています。

注視すべき主な二次的影響

エネルギーインフラの混乱や原油価格の変動は、紛争による主要な一次的影響ですが、それらに付随するいくつかの二次的な経済的影響も顕在化しつつあります。下流工程への影響は広範囲に及び、石油製品、天然ガス、貨物輸送、電力、食料、基礎製造業を網羅しており、期待インフレ率に対して重大な結果をもたらす可能性があります。中東紛争の解決に向けたタイムラインがいまだ不透明である中、特に注視している項目は以下の通りです。

石油製品

製油所の混乱を示す最も顕著な市場シグナルは、クラックスプレッド(原油価格と石油製品価格の差)」の動きです。通常、クラックスプレッドは原油価格と同じ方向に動きます。しかし、製油所が破壊されるような事態においては、製品価格が原材料のコストではなく、精製能力の不足やそれによって生産される特定の製品の希少性によって決定されるようになるため、クラックスプレッドは原油価格から大きく乖離します。以下は、各主要石油製品に対する紛争の影響の内訳です。

軽油およびガソリン
湾岸地域は、欧州およびアジアに対する軽油の構造的な純輸出拠点です。アジアと欧州のディーゼル・クラック(原油と軽油の価格差)は大幅に拡大しています。この価格転嫁は、トラック輸送、鉄道、農業、船舶用燃料、そして冬季の暖房需要に同時に打撃を与えます。

ラスタヌラ、ルワイス、サトルプ、およびシトラの各施設が受けた損傷により、日量約200万バレルの軽油生産能力が失われました7 。これは、水素化分解装置を備えたこれら最新の輸出型製油所による固有の生産量に相当します。北西欧州における軽油およびガソリンのクラックスプレッドは2倍以上に拡大しており、ホルムズ海峡の封鎖が長引けば、2026年後半まで高水準で推移する可能性が高いと考えられます。

ジェット燃料
ジェット燃料の供給混乱には、特有の構造的要因があります。アラブ首長国連邦(UAE)のルワイス・コンプレックスは、湾岸ハブ拠点から運航される長距離航空路線の主要な燃料供給源であり、欧州の航空燃料輸入においても月間37万3,000トン規模を担う限界供給者でした8 。同施設のほぼ完全な閉鎖により、精製能力がすでに逼迫している世界市場から、代替不可能な規模のジェット燃料が失われました。ジェット燃料のクラックスプレッドはアジアと欧州で1バレルあたり90ドルを超え、過去最高水準に達しています。主な影響対象は航空セクターです。

液化石油ガス(LPG)
ジュアイマの混乱と輸出経路の停滞により、世界的にLPGの需給が逼迫しています。LPGは、インド、インドネシア、アフリカなどの新興市場における調理用燃料であると同時に、石油化学の原料でもあります。アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、およびイランのLPG輸出能力(日量約190万バレル相当9 )の停止が重なる一方で、南アジアの輸入の約90%が湾岸地域に依存していることから、危機的な状況が生じています10

船舶用燃料(バンカー重油)
商用船舶で使用される超低硫黄重油(VLSFO)は、1月以降に価格が急騰し、記録上最も極端な価格変動の一つを経験しています。湾岸地域は、アジア・欧州間の貿易ルートにおける主要な燃料補給回廊となっていました。フジャイラとドバイでの燃料補給が困難になったことで、船舶は燃料確保のために大西洋盆地の港へルート変更を余儀なくされており、航海距離、コスト、および二酸化炭素排出量の増大を招いています。

ナフサおよび石油化学原料

ルワイスの施設停止とホルムズ海峡の通航混乱により、アジアのスチームクラッカー(ナフサをエチレンやプロピレンに転換し、世界のプラスチック・化学産業の基礎を形成する設備)へのナフサ供給が崩壊しました。ナフサ価格は1メトリックトンあたり約1,000ドルまで急騰しています11 。インドのポリ塩化ビニル(PVC)価格は3月だけで78%上昇しました12 。アジアの主要生産者はプロピレン装置の稼働率を約30%削減しており13 、中国による米国産エタンの輸入は、湾岸地域からの原料供給の混乱を補うために、4月に過去最高の80万トンに達しました。2月時点では、中国のナフサの50%、LPGの40%がペルシャ湾から供給されていました14 。この下流工程への影響は、今後数四半期にわたって包装、建設、自動車、医薬品、農業の各セクターに波及し続ける可能性が高いでしょう。

石油化学製品およびプラスチック

中東地域は石油化学製品およびポリマーの主要な輸出拠点です。イランはメタノールの世界最大の輸出国であり、尿素については世界第3位の規模を誇ります。現在、これらの施設は稼働しておらず、中東産メタノールの最大の消費国である中国に影響を及ぼしています。メタノールは、他の石油化学製品とともに、合成繊維やポリマーの前駆体としての原料に使用されます。この供給混乱は、包装や自動車を含む多くの消費者セクターに影響を与えます。また、尿素やアンモニアといった製品は、肥料や鉱業用爆薬の重要な原材料です。

短期的には、現地の需要を満たすための増産が必要となる欧州にとってプラスの影響がありますが、事態が解決すれば、紛争前から存在していた過剰生産能力の問題が再び欧州の化学メーカーにとっての逆風となる可能性が高いでしょう。戦前の水準に回復するまでの期間については議論の余地があり、施設の損傷程度にもよりますが、少なくとも2〜3ヶ月はかかると予想されます。米国の生産者は原料の調達面では概ね影響を免れていますが、世界的な指標価格の上昇はコスト増を招き、最終的には価格インフレにつながる可能性が高く、セクターへの影響の広さを踏まえると、その規模は重大なものになる恐れがあります。

肥料および農業用原材料

世界の肥料サプライチェーンに対する湾岸地域の貢献度は、エネルギーに焦点を当てる市場によって構造的に過小評価されています。供給混乱に関する統計は衝撃的です。世界で取引されるアンモニアの約27%、リン酸塩輸出の22%、そして世界の硫黄輸出の45%が湾岸地域を経由、あるいは同地域を起点としています。現在、世界で取引されているアンモニア系窒素肥料の約30%が、事実上供給停止状態にあります15

北半球の春の植え付けシーズンにおいて、窒素肥料の供給混乱と価格高騰は作付けや収穫量に直接影響し、人道的な観点から危険をはらむ可能性があります。インドや東南アジアでは6月のシーズンに向けた輸入時期であり、ブラジルでは5月から9月にかけて需要がピークを迎えるため、この時期の混乱は深刻です16

医薬品

最も過小評価されているサプライチェーンの脆弱性は医薬品です。医薬品の有効成分およびその前駆体の約99%は、石油化学原料に由来しています17 。米国のジェネリック医薬品処方量の50%を供給し18 、世界のジェネリック薬市場で支配的なサプライヤーであるインドは、原油輸入の約40%をホルムズ海峡に依存しています19 。インドの医薬品製造に使用される化学原料は、出荷前にドバイやアラブ首長国連邦に集約されることが頻繁にあります。

アルミニウム

湾岸地域は年間約680万トンを生産しており、これは世界の一次アルミニウム地金生産量の約9%に相当します20 。この生産は、精錬所の動力源となる豊富な天然ガス由来の安価なエネルギーによって支えられています。必要な原材料であるボーキサイトやアルミナの50%以上は、同地域に輸入されたものです。アルミニウム生産量の大半は輸出されており、主要な市場は欧州連合(EU)と米国です。日本はアルミニウム輸入量の約25%を同地域に依存しています21 。現在、約380万トンの生産能力が停止していると推定され、現在生産されているものについても容易に出荷できない状況です。紛争開始前からすでに需給が逼迫していた市場において、精錬所の再稼働には6ヶ月から12ヶ月を要する可能性があります。

重要な産業用製油副産物

ヘリウム
世界的なヘリウム生産量の約3分の1はカタールによるもので22 、そのうちの3分の1は、紛争初期に損傷を受けたラス・ラファンLNGコンプレックスで生産されています。ヘリウムの最も重要な用途の一つは、極端紫外線(EUV)露光装置を用いた、多くの非常に複雑な半導体チップの製造です。ヘリウムが不足すれば生産停止を招く恐れがあり、短期的には代替供給源を確保できる見込みはほとんどありません。ヘリウムはまた、磁気共鳴画像装置(MRI)スキャナーや、冷却された超電導磁石を使用するその他の温度に敏感な機器にも使用されています。

硫酸
中東地域は、世界で取引される硫黄の約50%を輸出しています23 。これは、同地域で生産される硫黄含有量の高いサワー原油を精製する過程で生成されるものです。硫黄は、リン酸肥料の製造や、浸出法によるニッケル・銅の回収といった鉱業用途を含む、幅広い産業プロセスで使用される硫酸の製造において極めて重要です。世界の硫酸生産量の約60%が肥料用として消費されています24 。鉱業用途の規模はそれほど大きくないかもしれませんが、チリなど一部の地域では硫酸需要の20%を中国に依存しており25 、3月の輸入量はすでにゼロとなっています。米国の最新の硫黄価格は、1年前の約270ドルから現在は1トンあたり600ドルを大幅に上回っています26

金利見通し

米国:ニュートラル

米国金利についてはニュートラルのポジションを維持します。市場はもはや年内のFRBによる利下げを織り込んでおらず、イラン戦争に起因するエネルギー価格上昇がもたらすインフレ圧力を踏まえれば、この見方は妥当であると考えられます。今後については、リスクのバランスはより対称的になる可能性が高いでしょう。紛争の終結や経済成長へのショックがあれば金利を押し下げる要因となりますが、インフレ圧力が継続し、特にエネルギー価格が一段と上昇するようなことがあれば、金利を押し上げる要因となります。

欧州:ニュートラル

エネルギーコストの急激な上昇により、ユーロ圏の成長とインフレの見通しは一変しました。これに伴い、欧州中央銀行(ECB)がインフレ波及を阻止するために政策金利の引き上げを余儀なくされるとの見方が強まっています。4月のECB理事会において、ラガルド総裁は、見通しに大きな変更がない限り6月の利下げという考えを容認しているようでした。しかし、市場はすでに極めて前倒しな利上げサイクルを織り込んでおり、今後12ヶ月で約80ベーシスポイントの利上げが想定されています27 。政策立案者は紛争が成長に与える影響を考慮して慎重になると予想されるため、この市場の反応は過度に積極的であるように見受けられます。したがって、イールドカーブの短期ゾーンには価値があると考えており、FRBが据え置きまたは利下げに踏み切ることさえ依然として織り込んでいる米国カーブと比較すると、その傾向は特に顕著です。イールドカーブの極短期ゾーンには魅力的な価値があるものの、欧州債券の長期的な見通しはより不透明であるため、私たちは欧州の長期国債利回りに対しては中立の姿勢を維持します。エネルギー価格の上昇は、ユーロ圏各国の政府による財政支援措置を必要とする可能性が高く、さらに防衛やエネルギー転換に関連する支出拡大を求める声も強まっています。これらはいずれも、長期債のリスク・プレミアムを上昇させる要因となると見ています。

中国:ニュートラル

中国国内の金利についてはニュートラルの立場を維持しますが、今後数ヶ月でイールドカーブは相対的にフラット化すると予想しています。石油・ガス価格の上昇を受けて、家計や投資家のインフレ期待は回復する見通しであり、国際市場も最近になって利下げ時期の予想を後退させ始めています。昨年末以来、物価水準の回復と、市場予想よりも抑制的な金融政策が行われることを想定してきました。

日本:アンダーウェイト

日本銀行(日銀)は4月の会合で、広く予想されていた通り、政策金利を0.75%で据え置きました。しかし、この決定は「タカ派的な据え置き」と特徴づけることができます。異例の分裂により、日銀政策委員会のメンバー3名が利上げに賛成票を投じました。植田総裁は地政学リスクを理由に先行きに対して慎重な姿勢を示したものの、インフレに対して「後手に回る(ビハインド・ザ・カーブ)」ことのないよう決意を強調しました。加えて、日銀の新しい見通しでは、コアインフレ率が2028年度まで2%を上回り続けることが示されています。中東危機が大きくエスカレートしない限り、日銀は今後18ヶ月かけて、中立的な設定である1.5%〜2%(すなわち実質金利0%)に向けて、6月または7月の会合で利上げを行う可能性が高いでしょう。これにより、日本の短期国債利回りには上昇圧力が維持され、イールドカーブにはフラット化の圧力が強まると予想されます。長期の日本国債フォワード・レートはすでに極めて高い水準にありますが、エネルギー価格の上昇による交易条件へのショックを財政政策が相殺するようなことがあれば、さらに上昇する可能性があります。

英国:ニュートラル

英国の短期金利はイラン戦争の開始以来、原油価格の動きに密接に連動しています。これは、エネルギーコストの上昇が英国のインフレを粘着的にさせ、イングランド銀行(BoE)に追加の金融引き締めを強いることへの市場の懸念を反映したものです。原油価格が4月下旬の高値に戻るにつれ、英国の金利市場は、9月までに50ベーシスポイント、年末までに累計で約85ベーシスポイントのBoEによる引き締めを織り込みました28

オーストラリア:オーバーウェイト

オーストラリア準備銀行(RBA)は5月に0.25%の利上げを行い、政策金利をコロナ禍後の最高水準に並ぶ4.35%としました。底堅いインフレと労働市場を背景に、RBAは引き続き物価リスクを注視しています。エネルギー価格の上昇は、インフレに対する政策立案者の警戒感を強める可能性が高いものの、国内の景況感指標の悪化により、追加引き締めの余地は限定的となる見込みです。市場はすでに年内に累計0.62%の利上げを織り込んでおり、長期のフォワード・レートは5%を超えて取引されています29 。最近のインフレ率が予想を上振れたことを考慮しても、現在のバリュエーションは、絶対的な水準および米国債との比較において魅力的な水準にあると私たちは考えています。オーストラリアの財政ファンダメンタルズは堅固であり、長期債のリスク・プレミアムは抑制されるはずです。加えて、過去12ヶ月間の豪ドルの上昇も、輸入インフレの抑制に寄与すると考えます。

為替見通し

米ドル:ニュートラル

先月、米ドルに対して短期スタンスをニュートラルへと引き上げました。現在の不確実性の高まりによってドルへの資金逃避が加速しており、また米国経済はエネルギー市場の混乱による影響を受けにくい傾向にあります。しかし、私たちは幅広い先進国およびエマージング諸国の通貨に対し、米ドルについて構造的に弱気な見通しを維持しています。紛争の先行きが明確になれば、投資家が米ドル・エクスポージャーの分散をさらに進めるきっかけになると考えています。

ユーロ:ニュートラル

現在の不確実性が持続した場合、ユーロ圏はエネルギー市場の混乱による悪影響を特に受けやすく、インフレ率の上昇と経済成長の鈍化に直面する可能性が高いといえます。ECBはインフレリスクに注視しており、すでに利下げサイクルを終了させています。現在は利上げの可能性が高まっている状況です。市場がこれほど高い不確実性にさらされている間、ユーロは対米ドルで圧力を受け続ける可能性がありますが、英ポンドのようなマイナー通貨に対するクロスレートでは、ユーロに対して強気の見方を維持しています。

人民元:オーバーウェイト

人民元に対して中期的なオーバーウェイトの見方をしています。中国人民銀行の潘総裁は中国開発フォーラムにおいて、中国には貿易上の優位性を得るために通貨安を利用する必要も意図もないと述べ ました。中国は今後、海外投資家による中国資本市場への投資をさらに促進し、人民元のクロスボーダー利用の仕組みを一層改善していく見通しです。これは中国が米ドル高の局面を利用してドル/人民元相場を比較的安定させつつ、他の主要通貨に対しては強含みの推移を示す可能性を示唆しています。また、年初から大幅な貿易黒字を記録していることも追い風となっています。

日本円:オーバーウェイト

エネルギー価格の上昇による交易条件への悪影響は、米ドルのようなエネルギー輸出国の通貨に対し、円にとってマイナス要因となります。しかし、円は、エネルギー価格の上昇にさらされながらも、そのショックを相殺するための戦略的備蓄や財政的バッファーを欠いているアジアや欧州の小規模な経済圏の通貨を上回るパフォーマンスを示す可能性があると私たちは考えています。また、大規模なショックが発生した場合には、「質への逃避」の動きが生じ、ハイベータ通貨に対して円を支える要因となる可能性もあります。介入の脅威により、ドル/円相場は160円で頭打ちとなっています。ドル円がさらに大きく下落するためには、現在見えている以上に、米国経済がリセッションの動向に向かっていることを示すさらなる証拠が必要になります。

英ポンド:アンダーウェイト

英国の交易条件の悪化や財政の持続可能性への懸念の高まり、特に英国債利回りの急激な上昇を考慮すると、米ドルとユーロの両通貨に対するポンドの持続的な強さを説明するのは困難です。ポンドに対する一時的な支援材料として、4月の季節的な配当関連の資金流入や、依然として抑制的な金利差が挙げられますが、これらの影響は一時的なものにとどまると見られます。

ポンドの根底にある見通しは、引き続き弱気であると私たちは考えています。エネルギー価格上昇による成長への影響は、直近のGDPや労働市場、購買担当者景気指数(PMI)が底堅く推移していることから、まだ明確には現れていません。しかし、これが持続する可能性は低いです。エネルギーコスト上昇による下押し圧力が浸透するにつれ、第2四半期の成長率はマイナスに転じるリスクがますます高まっています。成長の鈍化は、市場が英国のより積極的な金利経路を予測し続ける動きを抑制するはずです。

同時に、金利が現在あるいはそれ以上の水準に留まれば、財政リスク・プレミアムがより顕著になる可能性が高いでしょう。政治的不確実性がこのリスクを増幅させる可能性があり、特に5月の地方選挙後にスターマー首相が、より左派寄りかつ財政規律に寛容な指導部に取って代わられるようなことがあれば、その懸念は強まります。こうした文脈において、ポンドは、特に対外収支がより強固で財政の拠り所がより明確な通貨に対して、脆弱であるように見受けられます。

豪ドル:オーバーウェイト

中東危機はオーストラリアの交易条件を押し上げ、欧州やアジアのエネルギー輸入国の通貨に対して豪ドルを支える要因となっています。加えて、RBA(オーストラリア準備銀行)のタカ派的な姿勢により、豪ドルは先進国の中で最も高い利回りを持つ通貨となりました。原油価格が十分に大きく急騰すれば、世界的な成長懸念が高まり、質への逃避の動きが生じて豪ドルの重石となる可能性がありますが、現在の原油価格水準では、リセッションのリスクは依然として比較的緩やかであると考えています。

ボトムライン
地方債市場の動向要因および価値の所在

今年度の地方債市場のパフォーマンスの背景にある要因や、現在どこに価値を見出しているかについて、CIO兼地方債責任者のMark Parisから説明します。

Q:今年の地方債市場のパフォーマンスはどうですか?また、現在どこに価値を見出していますか︖

Mark: 全体として、今年の地方債市場は堅調に推移していますが、その内容はセクターによって大きく異なります。免税投資適格地方債は底堅く推移しており、3月のボラティリティから見事に回復しました30 。最終的には、年初来で他のほとんどの固定利付債券セクターを上回るパフォーマンスを示しています。特にイールドカーブの中期から長期の部分でパフォーマンスが最も好調でした。これは、金利ボラティリティの低下と需要の回復によって利回りが低下し、地方債と米国債の利回り比率が低下したためです31

ハイイールド地方債は、総合収益の観点から見て、実際には際立った存在となっています。良好なクレジット環境と高い利回りに支えられ、今年の他の固定利付資産クラスをリードしています32 。とはいえ、その動きの多くはすでに一巡した可能性が高く、スプレッドは現在、かなりタイトに見えます。対照的に、課税地方債は国内投資家にとってはそれほど魅力的ではありませんでしたが、通貨スワップ等を通じたクロス通貨ベースでは、特に高品質な利回りを求める海外の買い手にとって引き続き魅力的に映っています。

バリュエーションの観点からは、地方債と米国債の利回り比率は、特にイールドカーブの中期ゾーンにおいて、やや割高になっています。しかし、極端と見なすほどの水準にはまだ至っていません。私たちは、高格付けの免税地方債にはさらなるアウトパターンの余地があると考えており、特に3月の売り浴びせで大きな打撃を受け、まだ完全には回復していない領域に注目しています。ハイイールド地方債がすでに非常に好調であったことを踏まえると、現段階で幅広くハイイールドのベータを追加するよりも、高品質でデュレーションの長い免税債の方が、現在はリスク調整後の価値が高いと見ています。

Q:過去数ヶ月間、地方債市場の主な原動力となったものは何ですか︖

Mark: いくつかの要因が重なり合って市場を支えてきました。第一に、テクニカルな条件が大きな追い風となりました。発行総額は高い水準にありましたが、それを上回る多額の元本償還やクーポン支払いが、その影響を十分に相殺しました。この不均衡によってキャッシュレベルが高く維持され、金利ボラティリティが高まった局面でさえ需要は底堅く推移しました。

第二に、ファンドへの資金流入が一貫してプラスとなっています。投資信託や上場投資信託(ETF)には、年初来でかなりの額の資金が流入しており、これが流通市場における安定した支えとなっています。特に、市場の中でもより格付けが高く流動性の高いセグメントにおいて、その傾向が顕著です。

第三に、ボラティリティの高かった第1四半期を経て、マクロ環境が安定しました。地政学的な懸念や原油価格への恐怖から生じた3月の売り浴びせは、地方債市場に一時的なリスクオフ環境をもたらしました。それ以降、金利ボラティリティの低下と米国債の取引レンジの安定により、投資家は地方債の本来の魅力である「守りの収益(ディフェンシブ・インカム)」と「高い税引後利回り」に再び注目できるようになっています。

最後になりますが、クレジット・ファンダメンタルズは概ね健全な状態を維持しています。デフォルトは限定的であり、歴史的な水準を大幅に下回っています33 。また、ハイイールド債におけるディストレス・レベルも、数年ぶりの低水準に近い状態が続いています。ヘルスケアや運輸セクターの一部など、特定のセクターにおいて固有の課題はもちろん存在しますが、地方債市場全体に広がる広範なクレジット・ストレスの兆候はほとんど見られません。

Q︓これらの要因は今後どのように進展し、地方債の将来にどのような影響を与えると見ていますか︖

Mark: 先行きについて言えば、地方債の短期的な状況は、特に春の終わりから初夏にかけては引き続き良好であると考えています。季節的な再投資資金の流入が需要を支え続けるはずです。発行額は引き続き高い水準で推移する可能性が高いものの、予想される償還額と比較して圧倒的な負担になるとは思われません。

マクロ面では、金利ボラティリティが抑制され、地政学的リスクが再燃しない限り、地方債は債券市場におけるディフェンシブな位置付けから引き続き恩恵を受けるはずです。歴史的に、5月から6月上旬にかけてはこのアセットクラスにとって比較的良好な時期となる傾向がありますが、今年もそのパターンに沿った動きになると見ています。

クレジットの観点からは、ここからはスプレッドのタイト化というよりも、安定した推移を予想しています。ハイイールド債がすでにこれほど好調なパフォーマンスを示しているため、銘柄選別がかつてないほど重要になると考えています。私たちは、広範なセクター・エクスポージャーよりも、発行体レベルのファンダメンタルズをますます重視しています。

これらすべてを総合すると、私たちは引き続き前向きながらも、規律ある姿勢を維持しています。イールドカーブの中期から長期の部分において高品質な免税地方債を好選しており、金利変動に伴うボラティリティ局面でのエクスポージャー追加も厭わないほか、ハイイールド債については選別的なアプローチを優先しています。私たちの見解では、地方債は不確実なマクロ環境において一定の下値耐性を提供しつつ、インカム収益、テクニカル面の支え、そして相対的な価値という説得力のある組み合わせを、特に米国の課税投資家に対して引き続き提供しています。

  • 1.

    出所: Bureau of Labor Statistics. Dec. 31, 2022.

  • 2.

    出所:Bureau of Labor Statistics. March 31, 2026.

  • 3.

    出所: Reuters graphics based on Kpler and Marine Traffic data, April 29, 2026.

  • 4.

    出所: Windward March 20, 2026.

  • 5.

    出所: Reuters via Pipeline & Gas Journal, March 10, 2026.

  • 6.

    出所: Qatar Energy. Data as of March 19, 2026.

  • 7.

    出所: Rystad Energy. Data as of April 14, 2026.

  • 8.

    出所: Reuters. Data as of Mar 11, 2026.

  • 9.

    出所: CNBC Hormuz coverage. Data as of April 23,  2026.

  • 10.

    出所: United Nations Conference on Trade and Development. Data as of April 1, 2026.

  • 11.

    出所: Bloomberg KI1 COMB Comodty. European   Naphtha Swap. Data as of April 29, 2026.

  • 12.

    出所: Bloomberg PLASPVCR Index. NNS Plastics PVC Resin DSI Price INR/kg India. Data as of April 29, 2026.

  • 13.

    出所: Independent Commodity Intelligence   Services (ICIS). Data as of March 26, 2026.

  • 14.

    出所: Bloomberg L.P. China Turns to US Ethane   After Iran War Hits Naphtha, LPG Supplies. Data as of March 3, 2026.

  • 15.

    出所: Industrial Info Resources (IIR). Data as of July 19, 2022.

  • 16.

    出所: UBS research. Data as of April, 23 2026.

  • 17.

    出所: Industrial Info Resources (IIR). Data as of July 19, 2022.

  • 18.

    出所: Reuters. Data as of February 21, 2025

  • 19.

    出所: Reuters via CNBC TV18. Data as of April 17,  2026.

  • 20.

    出所: Bloomberg Intelligence Data as of March 2, 2026.

  • 21.

    出所: S&P Global. Data as of March 6, 2026.

  • 22.

    出所: CNBC.com. Data as of March 19, 2026.

  • 23.

    出所: Bloomberg News. Data as of March 3, 2026

  • 24.

    出所: HSBC Economic research. Data as of April 22, 2026.

  • 25.

    出所Morgan Stanley Research. Data as of April 10, 2026.

  • 26.

    出所: Bloomberg US Tampa Sulphur contract spot price. Data as of April 30, 2026

  • 27.

    出所: Bloomberg L.P. Data as of April 30, 2026.

  • 28.

    出所: Bloomberg L.P. Data as of April 30, 2026

  • 29.

    出所: Bloomberg L.P. Data as of April 23, 2026.

  • 30.

    出所: Bloomberg Municipal Bond Index. Data as of April 30, 2026.

  • 31.

    The muni/Treasury ratio divides the yield of a municipal bond by the yield of a similar maturity US Treasury bond, and is used to assess the relative attractiveness of tax exempt muni bonds. A higher ratio indicates that municipal bonds are “cheaper” and offer better value relative to taxable Treasury bonds.

  • 32.

    出所: Bloomberg Muni High Yield Index. Data as of April 30, 2026.

  • 33.

    出所: Barclays Research, dated April 24, 2026.

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