【グローバル債券投資戦略】「グローバル・フィックスト・インカム・ストラテジー 2026年9月号」
本稿では、足元の円安進行とそれに対する日米協調為替介入に注目し、日本は円安を反転できるのかという観点から分析しています。介入は過去10年超で最大規模となったものの、金利差や資本フロー、世界経済の成長見通しといった根本的なマクロ要因を変えるものではなく、単独で持続的な円高を実現する可能性は低いとみています。
インベスコの債券運用部門であるインベスコ・フィックスト・インカム(IFI)より、「グローバル・フィックスト・インカム・ストラテジー 2026年10月号」が発行されました。
本稿では、国債利回りの上昇を背景に改めて注目が集まる欧州の債務持続可能性について取り上げています。欧州各国の財政状況は二極化しており、スペインやポルトガルではプライマリーバランスの黒字と力強い名目成長が財政改善を後押しする一方、フランスや英国では大幅な財政再建が必要とみています。なかでもフランスについては、財政・政治面の不透明感を背景にドイツ国債との利回りスプレッドが拡大しており、今後の財政再建の実行力が重要になると指摘しています。また、借入コストの上昇が各国の債務負担を一段と高める可能性があり、国債市場のボラティリティやリプライシングのリスクにも注意が必要としています。
クレジット市場に関しては、約8%の利回りを提供する米国ハイイールド債に焦点を当てています。現在の市場はBB格が半分以上を占め、CCC格は約10%、デュレーションは約3年と、従来のイメージに比べて信用力が高く、金利感応度も低い構成となっています。そのため、大幅なスプレッド縮小や価格上昇がなくても、現在の利回り水準そのものがリターンの源泉となり得るほか、一定のスプレッド変動や信用損失に対するクッションになるとみています。また、今後2年間のクレジット市場ではAIが重要なテーマになるとみており、AI関連の資金需要が拡大する一方、既存企業のビジネスモデルへの影響も見極める必要があることから、銘柄選択の重要性を指摘しています。
金利見通しについては、欧州、中国、英国、オーストラリアをオーバーウェイト、米国と日本をニュートラルとしています。米国では市場が織り込む追加利上げのペースは過大とみる一方、欧州では相対的なバリュエーションの魅力などを背景にオーバーウェイトへ変更しています。為替については、米ドル、人民元、豪ドルをオーバーウェイトとする一方、ユーロおよび英ポンドをアンダーウェイトとし、日本円はニュートラルとしています。
さらに、本号の「ボトムライン」では、「グローバル証券化商品:債券投資家にとっての新たな機会」と題したコラムを掲載しています。欧州で進む規制改革により、証券化商品に対する自己資本上・運用上の負担が軽減される可能性や、それに伴う機関投資家の需要拡大について解説しています。特にシニアRMBS、プライム消費者向けABS、AAA格CLOなどが改革の恩恵を受ける可能性が高いとみており、分散効果や構造的な信用補完、相対価値の観点も含め、債券ポートフォリオにおける証券化商品の投資機会を整理しています。
幅広いテーマを網羅した本レポートを、ぜひご一読ください。
ヨーロッパの財政課題:高金利の世界における債務持続可能性
世界的な債券市場における最近の動向は、国債の持続可能性に対する懸念を再燃させており、2010年代に市場を揺るがした債務危機との比較を招いています。投資家がインフレ、金利、および財政政策の見通しを再評価するにつれ、主要な先進国市場全体で国債が売られ、利回りと借入コストが急激に上昇しました。この圧力は特にフランスで顕著に見られ、財政および政治の見通しに対する懸念から、フランスとドイツの国債利回り間のスプレッドが、欧州債務危機以来見られなかった水準まで著しく拡大しています。
ほとんどの先進工業国は、医療や年金に加えて、国防、インフラ、AIへの支出増加による圧力に直面しています。しかし、移民の受け入れ拡大や年金制度の改革など、これらの課題への対処に生かせるはずの政策は、ユーロ圏の主要経済国においてポピュリストへの支持が高まり、中道政党への支持が低下するにつれて、制定することが難しくなっています。この状況が、債務の持続可能性を評価することを重要にしています。
借入コストと経済成長の相互作用は、債務の持続可能性を評価する上での中心的な要素です。簡単に言えば、既存の政府債務残高の利払いコストを相殺できるほど、名目成長率が十分に強くなければなりません。もう一つの有用な指標は、債務を安定させるプライマリーバランスであり、これは政府が対GDP債務比率の上昇を抑えるために達成する必要のある、利払い費を除いた財政収支のことです。
成長見通しが弱いほど、あるいは債務の利払いコストが高いほど、債務比率を安定させるために必要とされるプライマリーバランスの黒字幅は大きくなります。この課題に直面している国々は、大まかに3つのカテゴリーに分類することができます。
苦境を乗り越え、現在はその恩恵を享受している国々
ほんの10年ほど前の欧州債務危機を耐え抜き、競争力を再構築するために痛みを伴う国内の通貨価値切り下げを行ったイタリア、スペイン、ポルトガルなどの国々は、現在プライマリーバランスの黒字を維持しています。特にスペインとポルトガルは際立っており、強力な名目成長によって債務を安定させるために必要なプライマリーバランスがイタリアよりも負担の少ないものとなっています。プライマリーバランスの黒字と力強い名目成長の組み合わせが、両国が財政状態を急速に回復させる原動力となっています。
万一の事態に備えて蓄えてきた国々
ドイツ、オランダ、オーストリアなどの国々は、対GDP債務比率が比較的低いため、結果として財政赤字を容認する余力が大きくなっています。過去の慎重な財政運営により、国防やインフラ、その他追加資金を必要とする優先事項への投資を行う余地が生まれています。
一部の国々にとっては、言葉よりも行動が求められる状況
ベルギーを含むいくつかの国は、持続不可能なプライマリーバランスの赤字を計上し続けており、債務を安定させるための措置をほとんど講じていません。そのため、見通しは懸念されるものです。フランスや、程度は低いものの英国など、他の国々も持続不可能なプライマリーバランスの赤字を出していますが、IMF(国際通貨基金)の予測に基づくと、2030年までに現在の債務を安定させるプライマリーバランスへ向けて移行すると見込まれています。英国の野心的な財政再建目標は評価されるべきであり、最も急進的な財政再建の一つを実行し、最終的には意味のあるプライマリーバランスの黒字を達成すると期待されています。IMFの前提では、フランスは2030年までに債務安定化プライマリーバランスの達成に近づきます。しかし、安全マージンは限られており、債務の軌道は財政運営の振れやマクロ経済ショックに対して依然として極めて敏感なままです。
両国ともに、約束の実行が極めて重要になると考えています。英国に関する評価材料はまちまちです。好意的な面としては、所得税の課税最低限の据え置きを通じて、すでに増税による財政再建の大部分を断行しており、その大半を達成する可能性が高いことです。一方で支出面に関しては楽観視できる余地がより乏しく、英国は支出抑制をほとんど実行しておらず、新しい首相は貯蓄よりも支出に傾いているように見えます。
フランスの状況はさらに懸念されるように見えますが、その理由の一部は政治的背景にあり、また別の一部は税金がすでに大幅に高いためであり、そしてさらに別の一部は政府が控えめな財政再建すら実行できていないためです。政治的見通しがそのリスクに拍車をかけており、大統領選挙が、債務取り消しを主張する極左候補と、財源のない減税を提案する極右候補との争いになる可能性がますます現実味を帯びてきています。
債務を安定させるプライマリーバランスは、平均実質債務コストを用いて計算されます。これは新規債務の金利だけでなく、債務者の平均金利を反映するものです。多くの場合、特に債務満期が長い国々では、金利がゼロ金利下限に近かった時期に大量の債務が発行されたこともあり、そのコストは低いままに抑えられています。しかし、それ以来、状況は変化しました。実質的な借入コストはほぼあらゆる場所で上昇しており、各国は財政再建の取り組みにおいて、実質的にその場にとどまるために走り続けなければならない状況に置かれています。
もし債務を安定させるプライマリーバランスを、平均実質債務コストではなく、現在の10年物借入コストを用いて再計算した場合、債務を安定させられると予測される国はスペインとポルトガルの2カ国のみとなります。これは英国などの国々にとって特有の課題を突きつけています。つまり、既存の計画がすでに非現実的であるならば、債務を安定した軌道に乗せるためには、さらに急進的な財政再建が必要とされることになります。
中央銀行は、国債の借り手を救済するためではなく、インフレやより広範な経済への対応として金利政策を設定し続ける可能性が高いと思われます。それにもかかわらず、中央銀行は微調整に役立ついくつかのツールを維持しています。例えば、BoE(イングランド銀行)は最近、英国債市場を支援するためにバランスシート政策を調整しました。英国債の積極的な売却を停止し、長期債の売却を完全に休止したことで、一定の猶予をもたらしています。同様に、ECB(欧州中央銀行)は、不当なスプレッド拡大を抑制するために、伝達保護措置などの手段を展開する可能性があります。しかし、そのような支援は無条件ではありません。ECBは、対象国の債務が持続可能であり、EU(欧州連合)の財政およびマクロ経済の枠組みを大筋で遵守していると確信する必要があります。反EUを掲げるマリン・ル・ペン政権下では、フランスがこれらの条件を満たすかどうかに投資家がますます疑問を抱く可能性があり、ECBによる救済措置の信頼性が制限され、波乱の2027年へ向けた舞台が整う恐れがあります。
利回り8%の米国ハイイールド債:より高いインカムと優れた構造
米国ハイイールド債は、もはや極めて投機的な発行体によって支配されていません。米国ハイイールド債インデックスの約55%は、市場で最も質が高いセグメントであるBB格に格付けされている一方、CCC格の構成比はわずか約10%にすぎません1 。その結果、ディストレスト(経営破綻やその危機にある企業)のテールリスクが縮小する一方で、強固なキャッシュフローとバランスシートの改善を伴う実績ある企業が、より幅広い投資機会の選択肢となっています。
約3年というデュレーションで、米国ハイイールド債は他の主要なコア債券ベンチマークと比較して金利感応度が大幅に低く、15年平均と比較しても低くなっています2 。また、満期までの期間が短いプロファイルであるため、債券の満期到来や借り換えに伴い、ハイイールド債ポートフォリオの収益ストリームがより迅速にリセットされます。したがって、投資家は魅力的な水準の利回りを獲得するために、過度なデュレーションの予測をする必要はありません。
初期利回りは、歴史的に長期的な債券リターンの重要な原動力となってきました。約8%の利回り(10月5日時点のICE BofA 米国ハイイールド・コンストレインド・インデックス)において、米国ハイイールド債は大幅なスプレッド縮小や価格上昇を必要とすることなく、潜在的に魅力的なリターンを生み出すことができます。また、その収益は、緩やかなスプレッドの変動や信用損失に対するクッションにもなります。言い換えれば、このアセットクラスが良いパフォーマンスを上げるために、完璧な経済結果を必要としないということです。
AIは、今後2年間のクレジット市場において支配的なテーマになる可能性があります。AIは、データセンター、電力、コンピューティング、および関連インフラ全体における資金調達ニーズの拡大をもたらすと同時に、既存企業の代替リスクを拡大させています。債券投資家は、新しく発行されるAI関連債券が適切な構造的保護を提供しているかどうかを評価すると同時に、キャッシュフロー、競争力、または資金ニーズがAIによって破壊される可能性のある既存のビジネスモデルを特定する必要があると考えています。
全体的な質の向上が、発行体特有のリスクを排除するわけではありません。レバレッジの水準、借り換えのニーズ、そしてビジネスモデルの持続可能性は、インデックス平均の水面下で大きく異なっており、AIはその格差をさらに広げる可能性があります。アクティブ運用を行うことで、魅力的なリスク調整後リターンの機会への配分、新規発行取引における適切なプロテクションの要求、そして特にCCC格のセグメントにおいて、破壊リスクが過小評価されているとみなされる銘柄へのエクスポージャーの制限が可能になると信じています。
約8%の利回りにおいて、現在のより高品質でデュレーションの短いハイイールド債市場は、収益と市場の回復力の魅力的な組み合わせを潜在的に提供していると考えています。また、今後の重要な差別化要因は、AIが代替する可能性のある企業を回避しつつ、AIの成長に対して選択的に資金を提供できる資産運用会社の能力になると信じています。
米国:ニュートラル
Fed(米連邦準備制度理事会)は、高止まりするインフレ、エネルギー価格の上昇、および回復力のある成長を理由に、9月に25ベースポイントの利上げを行い、このサイクルにおける利上げの合計は2回となりました。市場は織り込みを急激に再調整しており、現在は2027年までに4回近い追加利上げを織り込んでいますが、このペースは予想される経路を過大評価していると考えています。我々の基本シナリオは、持続的な引き締めサイクルの始まりとしてではなく、リスク管理のための措置として、12月にあと1回の利上げが行われるというものです。10年債利回りは5.2%を超えて急上昇し、2007年以来の最高水準に達しました。これは、PMIの予想を上回る上振れ、ホルムズ海峡の懸念によるエネルギー価格の上昇、 その動きを増幅させたポジションの清算(ロスカット)が原動力となっています。イールドカーブは、私たちが予想していたベア・スティープニングではなく、ベア・フラットニングとなっており、これは短期ゾーンにおけるリスクプレミアムの構造的な上昇を反映しています。私たちは10年債に対するニュートラルのスタンスを維持し、短期ゾーンのポジショニングやカーブ・スティープナーを通じて建設的な見解を示し続けています。そこでは現在、リスクプレミアムが私たちの成長およびインフレ見通しに対して過大であるように思われます。
欧州:オーバーウェイト
ECBは、高いインフレ指標と最近の回復力のある成長データを受けて、9月の会合で利上げを行い、インフレ見通しが悪化する場合にはさらに利上げを行う姿勢を示しました。市場はこの政策スタンスを拡大解釈し、複数回のさらなる利上げを織り込んでいます。私たちはさらなる政策調整の可能性を排除しませんが、市場に織り込まれている金融引き締めの程度には同意しません。さらなる利上げは、おそらく政策設定を緊縮的な領域へと導くことになりますが、現在の段階で経済はそれを必要としていません。他の市場と比較した場合、欧州のバリュエーションは魅力的であると私たちは考えており、クロスマーケットベースでオーバーウェイトにシフトしました。エネルギー価格の上昇はおそらくユーロ圏政府による財政支援措置を必要とさせ、国防やエネルギー転換に関連する支出拡大への要求が強まっています。これらすべては、短期債と比較して長期債のリスクプレミアムを上昇させる可能性が高く、イールドカーブはスティープ化すると予想しています。
中国:オーバーウェイト
中国のオンショア国債に対して引き続き前向きであり、今後数ヶ月間で先進国市場の競合国債をアウトパフォームすると予想しています。下支えとなるマクロ政策、依然として比較的緩やかな国内需要、そして力強い輸出の伸びが、中国国債に対する需要に貢献すると期待されています。中央銀行は翌日物リバースレポ操作を開始し、融資の伸びは数量的には少なくなっても、より高品質なものになることが期待されると強調しました。総合的な金融状況は、融資と債券発行の両方の組み合わせで評価される必要があります。住宅積立金基金が最近、初めて政府系金融機関債への投資を許可され、これは政策立案者の支持的なスタンスを継続して示しています。私たちは、必要に応じてさらなる緩和措置を講じるための潜在的な期間として、第4四半期を捉えています。
日本:ニュートラル
日本の10年物国債利回りは、過去1ヶ月間で約18ベースポイント上昇して3.08%となり、1997年以来の最高水準に達しました3 。この売りの動きにもかかわらず、利回りの上昇は米国や欧州の主要市場と比べると緩やかなものにとどまっています。
日銀(日本銀行)は9月に、FedおよびECBと並んで利上げを行いましたが、日銀の審議委員2名がこの動きに反対票を投じました。重要な点として、この2名は高市首相が最近任命した委員であり、政府が急速な金利上昇を快く思っていないという見方を強める結果となりました。このことが、植田総裁の記者会見での比較的タカ派的な発言にもかかわらず、利上げサイクルの加速に対する期待を和らげることとなりました。
インフレと賃金のデータは、さらなる利上げを示し続けています。日銀は早ければ12月か1月に再び利上げを行う可能性が高く、来年中頃までには2%のターミナルレートが現実味を帯びてきています。これは日本国債の利回り、特に短期ゾーンの利回りを支えることになると見ています。
長期ゾーンの利回りは、今後の予算交渉や、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が日本国債への配分比率を増やす見通しに対して、より敏感に反応する可能性が高いですが、どちらの要因もまだやや不透明なままです。高市政権は高成長戦略を追求し続けており、これは債券利回りを低下させる方向にはあまり寄与しません。GPIFによる資産配分の変更は市場にある程度の支えを提供する可能性がありますが、特に世界的な利回りが高止まりし続ける場合、その影響は緩やかに現れる要因となる可能性が高いです。
英国:オーバーウェイト
英国の10年物国債利回りは、回復力のある国内成長、エネルギー価格の上昇、および世界的な金利の再織り込みを背景に、37ベースポイント急上昇して5.36%となりました4 。今回の売りの局面において、英国債が米国債や主要なユーロ圏市場をアウトパフォームしたことは異例です。これは、FedやECBと比較して、BoEが比較的ハト派的なスタンスをとっていること、ならびにBoEによるアクティブな量的引き締めに伴う英国債売却の一時停止が発表されたことを反映しており、これにより長期国債の利回り上昇圧力が軽減されるはずです。
BoEのベイリー総裁は、エネルギー価格の高止まりが続けば金融引き締めが必要になると警告していますが、インフレ見通しが大幅に変化しない限り、BoEが現在市場に織り込まれている110ベースポイントの利上げを実施する可能性は低いとみられます。BoEの比較的ハト派的なスタンスは、英国の軟調な労働市場と、最近のインフレデータにおいてエネルギー価格の高騰による二次的影響の兆候が限定的であることによって支えられています。市場は現在、エネルギー価格の高止まりが続くというBoEのシナリオに基づいて金利を織り込んでおり、エネルギー価格が落ち着けば利回りが低下する可能性が生じています。
短期的には、10月28日の予算案発表を控えて、市場の関心は金融政策から財政政策へと移る可能性が高いです。政府は、財政規律を満たすために必要な最小限の政策微調整にとどめ、この予算案発表をできるだけ平穏なイベントにしたいと考えているようです。しかし、金利上昇とインフレという世界的な悪化の背景に加え、国防費増額の要求がある中で、市場がこのミニマリスト的なアプローチを十分に安心できるものとみなすかどうかは、まだ見極める必要があります。
オーストラリア:オーバーウェイト
RBA(オーストラリア準備銀行)のタカ派的な発言、世界的な金利の上昇、エネルギー価格の値上がり、そして回復力のある国内データの組み合わせにより、オーストラリア国債利回りは過去1ヶ月間で約30ベースポイントの再織り込みが行われました5 。長期的な視点で見るとバリュエーションは現在魅力的に映り、現在の価格はより強い成長やインフレの高まりに対する有意義なリスクプレミアムを反映していると見ています。市場は2026年末までに40ベースポイントの利上げ、さらに2027年に25ベースポイントの利上げを織り込んでおり、これによりRBAの政策金利は5%に達し、これは政策立案者が推定する中立金利を約1.5%上回ることになります。それぞれ5.35%と5.75%である10年物および30年物の利回りは、長期のフォワードレートが6%近くになることを示唆しています6 。
RBAおよびコンセンサス予測が実現し、成長が緩やかに減速し、労働市場がいくらか軟化し、2027年後半から2028年初頭にかけてインフレ率がRBAの目標である2.5%に向けて緩やかに落ち着いていくのであれば、債券利回りは低下する可能性が高いです。オーストラリアは依然として比較的金利感応度の高い経済であり、そのため今後のさらなる利上げの再織り込みの範囲は限定的となるはずです。オーストラリア市場は最近、米国債をアウトパフォームしており、市場間での魅力はやや低下していますが、強固な財政ファンダメンタルズと制度的な信頼性という強みを維持しています。
米ドル:オーバーウェイト
Fedは9月に利上げを行い、さらに引き上げる見通しです。米国が世界的な成長を牽引し、エネルギー価格の上昇から相対的な交易条件の優位性を享受しており、金利がさらに上昇する見通しであることから、米ドルにとって背景はより支持的なものになっていると考えており、欧州通貨に対して米ドルをオーバーウェイトとしています。
ユーロ:アンダーウェイト
欧州の通貨は出遅れると予想しています。理由として、同地域における成長が引き続き精彩を欠いており、エネルギー価格が成長への下振れリスクをもたらしていることが挙げられます。
人民元︓オーバーウェイト
中期的に人民元をオーバーウェイトとしています。米国と欧州における最近の動向は、人民元の強さをさらに支える可能性が高いです。潘中央銀行総裁は中国開発フォーラムにおいて、中国は交易上の優位性を得るために通貨安を利用する必要も意図もないと述べました。中国は、中国の資本市場への国際投資をさらに促進し、人民元のクロスボーダー利用のための環境をさらに改善すると予想しています。これは、年初から現在までに記録された大幅な中国の貿易黒字に加わる要因です。
日本円︓ニュートラル
円は過去1ヶ月間で米ドルに対して約1%上昇していますが、これには大きなボラティリティが隠されています7 。9月のFedおよび日銀の会合を控えて、円は現在の水準よりも米ドルに対して約2.5%高い水準にありました。円の最近の高値からの押し戻しは、日銀がFedやECBほどタカ派的ではなかったことへの一部の失望を反映しています。将来の日銀の利上げに対する期待は、他国ほどには再織り込みされておらず、日本と他の先進国市場との間の金利差を拡大させています。
日本の当局は円を支えるために口先介入を続けていますが、米ドル/円の為替レートが160に達して以降、さらなる実際の介入の兆候はほとんど見られません。これにより、財務省による米ドル売りの実施は現在の米ドル/円の水準からはまだ少し距離があるという見方が一部で生じています。しかし、当局は明確な意図を示しており、160を超える米ドル/円の水準に対して信頼性のある上限を維持しています。
150に向けたより大きな動きには、米国や他国における金利予測のいくらかの緩和、世界的な成長予測の悪化がおそらく必要となります。現時点では、金利予測とリスクセンチメントの両方が比較的良好に維持されています。
英ポンド:アンダーウェイト
英ポンドは過去1ヶ月間で米ドルとユーロの両方に対して出遅れました。これは、FedやECBと比較してBoEが比較的ハト派的な政策スタンスをとっていること、およびエネルギー価格の上昇が英国の交易条件に悪影響を及ぼしていることを反映しています。金利差の縮小、比較的弱い成長見通し、そして英国の財政的信頼性に対する継続的な懸念を考慮すると、ポンドのバリュエーションは引き続き魅力的ではないように映ります。
10月28日の予算案発表に向けて、財政政策への注目がより高まる可能性が高いです。大幅な歳出削減ではなく、成長にマイナスとなる増税を政府が好んでいることは、おそらく通貨の重石となり、英国は投資家にとって友好的ではなく、長期的な成長見通しも乏しいという見方を強めることになります。また、ポンドは景気連動的な性質を維持しており、Fedの利上げがリスク資産の売りを誘発した場合、打撃を受ける可能性が高いです。
豪ドル:オーバーウェイト
オーストラリアドルは、コモディティ価格の高止まり、他の先進国市場の通貨と比較して高い短期金利、そして国内における絶対的および相対的な成長のプラスのダイナミクスによって、比較的しっかりと下支えされ続けています。オーストラリアドルにとって最大のダウンサイドリスクは、債券利回りの上昇や、予想外にタカ派的なFedの政策対応パターンを原因とする、世界的な金融環境の引き締めです。もし市場がFedを過剰な利上げを行っていると捉えた場合、リスクセンチメントが損なわれる可能性があり、オーストラリアドルのような景気連動的な通貨に対して、よりネガティブなダイナミクスを生み出すことになります。
欧州の政策立案者は、経済成長、資本形成、および投資を支援するためのツールとして、債務の証券化にますます目を向けています。インベスコ・フィクスド・インカムのストラクチャード投資共同責任者であるDavid LyleとKevin Collinsが、欧州における規制改革が証券化資産クラスをどのように再形成しているのか、なぜ投資家の認識が変わりつつあるのか、そして今日の証券化商品市場においてどこに最も魅力的な機会があると考えているのかについて解説します。
David:多くの投資家は、金融危機時に顕在化した複雑さや市場の失敗を、今でも証券化商品と結びつけて考えています。しかし、今日の市場は大きく異なっています。過去10年間で、引受基準は大幅に改善し、透明性は向上し、リスク保有ルールの義務化が導入され、投資家保護が強化されました。これらの変化により、証券化市場は危機前よりもかなり堅牢で回復力のあるものとなっています。
同時に、欧州はこの資産クラスにとって重要なカタリストとなり得る一連の規制改革を導入しつつあります。証券化資産への投資に関連する運用上および資本上の負担の一部を軽減することで、政策立案者はより幅広い機関投資家の参加を促すことを目指しています。これにより、需要、発行量、市場の流動性が増加し、最終的には世界の債券投資家が利用できる投資機会の選択肢が広がる可能性があります。
Kevin:金融危機後、欧州の規制当局は、開示、デューデリジェンス、リスク保有、および自己資本の取り扱いに関して広範な要件を実施しました。これらの措置は投資家保護を向上させた一方で、特に保険会社において、証券化資産を保有するためのコストを増大させました。ソルベンシーIIの下では、原資産のパフォーマンスが良好である場合でも、従来の社債クレジットと比較して証券化へのエクスポージャーを正当化することが困難であると、多くの保険会社が感じていました。
その結果、同セクターへの配分は著しく過小となりました。2021年末時点で、ソルベンシーIIの標準方式を使用している保険会社および再保険会社の総投資額に占める証券化商品の割合はわずか0.33%にとどまり、エクスページャーを全く持たない会社が大部分を占めていました8 。
今日、政策立案者は、証券化を経済成長、インフラ投資、イノベーション、およびエネルギー転換を支援するためのツールとしてますます捉えるようになっています。EUの「貯蓄投資連合」構想を通じて、規制当局は、危機後に確立された安全策を維持しつつ、高品質な証券化商品の実際のリスクからはもはや正当化できない可能性のある障壁を排除しようとしています。
David:最も重要な変更は、2027年1月に発効が予定されている、保険会社に対するスプレッド・リスクの資本要件の再調整です。改定された枠組みの下では、シニアの「STS(シンプル、透明、かつ標準化された)」証券化商品は、カバードボンドとおおむね同等の資本取り扱いを受けることになります。多くのAAA格の担保付きローン債務(CLO)を含む、高格付けのシニア非STS資産も、大幅な資本負担の軽減から恩恵を受けると期待されています。
より広範には、規制当局はデューデリジェンスや透明性の要件を簡素化し、不必要な運用上の摩擦を減らし、STSの枠組みをより効果的なものにするために取り組んでいます。これらの改革を合わせると、欧州の証券化市場を活性化させ、実体経済への資本の流れを増やすという政策目標を示しています。
メザニン(中位)および劣後ポジションは、引き続き大幅に高い資本要件に直面することになるため、その恩恵は、より高品質なシニア証券化資産に集中する可能性が高いという点に注意することが重要です。
Kevin:最も重要なポイントは分散効果です。規制面での取り扱いが改善されることで、投資家は過酷な自己資本賦課を理由に証券化資産を排除するのではなく、投資対象としてのメリットに基づいて評価できるようになります。
証券化商品は、従来の社債とは大きく異なる原資産のリスクソースへのエクスポージャーを提供します。投資家は、住宅ローン、消費者ローン、商業用不動産、および分散された企業ローンのプールへのエクスポージャーを獲得することができます。これらの資産は、従来の企業発行体とは異なる形で経済状況に反応することがよくあります。
また、証券化の構造は柔軟性も提供します。トランシェ分けを通じて、投資家は特定のレベルの信用リスク、デュレーション、およびキャッシュフローの安定性をターゲットにすることができます。多くの場合、シニア証券化資産は、社債だけでは再現が困難な、魅力的なスプレッドと強力な構造的保護を提供することができます。
David:グローバル市場は非常に大規模です。米国の証券化市場だけでも約14.4兆米ドルの規模があり、政府系および非政府系のRMBS(住宅ローン担保証券)、ABS(資産担保証券)、CMBS(商業用不動産抵当証券)、CLOにわたって、年間およそ2.5兆米ドルの新規発行が行われています9 。欧州でも、同様のセクター全体でさらに1.3兆ユーロの債券残高が加わります10 。
米国のすべての取引が欧州や英国の規制枠組みの要件を満たすわけではありませんが、投資家は依然として膨大な種類の担保タイプ、構造、および相対価値の機会を利用することができます。
私たちの見解では、欧州の改革は、シニア住宅ローン担保証券、プライム消費者向け資産担保証券、およびAAA格のCLOを最も強力に後押しする可能性が高いです。これらのセクターは、強力な信用質、堅牢な構造的保護、および改善された資本上の取り扱いを兼ね備えています。CMBSも機会を提供する可能性がありますが、対象となる不動産、テナント、およびキャッシュフローのプロファイルに大きなばらつきがあることを考慮すると、銘柄選択が引き続き極めて重要です。
Kevin:必ずしもそうとは限りません。証券化商品は依然として、厳格な分析を必要とする高度に専門化された資産クラスです。投資家は引き続き、原資産となる担保、引受基準、取引構造、債権管理回収の取り決め、繰上返済行動、および支払いウォーターフォール(資金充当の優先順位)を理解する必要があります。欧州の投資家はまた、リスク保有、デューデリジェンス、およびモニタリングの要件を引き続き満たさなければなりません。
規制改革によって資本面および運用面の一部の障害は軽減されますが、ファンダメンタルなクレジット専門知識の必要性がなくなるわけではありません。適切な銘柄選択が依然として不可欠です。
とはいえ、大まかな方向性は心強いものです。自己資本要件の緩和によって、より多くの保険会社や銀行が市場に惹きつけられれば、需要の拡大、発行量の増加、そしてセカンダリー市場の流動性向上が見られる可能性があります。これは、欧州の証券化エコシステムを深化させると同時に、世界の債券投資家にとってより大きく、よりダイナミックな投資機会の選択肢を生み出すのに役立つはずです。10年以上ぶりに、規制がこの資産クラスへの配分を阻害するのではなく、支援する方向に働きそうです。
【グローバル債券投資戦略】「グローバル・フィックスト・インカム・ストラテジー 2026年9月号」
本稿では、足元の円安進行とそれに対する日米協調為替介入に注目し、日本は円安を反転できるのかという観点から分析しています。介入は過去10年超で最大規模となったものの、金利差や資本フロー、世界経済の成長見通しといった根本的なマクロ要因を変えるものではなく、単独で持続的な円高を実現する可能性は低いとみています。
【グローバル債券投資戦略】「グローバル・フィックスト・インカム・ストラテジー 2026年8月号」
本稿では、米国・欧州・英国の債券市場が追加利上げを過度に織り込んでいる可能性に注目しています。米国では、インフレの鈍化や成長モメンタムの緩やかな減速を背景に、FRBは追加利上げではなく政策金利の据え置きを継続するとの見方を示しています。
【グローバル債券投資戦略】「グローバル・フィックスト・インカム・ストラテジー 2026年7月号」
本稿では、6月に開催されたIFIグローバル・インベスターズ・サミットでの議論を踏まえ、世界のマクロ経済およびクレジット市場に関する見通しを整理しています。米国については、AIによる生産性向上が中長期的な成長の押し上げ要因になるとの見方を示す一方、その効果の発現時期や規模には依然として不確実性が大きいとみています。
【グローバル債券投資戦略】「グローバル・フィックスト・インカム・ストラテジー 2026年6月号」
本稿では、AI関連投資の急拡大が米国経済の成長ドライバーとして存在感を高めている点に注目しつつも、その恩恵が経済全体に広く波及しているわけではないという構図を示しています。テクノロジー分野を中心とした設備投資は引き続き力強い一方で、個人消費や住宅市場の弱さが重しとなり、米国経済の成長率は潜在成長率に近い2〜2.5%程度にとどまるとみています。また、AI投資は「スーパーサイクル」と位置付けており、今後数年にわたり継続的な需要拡大が見込まれると考えています。
【グローバル債券投資戦略】「グローバル・フィックスト・インカム・ストラテジー 2026年5月号」
本稿では、イラン紛争を巡る停戦を受けたマクロ環境の変化と、それに伴うエネルギー価格の動向が、グローバル債券市場に与える影響について整理しています。エネルギー価格の上昇により短期的にはインフレ率の上振れが見込まれる一方、米国経済は構造的なバッファーに支えられ、成長率は潜在成長率付近を維持するとの見方を示しています。
【グローバル債券投資戦略】「グローバル・フィックスト・インカム・ストラテジー 2026年3月号」
本稿では、エマージング市場を中心としたグローバル債券環境の最新動向を整理しています。米ドル安またはドルの安定が想定されるなか、エマージング市場ではマクロ・ファンダメンタルズの改善が進み、現地通貨建て債券を中心に有望な投資機会が広がっています。多くの国でインフレの沈静化や外部収支の改善が進んでおり、高い実質利回りと政策柔軟性が中期見通しを支えています。
【グローバル債券投資戦略】「グローバル・フィックスト・インカム・ストラテジー 2026年2月号」
インベスコ・フィックスト・インカム(IFI)がマクロ経済動向、米国および主要国の金利・為替見通し、債券市場における主要な投資テーマなどについての見方をご提供いたします。
【グローバル債券投資戦略】「グローバル・フィックスト・インカム・ストラテジー 2026年1月号」
インベスコ・フィックスト・インカム(IFI)がマクロ経済動向、米国および主要国の金利・為替見通し、債券市場における主要な投資テーマなどについての見方をご提供いたします。
【グローバル債券投資戦略】「グローバル・フィックスト・インカム・ストラテジー 2025年11月・12月合併号」
インベスコ・フィックスト・インカム(IFI)がマクロ経済動向、米国および主要国の金利・為替見通し、債券市場における主要な投資テーマなどについての見方をご提供いたします。
【グローバル債券投資戦略】「グローバル・フィックスト・インカム・ストラテジー 2025年10月」
インベスコ・フィックスト・インカム(IFI)がマクロ経済動向、米国および主要国の金利・為替見通し、債券市場における主要な投資テーマなどについての見方をご提供いたします。
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